ブラームス 弦楽6重奏曲 第1番 第1楽章 楽曲分析(アナリーゼ) 再現部〜終結部編

練習番号7番(234小節目)からは再現部です。
ヴィオラとチェロ1番の3パートが3オクターブユニゾンで第1主題を演奏していにもかかわらず、イマイチはっきりしないのは、残りの3パートがシンコペーションのリズムを延々と演奏しているからと、ベースパート(チェロ2番)が第2転回形のFの音を弾いているからである。


下のパートがF-Bの4度関係にあるので、不安定な感じがするのである。
展開部の不安定な感じを引きずったまま再現部に突入しているのである。


さて、このあとは細かい工夫にも時折触れながら大きく見ていきたいと思っています。
提示部は変ロ長調で始まり、ヘ長調(イ長調含む)で曲が進んできました。
展開部はそのヘ長調の部分をそのまま変ロ長調(ニ長調含む)にして曲ができています。
が、そのまま写したのではなく、使っている楽器を変えてみたりと工夫がみられます。

まず第1主題がヴィオラとチェロ1番の3パートで演奏されます。
この第1主題をヴァイオリンが繰り返さず、21小節目からのさらに発展した形を、さらに発展させていきます。

提示部
・第1主題 10小節+10小節 
・発展した形 10小節
再現部
・第1主題 10小節
・発展した形 13小節

この様に発展した形の方が小節数が多くなっています。
257小節のブレイクするところは、チェロが重音になっていて(2パートあるのでわざわざ重音にしなくても良いのでは?)かなり厚い響きとなっています。

このヴァイオリン2パート、ヴィオラ2パート、チェロ2パートという編成は、きっとヴィオラやチェロに旋律をとらせたい為に考えたのではないか、と思っています。
ヴィオラの「いぶし銀の音」、チェロの「重厚感のある音」が普通の弦楽4重奏に加わると、かなり厚いサウンドになるのは当然のことだと思います。

その視点から旋律を担当している楽器を見ると
第1主題
1小節目
チェロ→ヴァイオリン(ヴィオラがハモり)
練習番号7番(234小節目)
ヴィオラ+チェロ→ヴァイオリン(ハモりもヴァイオリン)

第2主題
練習番号2番(61小節目)
ヴァイオリン(ハモりヴァイオリン)+ヴィオラ(ハモりはチェロ)
練習番号9番(287小節目)
ヴァイオリン(ハモりヴァイオリン)+ヴィオラ(ハモりはチェロ)
ここは同じ。調が違うので音域が違う。

第3主題
練習番号3番(85小節目)
チェロ→ヴァイオリン+ヴィオラ
練習番号10番(311小節目)
ヴィオラ→ヴァイオリン+チェロ

減七の和音(ディミニッシュ)
練習番号4番(103小節目)
ヴィオラ1番がピチカート
練習番号11番(329小節目)
ヴィオラ1番が白玉の延ばし(しかも重音)

長いドミナント
107小節
途中のオブリガートがチェロ
333小節
途中のオブリガートがヴィオラ

この様に第2主題の部分以外は組み合わせの楽器を変えているのである。


長いドミナントのあとは、いよいよ終結部(コーダ)である。
冒頭の主題を再びチェロで演奏させます。
5小節目でオクターブ上がっていたところが無くなり自然と下りてきます。


さすがに下りっぱなしだと曲にならないので、ヴィオラ2番が重なってきたところ(370小節目)で一度上に上がり、また下降してきます。
最後はヴァイオリン1番が加わり、下降しながらPoco piu Moderato(386小節目)に突入します。
つまり終結部に入ってから楽器を変えながらではあるが、20小節以上、下降している様な印象である。
しかも、途中からベースパート(チェロ2番)がFの音をロングトーンしていて長いドミナントとなっているのである。


さてPoco piu Moderatoに入って落ち着くのかと思いきや、ベースパート(チェロ2番)のFの音のロングトーンが続いています。
しかも、その直前はシンコペーションのリズム。
そう、再現部に入る時と同じ手法が使われているのである。

やっと主和音に解決するのは、395小節目。
そこから4回同じ事を音域を変えながら繰り返して、ピチカートだったもの一番最後にアルコにして、ようやくこの曲は終わるのである。

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