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【おんなの女房】なにこの江戸時代エモすぎる

デビュー作「化け者心中」で全く新しい時代小説を世に送り出した蝉谷めぐ実さんの2作目がついに出ました!

前作ですっかりファンになってしまった私にとっては楽しみにしていた最新刊です。

物語の結末には触れていませんが、作中で登場するセリフなどのネタバレがありますので、前情報ゼロで楽しみたい人はここでページを閉じてくださいね。

「おんなの女房」あらすじ

主人公は武家に生まれた少女・志乃。

女は父に仕え、夫に仕え、子に仕えよという父親の教えを忠実に守る志乃は、歌舞伎の女形である燕弥の元に嫁ぐことになります。

しかし、そこで待っていたのは全く想像していなかった夫の姿。家でも女の格好で過ごす燕弥に父の教えは役に立ちません。

役者にとっての良き女房とは?そして女形として生きると決めている燕弥が志乃を妻に迎えたのはなぜなのか?

おんなと女の不思議な夫婦生活を生き生きと描いた時代小説です。

「おんなの女房」感想

蝉谷さんの小説はどうしてこんなに新しいと感じるんだろう。

舞台は遥か昔の江戸。
男尊女卑も甚だしい登場人物。

それなのに、こういう生き方って新しい!と思える描写があちこちに散りばめられています。

たとえば燕弥と志乃の夫婦関係。

普通の夫婦とは違う、かといって女友達かと言われるとそれも違う2人の関係は、なんとも言えない愛で満ち満ちてるように思えます。

志乃の前に現れる対照的な役者の女房達もそう。

片や夫の芸に惚れ込んだ女房。夫の芸のためなら妾との間も取り持つし、妾が産んだ子供の世話だって喜んでやる。

一方で夫の芸のことなんて知ったこっちゃない!私は夫という人間に惚れ込んだんだ!と豪語する女房。役者として必要だろうが何だろうが浮気なんて許さないし、喜怒哀楽を隠さない。

そのどちらも否定しないのが蝉谷めぐ実さんなんですよね。

夫婦の形は千差万別で、互いに1番いい形は人によって違うんだなという当たり前のことを突き付けられた気がしました。

役者という人間がいかに変人なのかということもしっかり描かれていておもしろい。

女房にはずっと自分のことを好きでいてほしいけど、もし好きが減るときが来るならばいっそ憎まれたいなんて、すごくすごく変わってると思うのに、この言葉に愛を感じるのは私だけ?

役に入り込みすぎて女形に惚れてしまった役者もまた切ない。

自分が好きなのは相手の人間性なのか、それとも役者としての才能なのか。

役者として板の上で向き合っている時だけ通じ合えるこの関係って一体どんな言葉で表せばいいの?

女形の芸を磨くために武家の女を女房にしたはずが、だんだんその女房に惹かれていって男としての自分が出てきてしまう燕弥。

そんな夫を愛おしいと思いながらも役者の女房としてはこれでいいのかと悩む志乃。

どちらも非常に人間臭くて良い。

最後の最後までエモすぎる時代小説です。

心からおすすめします!

蝉谷めぐ実さんの別の著作「化け者心中」と「化け者手本」についても感想文を書いています。よかったらこちらも覗いて行ってください。

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