見出し画像

本屋大賞2024ノミネート作品全部読んでみた

本屋大賞公式HP(https://www.hontai.or.jp/)より引用

今年も本屋大賞ノミネート作10作品全部読んでみました!

どれもおもしろかったですが、「黄色い家」と「水車小屋のネネ」には特に心を揺さぶられました。この2作は正反対のようでよく似た物語だと思います。進んだ先が一歩違えば「黄色い家」の主人公は「水車小屋のネネ」の主人公のようになっていたと思いますし、逆も然りなのではないでしょうか。そういった比較ができたのもおもしろかったです。

「黄色い家」 川上未映子

60歳の女性が20代の女性を監禁して暴力を振るったという事件をきっかけに、主人公の花が20歳前後に過ごした異様な生活を思い起こす社会派サスペンスです。

社会的弱者の母の元に生まれ、夜の世界でもがきながらなんとか生きようとする少女の青春と崩壊を描いた600ページ超えの大作で、登場人物全員が救われる道はどこかにないものかと頭を抱えてしまいました。

読み終わった後は深い虚脱感に包まれましたが、読んでよかったとも思います。同じような生き方をするしかない人が今の日本にはたくさんいる気がするので。

「君が手にするはずだった黄金について」 小川哲

小川という名前の小説家が、これまで出会った怪しい人たちについて語る連作短編集です。

哲学的な会話が印象的な「プロローグ」に始まり、後半になるにつれてどんどん登場人物が怪しくなっていくところがおもしろかったです。

読んでいるうちに2011年の3月10日に自分が何をしていたのか考え込んでしまいました。このままでは古いスマホを引っ張り出してきてメールの履歴を遡ってしまいそうです。

「水車小屋のネネ」 津村記久子

母親が連れてきた婚約者の虐待から逃げだした姉妹を主人公にしたハートフルストーリーです。

18歳で10歳の妹を養うことを決めた姉と、そんな姉についていくことを決めた妹。見知らぬ土地で身を寄せ合って生きていこうとする2人を見守る大人たち。登場人物の全てがすてきで、愛おしくなる物語でした。

そして忘れてはいけないのが水車小屋に住むネネのこと。石臼を守るという重要な任務を任されているネネという鳥が、姉妹と町の人たちとの繋ぎ目になっているところに胸を打たれました。

章が変わるたびに時間が10年進む形で展開されていくので、ひとつの町の変遷と人の流れを目の当たりにした気分になります。

「スピノザの診察室」 夏川草介

京都の小さな病院で勤務する天才内科医を主人公に、命の最期を描いた医療小説です。

涙を誘うハートフルな展開と医療ものとしてのヒリヒリ具合のどちらも楽しめる良作でした。今の時代、現役医師が描く医療小説が手軽に読めるからすごいですよね。リアリティが違います。

「存在のすべてを」 塩田武士

平成3年に起こった二児同時誘拐事件。1人の少年はすぐに帰されたましたが、もう1人が帰ってきたのは3年後でした。そんな不思議な誘拐事件を令和の時代に改めて追いかけることにした新聞記者を主人公にした愛の物語です。

次々に明かされるまさかの展開に夢中になって読みました。芸術で繋がる親子の絆に胸がいっぱいです。

「成瀬は天下を取りにいく」 宮島未奈

滋賀県大津市を舞台に、大津愛に溢れる変人中学生・成瀬あかりの日常を描いたクスッと笑えて胸が熱くなる小説です。

ストーリーのテンポがよく、するすると内容が頭に入ってくる気持ちよさがありました。成瀬の目標「200歳まで生きる」を見届けたい気持ちでいっぱいです。

「成瀬は天下を取りにいく」は続編もおもしろい!

「成瀬は天下を取りにいく」には続編もあります。同じテイストでさらにおもしろくなっているので、「成瀬は天下を取りにいく」が気に入った人は楽しめると思います。

「放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件」 知念実希人

知念実希人さんが子供向けに書いているミステリ小説です。ミステリ好きの天馬、合気道の達人の陸、体操名人の美鈴の3人が所属する放課後ミステリクラブが、学校の内外で起こる不思議な出来事を解明していく日常ミステリもの。

親子で楽しめる本格ミステリという売り文句がぴったりの楽しい推理小説でした。物語のところどころで自然にミステリの名作を紹介しているところもすてきです。

「放課後ミステリクラブ」は2巻以降もおもしろい!

「放課後ミステリクラブ」はシリーズ化されているので長く楽しめるのも魅力。新刊が出るのが楽しみです。

「星を編む」 凪良ゆう

2023年に本屋大賞を受賞した「汝、星のごとく」の続編です。短編集という形で前作で描き切れなかった登場人物たちの過去や未来を描いていて、どの短編も涙を誘う感動作でした。

「星を編む」と一緒に読んでもらいたい本

「星を編む」は「汝、星のごとく」を読んだ後に読んでもらいたい本です。「汝、星のごとく」は感想文も書いているので、よかったら覗いて行ってください⇩

「リカバリー・カバヒコ」 青山美智子

自分の体の治したいところと同じ場所を触ると回復するという伝説があるカバの遊具を軸に、いろんな人の些細な悩みと解決を描いたハートフルストーリーです。

胸が熱くなる描写多数で感動しました。連作短編集になっていて、登場人物同士の繋がりが背景にうまく落とし込まれているところがすてきです。どんな年代の人が読んでもグッとくるお話だと思います。

「レーエンデ国物語」 多崎礼

大人のためのファンタジーというキャッチコピーがぴったりの濃密なファンタジーでした。現時点で3巻まで刊行されていますが、2巻以降グッとおもしろくなるのでぜひ続きも読んでもらいたいです。

「レーエンデ国物語」は2巻以降もっとおもしろい!

レーエンデ国物語は1巻よりも2巻が、2巻よりも3巻がおもしろいファンタジーです。そしてもうすぐ4巻が出るんです!ファンタジー好きとしてはリアルタイムでこの作品を追いかけていけるのが嬉しくて仕方ないです。

最後に

今年も、本屋大賞ノミネート作発表から受賞作発表まで楽しませてもらいました。バラエティ豊かな小説ばかりでどれもおもしろかったです。

また来年を楽しみにしつつ、これまでの受賞作もちょっとずつ読んでいきたいなと思いました。

文学賞のノミネート作品全部読んでみたシリーズは他にもあるので、よかったらこちらも覗いて行ってください⇩

本屋大賞ノミネート作品はAudibleでも楽しむことができます⇩


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?