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新解釈 竹簡孫子の兵法

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世界最古の兵法書「孫子の兵法」。その孫子の兵法の中でも最も古い「竹簡孫子」を研究しているマガジンです。孫子の兵法理論である「正奇」や「虚実」「形勢」などの追概念は「陰陽理論」が適…
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#軍争篇

(35)集団を動かす時の注意点-竹簡孫子 軍争篇第七

(35)集団を動かす時の注意点-竹簡孫子 軍争篇第七

軍争篇の篇末は、昔から多くの研究者の間で議論されています。軍争篇にあるのは間違いで、九変篇の冒頭にあるべきではないかと。事実、現行孫子では九変篇に組み入れられている。

この件に関して、私の見解を述べると、「竹簡孫子」の構成である軍争篇の篇末にある方が、意味が通じるので、軍争篇に入れる方が正しいという立場に立ちたいと思います。

なぜそう言えるのかというと、軍争篇は、主導権争いに勝ための軍隊の動か

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(34)人間の性質を使う-竹簡孫子 軍争篇第七

(34)人間の性質を使う-竹簡孫子 軍争篇第七

孫子は、陰陽という自然の摂理に則っているため、その主張に一つの無理もありません。ましては根性論など持っても他です。

軍争篇は、非常に緻密な洞察をします。主導権争いに勝つための方法、軍隊の適切な動かし方について述べましたが、一つ問題が残ります。

それは兵士が計算通りに動くのかという問題です。軍争篇の後半は、人間の性質に言及していきます。人間の性質に則れば、自然に軍隊を動かすことができるという訳で

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(33)軍隊の動かし方-竹簡孫子 軍争篇第七

(33)軍隊の動かし方-竹簡孫子 軍争篇第七

本項は、孫子の兵法で最も有名な言葉の一つ「風林火山」が出てくる回です。風林火山は戦国武将の武田信玄が孫子の兵法の言葉を旗に記したもので、敵はこの旗を見ただけで恐れたようですね。

軍争篇は、敵と味方の主導権争いについた解説する篇ですから、「風林火山」も主導権争いで勝つための一つの方策として書かれたもので、その言葉だけでは学びは多くありません。その前後の文脈から内容を追っていきます。

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(32)主導権争いとリスク-竹簡孫子 軍争篇第七

(32)主導権争いとリスク-竹簡孫子 軍争篇第七

「軍争は利為り、軍争は危為り」という。軍争は利益でもあるがリスクであるという意味です。

現代人に生きる私たちは、利益である、リスクであると言われても詳細なイメージがしにくい。そこで図で考えたいと思う。

まず古代の軍隊は縦列になって従軍する。前と後とではかなりの距離になる。

そういう訳ですから、戦場に早く到達できるということは、まず第一に戦力を集中・充実させられる。次に戦場の中で有利な場所を先

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(31)迂直の計-竹簡孫子 軍争篇第七

(31)迂直の計-竹簡孫子 軍争篇第七

それでは軍争篇第七の解説をしていきたいと思います。詳細な説明に入る前に、まず軍争篇が、「孫子」全体の中でどのような役割を担っているかを考えてみましょう。

虚実篇は、敵と味方の間で、虚実/戦力差を作り出す方法について述べていました。軍争篇は、戦力差を作り出す方法を、より詳細に深掘りしていく篇になります。虚実篇で述べた「人を致して致されず」は、敵と味方の間で、体力の状態が、元気である「佚」と疲労して

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軍争篇 第七(新解釈/竹簡孫子)

軍争篇 第七(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「およそ用兵において、将軍が君主より出撃命令を受けてから、軍隊を編成し兵士を招集してから、敵軍と対陣して宿営するまでの間で、いかに相手よりも早く戦場に到達するという「軍争」(主導権争い)ほど難しいことはない」と。

「軍争」(主導権争い)の難しさは、遠回りの道を直線に、つまり最短経路に変えて、憂いごとを利益に転ずることにあります。だから一見すると遠回りを選択しながら、敵軍を

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