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第168回(2022年下半期)直木賞候補作を全部読んでみた

遅ればせながらではありますが、2022年下半期の直木賞候補作をすべて読み終わったので、5作まとめて感想を並べてみようと思います。

5作とも、読み終わった後も登場人物の気持ちや物語の意図を深く考え込んでしまうような作品で、かなり濃厚な読書体験ができたように思います。

どれもおもしろかったけど、私が好きなのは「しろがねの葉」(https://amzn.to/3SdjZuV)と「光のとこにいてね」(https://amzn.to/3xGTnJo)かな~。


「しろがねの葉」 千早茜

戦国時代に生きる少女の生涯を描いた物語で、生きるとは何か、男と女とは何か、ということを強く訴えかけてくる作品でした。

読んでいるうちに話したいことがどんどん出てきてしまい、それを書き散らしたネタバレありの感想もよかったら覗いていってください。

読み終わった後も余韻がすごくて、色んなことに思いを馳せてしまいます。そしてすぐにもう一度読み返したくなりました。

時代小説なのに、なぜか登場人物たちを身近に感じる不思議な作品です。

「地図と拳」 小川哲

第13回山田風太郎賞を受賞し、このミステリーがすごい!2023年版の国内編トップ10にもランクインしていた本です。

まず、手に取った時の分厚さに怯みました。

なにこれ、辞書...?

なんと600ページ超え。読んでいるうちに腱鞘炎になりそうです。

内容は1899年から1955年の満州を舞台にした歴史SFで、語り手を入れ替えながら激動の時代を描いています。

題材やページ数で敬遠してしまう人も多いと思いますが、とても読みやすく、文章がするする頭に入ってきました。

参考文献の数もすごくて、時代背景や歴史的整合性にこだわって作られた物語だということが伝わってきます。

「汝、星のごとく」 凪良ゆう

本屋大賞2023、第44回(2023年)吉川英治文学新人賞にもノミネートされている本です。

瀬戸内海の島で暮らす男女を描いた恋愛小説で、美しい描写と心をえぐるような展開が交互に訪れます。

最初の1文目のインパクトがすごくて、続きが気になって次々にページをめくってしまいました。

男女の物語というだけでなく、親子の物語でもあると思います。

決してきれいなだけのラブストーリーではないけれど、だからこそ伝わってくるものがあります。

ネタバレありの感想も書いたので、こちらも覗いてくれると嬉しいです。

「光のとこにいてね」 一穂ミチ

本屋大賞2023にもノミネートされている本です。

生きる場所の違う2人の女の子の、出会いと別れと人生を描いたラブストーリーです。

まず「光のとこにいてね」というタイトルが素敵です。「光のところ」でもなく、「いて」でもない。「光のとこにいてね」なんです。

話し言葉をそのままタイトルにしたようなこの「光のとこにいてね」は、作中でも重要なキーワードになっています。

こだわり抜いたという装丁も素敵で、タイトルロゴは光の余る角度によってキラキラ光るのが美しいです。

こちらも450ページ超えの長編なんですが、ラストに近づくにつれて、まだ終わらないで…もうちょっとだけ読ませて…と思ってしまう吸引力がありました。

男女の愛情とはまた違う、深くて温かい関係性に胸がいっぱいになります。

「クロコダイル・ティアーズ」 雫井脩介

妻の元恋人によって殺された夫と、残された家族について描いたミステリです。

疑惑の渦中にいる妻・想代子の気持ちは一切書かれておらず、周囲の人間の語りばかりで物語が進んでいくのが不気味でした。

少しずつ植え付けられていく不信感の芽にゾワゾワします。

人によって受け取り方が違うであろうラストが秀逸で、読み終わった人と感想を語り合いたくなりました。

最後に

第168回(2022年下半期)直木賞候補作は、ジャンルの違う5作でどれも飛び抜けておもしろかったです。

これは受賞作を選ぶのも大変だったろうな…。

こういう賞レースにノミネートされる作品ってどんな風に選ばれるんですかね。そんなことを考えながら読みました。

他にもいくつか文学賞ノミネート作品を全部読んでみた記事を書いているので、こちらも覗いて行ってくれると嬉しいです。

直木賞ノミネート作品はAudibleでも楽しむことができます⇩


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