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保護犬のミロ

今からちょうど一年前、初めて保護犬カフェに行った。とあるキーボーディストの方のSNSを見て、保護犬カフェの子の里親になったことを知り、いつか行ってみたいと思っていた。どちらかというと、犬と触れ合える所に癒されに行ってみようかなという、軽い気持ちで行った。

行ってみると、健康な子はほぼいなかった。病気のある子や歳をとってる子ばかり。歯がなかったり、目が見えなかったり、見た目はなんともなさそうだけど、重い病気があったり。でも、大体の子は懐っこい。初めて行った私にも撫で撫でさせてくれるし、膝に乗ってくれる。一緒に行った娘と、いろんなわんこを撫で撫でしまくり、あっという間に2時間経った。

それから、娘と二人で行ったり、一人でふらっと行ったり、月に一、二回ほど保護犬カフェに通った。犬を飼う勇気はないんだけど、なぜか足が向く。カフェと名がついてるけど、決しておしゃれでステキなカフェでない。都心にあるような豆柴カフェとか猫カフェとは全然違う。(行ったことないけど)

保護犬カフェは、あくまで保護施設だ。愛着が湧いてきた子や触れ合った子に、"ずっとのおうち"が決まるととても嬉しかった。

今年の六月。まだ2回しか行った事のない、我が家からはちょっと遠い保護犬カフェに娘と行ってみた。端っこのゲージに小さな黒いわんこがいた。推定2歳のオスのチワワのラブ。保護犬カフェの子は、人懐こい子が多かったけど、ラブはまだここに来たばかりで、とても怯えていた。ゲージの奥で小さくなっていた。なぜだかわからないけど、ラブがうちの子になるイメージがすぐに湧いた。娘も同じ気持ちだった。一年間、保護犬カフェに通い、飼う勇気はないから触れ合うだけでいいと思っていたのに、即決だった。

ラブとの初対面から1週間後、家族全員で面談を受け、許可が出て、正式にラブの里親になり我が家にお迎えした。強い子元気な子に育つように、ミロという名前を娘がつけた。

初日のミロは、怯えて震えて動かなかった。どうにも食べてくれなくて、深夜一時にようやく食べてる音が聞こえきてホッとした。夜中に何度か起きて様子を見ると、ゲージから出て、暗い部屋に立っていた。初日の夜は、横になっているミロを見ていない。見ると毎回、立っていた。不安で横になれなかったんだと思う。

保護される前にわんこ達がどんな風に暮らしていたかの情報は全くない。聞いても教えてもらえない。ほとんどは、ブリーダー崩壊か、ブリーダー縮小か、繁殖犬だったけど、加齢や病気で用無しになったか、売り物として産まれたけど病気があったか、らしい。

ミロがうちの子になって、早3週間。何種類ものドックフードを試してやっと食べてくれるようになった。触ろうとするとすごい速さで逃げていたけど、寝そべってるミロを撫でるとお腹を出すようになった。台所に立っていると、横に来てずっと見てる。とてもかわいい。でも抱っこは苦手で、散歩で外に出るまでの間の短時間、抱っこするとすごく震える。下ろしてもしばらく座り込んで震えてる。知らない人にもすごく怯えて震えるから、人の少ない夜に人のいない道を選んで散歩している。初めて外に出た時は、興奮して暴れて、そのあと震えて歩けなかったからすごい進歩だ。保護犬カフェに来る前の二年間、どんな場所でどんなふうに暮らしていたのかな。

保護犬カフェに通うようになってから、ペットショップの子たちを、ただかわいいという気持ちで見れなくなってしまった。どんなブリーダーさんの元で産まれたのかとか、産んだのに子どもを取り上げられてしまった母犬や母猫、突然母から引き離された子犬や子猫を想うようになってしまった。

自分の矛盾も感じてる。かわいそうな境遇の保護犬をお迎えして可愛がっているけど、牛や豚のお肉は美味しく食べてる。どっちも生き物なのに、身勝手だなと思う。自分の中の矛盾や世の中の矛盾について考えると、なんだか苦しくなる。

人間はあまりにも欲が深く、身勝手過ぎて、人間なんかいない方が、自然や動物は守られるのかもしれない。

50を過ぎても、まだまだ未熟な人間だから、"保護犬のお世話をする"のではなくて、ミロからたくさんのことを教わりたい。これから一緒に生きていこうね、ミロ。







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