ブラームス 弦楽6重奏曲 第1番 第1楽章 楽曲分析(アナリーゼ) 展開部編

さて、リピートを抜けてから展開部となるのですが、キャッチーなメロディーが出てきて、いわゆる「サビ」の部分になるのではなく、今まで出てきた素材をモティーフとして使い音楽を展開させていくので展開部と呼ばれています。

ヴィオラ1番が冒頭の主題を3小節分演奏してヴァイオリン1番へと渡していきます。
ヴァイオリン1番から再びヴィオラ1番へ受け渡されると、さらに音数が少なくなり4分音符3つとなります。

ヴァイオリン1番とヴィオラ1番がようやっと一緒に演奏すると、今度はそれをヴァイオリン2番とチェロ1番で同じことを繰り返します。
しかし今度は一緒にならないで途中からヴァイオリン1番も加わって1拍づつずれて演奏されます。

この部分では冒頭の主題が演奏されているにもかかわらず、何と無く落ち着かないのは何故でしょう?
それは、始まっている和音がドミナントだからなんです。
リピートを抜けると変ロ長調の平行調のト短調へと転調しています。
ト短調のドミナントの和音(D,Fis,A)で始まるため、根音のDの音から主題を演奏しているにもかかわらず、落ち着かないのです。
同じことが153小節目から始まるヴァイオリン2番にも言えます。
ここはイ短調へ転調しています。
1拍ずつずれる箇所ではディミニッシュコードを巧みに織り交ぜてさらに不安を煽るような和音の進行となっています。

練習番号5番(173小節目)からか、ヴァイオリン1番が47小節目を模したフレーズを演奏します。


ここもト短調のドミナント(D,Fis,A)の和音になっています。

177小節目からはヴィオラの1番がその前のヴァイオリンと同じフレーズをハ短調で演奏します。
ここもハ短調のドミナント(G-B-D-F)の和音になっています。

182小節目からは今度はチェロパートに移ってきますが、3連符の形はとらずに8分音符となっています。
ヴィオラが16分音符、ヴァイオリンが8分音符と各パートで違う音価が演奏され緊張感が増していきます。


ここはヘ短調のドミナント(C-E-G-B-Des)の和音です。

練習番号6番(189小節目)でヴィオラ以外は演奏を止めてしまいます。
16分音符を弾いていたヴィオラが3連符から8分音符と音価を長くしていきます。


落ち着いたところで(192小節目)ホ短調で第2主題を模したフレーズを演奏し始めます。


第2主題(61小節目からの)と違ってウラでヴィオラが常に8分音符を刻んでいるので、なかなか落ち着きません。
200小節目からは旋律をチェロ1番に渡されて演奏されます。
ここでは最後ヴァイオリンが絡んできて、変ホ長調→変イ長調→ニ短調と1小節ごとに転調をしています。


しかもニ短調の1度の和音(D-F-A)に解決せずに6度の和音(B-D-F)に解決し、すっきり感がまるでありません。
チェロ1番が根音を弾いているのですが半音下にずれる動きがあり、さらに落ち着きません。


これは、第1主題の最初の3音をモティーフにしている、と思われます。
チェロ2番が常にシンコペーションの形をしていてのも落ち着きません。
ヴィオラがハモりで4分音符3つのモティーフを演奏しています。

223小節目からは変ト長調に転調しています。
シンコペーションのパートがチェロ1番とヴィオラ2番に、と2パートに増えました。


4分音符3つのモティーフは今度はヴァイオリンパートへと移っています。
そのまま緊張感を保ったまま、なだれ込むように練習番号7番(234小節目)に入っていきます。


練習番号7番(234小節目)からは再現部となります。

※展開部まとめ
・ドミナント(5度の和音)で作られていることが多く落ち着かない印象である。
・練習番号5番(173小節目)からは4小節ごとに転調し、しかも和音は全てドミナントである。
・練習番号7番に向かってシンコペーションのリズムやディミニッシュの和音、同主調の6度から(変ロ短調の6度(Ges-B-Des))の再現部への移行、など不安定な上にすっきり感が無い。

(再現部〜終結部編へとつづく)
https://note.com/narumaishinju/n/nffc64f13ff2a

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