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「いや〜どうでした?」あとがきで著者がしゃべる――。Voicy代表の本は仕掛けがすごかった

音声プラットフォーム「Voicy」を運営するVoicy代表・緒方憲太郎さんが初めての著書を出したそうです。

その名も『ボイステック革命』。献本でいただいた本を読んでみたら、これがとても面白かったです。何より体験として新しいものがありました。

その仕掛けについて緒方さんにインタビューしてみました。「あれすごくないですか?」

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冒頭、いきなり音声ドラマが流れる本

鳴海:『ボイステック革命』、読みました。いきなりびっくりしたのがプロローグです。あのプロローグは面白いですね。

緒方:聞きましたか? 嬉しい。

鳴海:はい、読みましたというか、聞きました。音声テクノロジーが進化した未来の生活が物語仕立てで描かれる、ラジオドラマみたいな感じでしたね。近未来の朝の風景がイメージできました。

緒方:音声の世界ってすごく大変なんです。会社のPRをするときに、例えばテレビ局からは「絵にならない」「パッと見てもわからない」みたいなことをすごく言われるんです。

だから、どうやって音声の世界を伝えたらいいのか考えていたんです。しかも、音声の魅力を「目で見えていればいいじゃないか」と言っている人たちに対して説明しないといけない。

そこでやってみたのが、声のある生活というものをドラマチックに演じるというものです。

鳴海:あのプロローグを聞くと、一気に声の可能性に引き込まれますね。本の冒頭のQRコードを読み取ると流れるんですけど、ここに掲載しちゃっていいですよね?

緒方:もちろん。ぜひ聴いてみてください。

鳴海:プロローグの中には今はまだできないことも含めて、音声の未来が詰まっていました。音声で会話できる広告、会話の内容によっておすすめされるクーポン。あれはすべて緒方さんの考える音声の可能性、実現したいことリストということですか。

緒方:はい、数年先の未来では動きながら耳で情報を得るのが前提になっていると思うんです。歩きながらとか、運転をしながらとか、人が何をしているのかを考えて広告を打っていくことが当たり前になります。

そうすると、「35歳の男性にはこのコンテンツ」と情報を出していたことが、なんて古かったんだろうと思う時代がくる。人の属性だけじゃなくて、「いま何をしているか」によっても、刺さるコンテンツは違うじゃないか、と。

他には、たとえば地図アプリが道案内をしている最中に近くのお店の紹介が音声で流れてくるみたいなことが起こってくると思っています。コンテンツも広告も音声になって相当変わるんじゃないでしょうか。

地図を見ながら観光するとしても、まわりが見えてないじゃないですか。目でできることは目でやって、目じゃなくてもできることは耳でやったらいいんです。

音声によって本当に見るべきものが取り戻される

鳴海:音声のおかげで画面を見ずに済む、スマホもPCも見ないで済むということは、大きな可能性がありますよね。

緒方:よく「可処分時間」と言ったりするんですが、目で見る時間はすでに飽和していて、取り合いになっています。限界だと言われているんです。

けれど、耳の時間は「起きてきている時間全部」なんです。産業としても、この膨大な「ながら時間」を取れるかどうかは、海外でもすごく盛り上がっているトピックだったりします。

鳴海:緒方さんが前に言っていましたけれど、「Voicyを聞き始めてから、通勤電車で富士山が見えることに気がついた」っていうユーザーのツイートがあったと。

僕らがスマホに目を落としていて、素晴らしい発見を見失っていたかもしれない。

緒方:本当にそうです。もったいない。情報取得なんて、目じゃなくてもいいですから。音声によって、僕らが本当に見るべきものが取り戻されると思います。

スマホが出てきたときは、「パソコンがちょっと小さくなるのかな?」「1人に1個もいるのかな?」みたいな懐疑的な空気があったと思うんですが、いまの音声テクノロジーもそれに近い雰囲気を感じますね。

そもそもVoicyの社長がなぜ「紙で」本を出すのか?

