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「本質を相手に理解されているか」買櫝還珠

櫝を買い珠を還す
―買櫝還珠―

[原文](韓非子 外儲説 左上)
鄭人買其櫝而還其珠

[書き下し文]
鄭人は其の櫝(はこ)を買い其の珠(たま)を還(かえ)す

[原文の語訳]
鄭の人は箱を買って珠玉は返した


→箱

→返却する

[解釈]
容れ物の箱に惚れて購入し、目的の箱だけ手にして価値のある中身の珠玉は返した。外見に惑わされて本質を見極めることができないということです。
どうでもいいものを受け取り大事なものを捨てる。取捨不当という言葉もあります。
付録が欲しいがために雑誌を購入し、誌面は読まずに捨てたということです。
確かに目的以外のものは手にしたところで無用の長物なのかもしれませんので難しいところではあります。
一方でブランド店や百貨店の袋や包装紙に包まれているだけで、近くの店で買った安価な商品なのに高級品と思いこんでしまうようなものです。
最近ではスマホのゲームの宣伝などで「実際のゲーム画面とは異なります」という断り書きがあったりしますね。
「制服で学校を選ぶ」という話も聞いたことがありますし「人は容姿より中身」とはよく言ったものです。

ここでは相手方となる売る側の話をしていきます。
売る側としては装飾が多彩過ぎて、本質を理解してもらえないといけません。
先述の雑誌の付録も、ではそれだけを単品で販売すれば良いかというと、そういう訳にはいきません。根底は本があっての付録なのです。
飲食店でも盛り付けや色彩のインパクトによるインスタ映えで話題になったものの、本来の味の評価をしてもらえないようでは考えものです。話題集めのため、それで勝負している場合もあるでしょうが。
文章でも余計な修飾語や過剰な表現により、本当に伝えたいことが伝わらなければ本末転倒です。

売る側は、本質の意思疎通はできているか常に念頭に置き、買う側としては見た目に惑わされず中身にもきちんと目を通し、全体をしっかり見定めた上で取捨を決めたいものです。

しかしながら、好きなものを手に入れることが肝心であり、そうでないと手に入ったものを無理に好きにならないといけなくなります。気に入って手に入れた箱や額にお気に入りの物をおさめることが至福の喜びですよね。
「額縁を買って絵を返す」手元にある、お気に入りの写真やリトグラフを入れて部屋に飾ると気持ち良いですからね。

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