マガジンのカバー画像

新解釈 竹簡孫子の兵法

62
世界最古の兵法書「孫子の兵法」。その孫子の兵法の中でも最も古い「竹簡孫子」を研究しているマガジンです。孫子の兵法理論である「正奇」や「虚実」「形勢」などの追概念は「陰陽理論」が適…
運営しているクリエイター

#形篇

(20)自然法則で勝利する-竹簡孫子 形篇第四

(20)自然法則で勝利する-竹簡孫子 形篇第四

形篇の解説も最後になりました。つまるところ形篇では、何を伝えたいのか。

「自然法則に則りなさい」ということです。
つまり、相手よりも戦力を蓄え、より大きな戦力、いや総合力、国力を持つものが勝つという子供でもわかる常識に則りなさいということです。

戦う事が仕事の軍人は、精神論や戦略戦術、武器などで勝利を収めようとするかもしれませんが、孫子は国家の総合力から蓄えられる戦力で勝つという基本的な方針に

もっとみる
(19)守備優位-竹簡孫子 形篇第四

(19)守備優位-竹簡孫子 形篇第四

形篇は、竹簡孫子と現行孫子との間で重大な違いが存在する篇である。
下記の二つを見比べてほしい。

【竹簡孫子 書き下し文】
勝つ可からざるは守りにして、勝つ可きは攻むるなり。守らば則ち余り有りて、攻むれば則ち足らず。昔の善く守る者は、九地の下に蔵(かく)れ、九天の上に動く。故に能く自ら保ちて勝ちを全うするなり。

【現行孫子 書き下し文】
勝つ可からざるは守るなり。勝つ可きは攻むるなり。守るは則ち

もっとみる
(18)負けない態勢-竹簡孫子 形篇第四

(18)負けない態勢-竹簡孫子 形篇第四

それでは形篇を読み進めてまいります。

【書き下し文】
孫子曰く、昔の善く戦う者は、先ず勝つ可(べ)からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ。勝つ可からざるは己に在るも、勝つ可きは敵に在り。故に善く戦う者は、能く勝つ可からざるを為すも、敵をして必ず勝つ可から使(し)むること能わず。故に曰く、勝ちは知る可きも、為すべからざるなり。

【現代訳】
孫子は言う。「昔の戦上手の者は、まずこちらが負けない体

もっとみる
(17)「形」と「勢」の関係 戦力充実の「静」と「動」-竹簡孫子 形篇第四

(17)「形」と「勢」の関係 戦力充実の「静」と「動」-竹簡孫子 形篇第四

形篇第四からようやく実際に軍事力を衝突させる戦い方に入っていきます。著者の孫武という軍事思想家は、周到な準備をどこまでも積み上げていきます。
計篇では、彼我の戦力を調査分析し、日々の努力で優位性を築こうとします。作戦篇では、戦場での軍隊の戦力だけでなく、それを支える国家経済や国民家計の裏付けを大切にします。謀攻篇では、戦わずに勝つ謀略を仕掛けます。

そして形篇では、自軍の戦力を集め維持することを

もっとみる
形篇 第四(新解釈/竹簡孫子)

形篇 第四(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「昔の戦上手の者は、まずこちらが負けない体勢を作り上げてから、敵が体勢を崩して容易に撃破できる状況になるのを待った」と。
 負けない体勢は自己の範疇ですが、敵を撃破することは相手の範疇です。
 したがって戦上手の者は、自軍が絶対に負けない体勢を作り上げることはできても、絶対に勝てる状況を自己の努力で作り出すことができないとするのです。それゆえに昔から「勝利の理屈はわかっても

もっとみる