鳴海:でもそこまで音声技術、音声メディアを推すのに、今回は紙の本を出した。当然、緒方さんの本だってオーディオブックにすべきじゃないんですか。

緒方:そこですよね。「じゃあ、お前はなんで声で届けないんだ?」って絶対言われる。

鳴海:緒方さんの本の内容、「そのままVoicyで3時間くらいで流せばいいじゃん」ってなりますよね。

緒方:わかります。でも本しか読まない世代にもちゃんと届けたい。「音声が来てるぞ!」ということを音声の世界だけで話題にしても、身内止まりになるじゃないですか。

内輪で「すごいすごい」と言っていてもキリがないので、全然違う土俵のところでもしっかりと理解してもらうことがとても大事だと思っています。

今回はできるだけ書籍と音声の新しい形を模索して、「Voicy+書籍」という取り組みが1つの新しい体験になっていく、ということをやりたかったんです。

声は作家の本人性を文字以上に表します。僕が書いた活字よりも、僕の音声のほうが本人性を持ちますよね。

そして簡単に収録できるというVoicyの強みを組み合わせて、「作者の声で前書きと後書きが聞ける」とか、さらにその内容が更新されていって、読んだ人の質問に答えたり、感想にお礼を言ったりできたら面白いと思ったんです。

鳴海:そうなんです。本を読んでいると、ところどころにQRコードがあって、それを手元のスマホで読み込んだら、緒方さんの声が流れてくる。これはかなり面白い体験でしたね。

緒方:裏話があるんですけれど、本当は前書きと後書きの原稿をしっかりと用意して朗読しようと思っていたんです。それで少し頑張ったんですけれど、やっぱり僕はフリートーク向きなんです。だらだらとしゃべってみました(笑)

著者本人がしゃべる「あとがき」の面白さ

鳴海:面白かったのが、“あとがき”のところにQRコードが載ってるじゃないですか。

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これを読み込んだら、「ここからは声でお届けします。いや〜どうでしたか?(笑)」って緒方さんのテキトーな声が流れてくるんですよ。

そんな本って、今までにないじゃないですか。なんだか著者の楽屋裏に呼ばれたような感じ。あれは不思議ですよね。

緒方:あれくらいのテンションがいいですよね。もっとぶっ壊しても良いかな、とも思ったんです。「この本つくるの大変だったんですよ〜」って。

鳴海:それはいいですよね。実際、忙しい緒方さんが自分でこの本を書いたのかは知らないですけど、あれを聴いて「あ、これは緒方さんという人の本なんだ」ということを認識できた気がします。

声は本人性と言いますけれど、テキストはまったく本人性も身体性もないじゃないですか。もちろんプロの作家には文体というものはありますが、ビジネス書は別かなと思います。

だから、僕が本を読むときは、機械音声が頭の中で流れているイメージなんです。けれど、QRコードを読み込んだ瞬間に、こんな声の人が書いてるんだ、ということが身体的に理解できた。それでようやく緒方さんの本だと思えた。これは本を書く人は全員やったほうがいいんじゃないですか。

緒方:本当にそうだと思う。その人の声で頭の中で再生されるようになるんですよね。そこもすごく面白いところ。それがもっと進めば、著者というものは、自分の本人性も相手に訴求できるようになる。

本のファンになった人たちに向けたコミュニティみたいなものがつくれるかもしれない。あとがきを定期的にアップデートして「声のメルマガ」みたいに続けていくのも面白いですよね。

そうすると出版社さんも新しいマネタイズができることになるんです。今回の本はそういう実験的な部分もあります。

実は、紙で買ったほうが使い勝手がいい本

鳴海:いままでにない読み方、読後感の本でした。ただ、これ困ったのが、スマホのkindleで読んでいると、いったい何を使ってQRコードを読み取ればいいの?ってなる(笑)

緒方:そうなんですよ。端末が2つ必要になりますよね。だからkindle向きではないというか、紙で買ってください!

鳴海:テクノロジーの本なのに紙で買ったほうが体験として良い、というのが皮肉でいいですね。

緒方:ちなみに本のQRコードから飛べる音声はVoicyチャンネル上で公開されていて、実は本を買わなくても聴けるんです。

Voicy方で先に音声を聞いた人が本を買うとか、逆の動きがあっても面白いと思っています。

鳴海:チャンネルのURLはこちらです。

最初にこのチャンネルのほうを聞いて、ワクワクしたら、きっと本を読んでみるといいでしょうね。

緒方:ぜひぜひ。まずは聴いてみてほしいですね。

鳴海:すべての本に、著者の肉声が付いていてほしいと思いました。

緒方:いつか絶対そうなりますよ。そこから「次の月はまた放送が変わります」とか著者が言ったら、その本を手元に残しておこうと思うじゃないですか。

鳴海:メルカリに出さないですよね。来月またこのQRコードを読み込んでください、とか。そう考えると、今後の本は買いきりじゃないのかもしれないですね。

緒方:そうそう。出版+音声はきっと面白くなると思うんです。

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というわけで、『ボイステック革命』。新しいメディアとはなんだろうか?みたいなことも考えさせられる仕掛けがあって、トータルで大満足な本でした。いただいたから言うわけじゃないですけど、おすすめです。


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