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飽きずに笑う

休日の朝、オフィスビルと商業施設とホテルが立ち並ぶ駅に降り立つ。平日と打って変わって人はまばらだ。生活感のない街並みを歩くのも悪くない。

カフェ併設のパン屋で朝食をいただく。くるみとアーモンドのパンと、クラムチャウダーと、コーヒー。もちもちとした生地に、ナッツがふんだんに練り込まれていて、噛めば噛むほどに旨みが広がる。温かいスープに胃腸も喜んでいた。

家族連れで店内が賑わってきたので店をあとにする。雨も降っているし風も強いしどうするかと考えていたところで「さくらももこ展」が近くで開催されているのを知る。見に行くことにした。

展示はさくらももこの生い立ちから始まり、漫画の原画に、アニメ脚本、エッセイなど充実の内容。来た人は皆、原画に釘付けで、ソーシャルディスタンスなるものは忘れ去られていた。愛くるしいキャラクターや、日常に転がっている面白エピソードの数々に顔をほころばぜている人ばかりだった。

さくらももこというと思い出すのが小学生のときのことだ。となり町の図書館で、ちびまる子ちゃんの漫画を借りて読んでいた。装丁が細やかで、幻想的で、テレビで見るちびまる子ちゃんとは随分違う印象を受けた。中身の絵はアニメより素朴で、でも話はおおざっぱというか、あっけらかんとしているというか、あけすけというか。兄弟と一緒になって大笑いしながら読んだ覚えがある。たくさんの人が読んだのだろう、取れてしまいそうなページもあったりして、それでも繰り返し読んだ。

展示のなかでもオチまで覚えている話がいくつも出てきた。覚えているくせに、また同じところで笑ってしまった。ややノスタルジックな気分にもなった。

あの図書館の、あのちびまる子ちゃん、まだあるといいなと思った。


20230508 Written by NARUKURU

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