お金と福祉
前の記事ではざっくりと「福祉業界」について話し始めたところでした。
https://note.com/nas_12/n/n16f415d13cdf
福祉業界で働くことを薦められるか、という問いに対して、私は「イエス」と答えました。答えたいのです。
今回はその「イエス」の理由の一つである、「お金」の面から整理していきたいと思います。
福祉をお金で話すのはあまりよろしくないと思われる方はいらっしゃるでしょうか。そして「福祉ってやりがい搾取筆頭では」と思われる方はいらっしゃるでしょうか。
なんの。お金は大事です。これを一番に置く人ばかりではないでしょうが、完全に外して考えていくには、生活は甘くないと思います。
そして福祉こそ「やりがい」以外で魅力を発信しないと人は寄ってこないと思っています。なので今回は、お金の面で話していくぞ!
コロナの影響
コロナ禍にあって、様々な業界が影響を受けました。
特にニュースで聞かれたのは、観光業や飲食店などの娯楽サービスへの影響でしょうか。
様々な理由が考えられるし、私は専門家ではないので深い分析はできませんが、観光や飲食への影響で思い浮かぶのは①ニーズの減少と②代替サービスの出現かな、と。
①については例えば、外国人旅行客の減少です。ニーズそのものが減少して、需要がなくなったパターン。
②については例えば、リモート飲み会やテイクアウトの増加。テイクアウトは飲食がおこなっているからそこまで該当するかは微妙ですが。外で飲むより家で飲もう、という人が増えましたよね。
これらの2点を福祉業界に当てはめると、そういった影響はみられなかったかな、と思います。
①については、コロナによって障害などの状態には何ら変化はなかったでしょうから、ニーズの変化はないでしょう。
②については、代替するサービスは基本的にはみられません。訓練する場所がないからと通信大学やリモート対応の塾に行くかというとそうではないでしょうし、生活する場所がないからとホテルで生活を始める人はいないでしょう。
変わらず移行支援事業所に通いたいし、グループホームや入所施設での生活を希望されています。
コロナが出てきた初期の頃は、感染が怖いという点で通所を控えた方もいましたし、事業所側も及び腰ではありました。しかし、徐々に適切な感染対策をおこなった上で再開する事業所が増えました。
また、行政も理解を示し、リモートでの訓練や面談で事業所が報酬を得られるような仕組みも出てきたため、手段や質は変化するかもしれないけれど、サービス利用という大枠は継続している方が多いような状況になっています。
今回のコロナをきっかけに、福祉業界でもBCP(緊急の時の事業継続計画)を作ることとなり、今後感染症だけでない様々な災害に際しても事業継続ができるような下準備が事業所や行政で進められているところです。
上記の①と②の影響は、福祉事業ではあまり大きくは出てこないという点は、今後も継続していくのではないかなと考えています。
つまり、コロナ禍にあっても収支状況が大きく変化することは少ない業界だったのかなと思います(まだコロナ禍なので過去形にするものでもないですが)。
私の法人に限って言えば、この間も変わらず給与や賞与は例年通り支給されています。
行政からの委託という点
福祉事業は基本的に、本来行政(国・県・市など)がおこなうべき業務を民間(社会福祉法人や株式会社)に委託している事業になります。
前回の記事でも書いたように、「“通常”の社会生活を送る上で障壁となり得る物事」に対応するための仕事です。この「障壁」の定義は時代とともに変わっていきますが、なくなることはなかったものです。
たとえば「発達障害」という“障壁”は2004年に発達障害者支援法が成立し、定義づけられました。それまでも「発達障害」という言葉や状態、専門家の間での認識はあったでしょうが、国が定義したのはこの時点です(私の理解では)。
そして、それに紐づくように発達障害者に対する支援サービスが整えられていきました。
当時からしても、発達障害の定義は変わっていますが、広い意味でなくなるということはないんじゃないかなぁ。それに紐づいたサービスも形や大きさは変わるけれど、0にはならないのでは?と考えています。
特に、第一種社会事業と呼ばれる、入所系のサービスはなくならないと思います。福祉業界では「施設から地域へ」と言われてはいますが、実際問題、規模や場所が変わるだけで、「365日支援が必要」という状況は変わらないのではないかと考えると、この事業は0になることはないでしょう。
もしくは自宅で見るためにヘルパーの量や業務内容が変わるとかでしょうか。にしても支援の総量は変わらないですね。ノウハウを持っている、現在受託している法人がそのまま新しい事業を受託するのが実際のところだと思います。
法人が受託を希望する限りは、実績に応じて委託がおこなわれていく傾向にあります。
複数の事業を受託している法人で、かつ第一種社会事業を受託している法人は、運営が安定しているといえるでしょう。
処遇改善の方針
高齢社会は加速していくわけです。高齢者に対する支援を担う事業者の処遇を改善していこう、と政府は考えているようです。
今回の処遇改善は障害福祉の分野も一緒にいただくことができました。今後どのようになるかはわかりませんが、高齢者の増加を支える担い手を増やすためにも、経済的な魅力を向上させていくのではないかなと、これは期待ですが感じているところです。
それに伴って、児童や障害の分野も向上していけばいいなと思います。
が、一方で社会保障費はひっ迫していると散々言われているので、何らかの対応が出てくるかもしれませんね。
この点については期待、というところです。
まとめ
福祉は世間の状況に大きく左右されず、ニーズは安定しています。代替するサービスもあまり多くはなく、出てきたとしても行政からの委託である以上、サービスを提供する事業者は大きく変わりません。
一方で、行政の経済状況によって、方針の変化によっては煽りを受けることもありますが、かといって劇的に事業がなくなっていくという状況はこれまではありませんでした。
特に、古くからある社会福祉法人はノウハウの蓄積もあり、安定した運営状況が行政にも評価される傾向にあるので、継続して事業を受託できる状態にあると考えてもいいと思います(言い方を考えないと癒着がーとか危なそうなのでふわっと書きますが)。
日本が極端に「障害者とかいう定義が差別だ!これからは障害者とかもう・・・なくします!これが真の平等だ!」みたいなことにならない限りは「福祉」という枠はなくならないでしょう。
これらの点から、福祉業界は一定の安定した収入を得られる業界だと考えます。
もっとも、業績の多寡で報酬が変わらないわけなので、努力がそのまま収入に落とし込まれるわけではないという点はあります。営業成績とかは基本的にはないですし(一部の株式会社の移行とかはあるのかな)。それをデメリットと思う人もいるでしょう。
お金については概ねこのようなところ。
次回はまた別の視点から福祉業界を薦められる理由についてまとめてみます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?