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介護職が楽しかったと涙を流しながら話す患者さんとの時間

 病棟看護師すさみです。
今から書く患者さんと話した時間がかなり尊かったので、noteにアウトプットします。まだ書き始めて62文字目なのに私は涙腺が緩んでいます。

 朝の検温のときに患者さんの部屋へいくとぐったりとされていました。
昨夜の緊急入院、ドレナージ中の患者さん。
ドレナージ刺入部の観察・消毒をしなくてはいけなかったので私は一番痛い刺入部を触って処置を行いました。
「いたーーーーーい!!」
疼痛・呼吸苦・・・患者さんは苦痛だらけで辛そうでした。
私は先生にすぐ報告し、鎮痛剤を飲んでもらい、ナースコールを手に握ってもらい、『何かあったらすぐに走ってかけつけますね!!』と声をかけて即座に病室を出ました。
他の患者さんの対応、スタッフの手伝い、病棟の中を走り回る一日でした。
緊急入院が何件も決まり、結局また走り回る。

夕食の時間、患者さんの部屋へ食事を運んだとき、だいぶ痛みは落ち着いており食欲が出たと笑顔で私に話しかけてくれました。

「さっきから叫んでる男の人の声がするね。」
『やっぱり聞こえていますか・・・。びっくりしましたよね。ごめんなさい。』
認知症が強く、常に怒って叫んでいる患者さんがいて、ナースステーションでみんなで見守っていました。その声が病棟全体に響いていたのです。
「認知症なのかな?私ね、介護職をしていたの。だからわかるよ〜。老人ホームでも働いたし、訪問にも行ったし。もうね、とんでもない面白いこととかあるよね!!」
と、笑って話してくれました。
『そうなんですね!わかります!予想できないくらいすごいことが起きたりしますよね!!』
「寝たきりのおじいさんがいてね、今までピクリとも動かなかったのに急に私のところまでヨタヨタしながら歩いてきたり!それがまたズボンのゴムが緩くて、気づいときには半ケツ状態!!」
爆笑しながら話す患者さんは、笑っているのにずっと目が潤んでいました。
そしてじわじわと、涙声になっていました。
「私ね、片親でしかも暴力受けてて、再婚で血の繋がっていない兄弟と住むことになって、そりゃもう虐められた。お金なんてないけどさ。でもさ、全然平気だったよ。
昔から私が何かして人が笑ってくれることが好きで、吉本にでも入りたいくらい。人に何かをあげるの好きだから、孫にも甘いのよ〜。
だからお金なんてない。すぐ人にあげちゃうから。でも、楽しい人生。
介護もさ、冗談たくさん言ってたくさん笑わせたよ。そしたら、ちゃんと伝わる。傾聴が大事だって言うじゃない?それも大事だけど、
受容も大事だと思うんだ。相手を受け入れる気持ち。
親の介護もやったよ。みんなからしたら嫌って、大変て言う人もいるけど、私仕事も私生活の介護も一切嫌と思わなかった。楽しいのよ。
あなたってさ、優しい素敵な看護師さんだね。可愛いから、素敵なお嫁さんになれるよ。大事にされるよ。今はやりたいことたくさんやったらいいんだよ。」

私はそのときたくさんの防護服を身に付けていました。顔なんて、目が見えるくらいでした。

私は話を聞きながら、『素敵ですね』と何度も伝えました。
この患者さんの人柄があまりにも素敵すぎて涙を何回も何回もこらえました。
30分程度の間の会話でした。私はいつぶりに患者さんとこんなに話す時間を作れただろうかとハッとしました。
思い返すと前回誰とこんなにちゃんとお話しできただろうか・・・と悩むくらいです。
私はこらえきれなくて、全てを話しました。
『私、今度訪問で働くんです。ずっとやりたかったことなんですよ。だから、今のお話聞いて、おうちでの介護も楽しいで思ってくれている方がいてすごく嬉しいです。めちゃくちゃ楽しみになりました。もう、○○さんの大ファンです!!』
「あら!そうなの!ファンだなんて!大丈夫!絶対あなたなら天職よ!」

 私は名残惜しさを感じながら、また緊急入院の対応に戻りました。
人と関わることで得られること・感情ってたくさんあると思うんです。
私の中で絶対一生この人のことを忘れないリストがあるので、このエピソードは速攻で承認されました。
こう言う楽しさがあるから、看護師はやめられない気がします。



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