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報道(NHK)・感想―岩手県関係者のシベリア抑留と生々しく醜悪なロシア偽情報戦

昨日のnote投稿記事に、日ソ戦争やシベリア抑留の話は、原爆・終戦の日・関東大震災と比べて非常に少ないという意味のことを書いたが、今日のNHKローカル(岩手県)では、「シベリア抑留などの犠牲者 盛岡で追悼参加し 慰霊祭」というニュースが放映されていた。
それによれば、旧ソ連によるシベリア抑留では、「元日本兵・民間人 57万余」のうち、「約5万5、000千人 死亡」、「岩手県関係者 約8,000人 約1、200人死亡」ということである。
この数字によれば、全体の死亡率はおよそ10人に1人であるのに対して、岩手県関係者の死亡率はおよそ6人に1人となっており、かなり高い。
 
一方全国ニュースの方では、ロシアでこれまで「第2次世界大戦終結の日」であった9月はじめの記念日の名称が、今年6月に「軍国主義日本に対する勝利と第2次世界大戦終結の日」に変更され、今日9月3日、各地で式典が行われたことが報じられた。
報道によれば、樺太(サハリン)のユジノサハリンスクで行われた行事には、ロシアのトルトネフ副首相とメドヴェージェフ安全保障会議副議長が出席した。
メドヴェージェフは講演で、日本について、「軍事インフラを拡大し、アジア太平洋情勢を複雑化させている」と一方的に批判し、「欧米と共にロシアを牽制し、ウクライナの支援を続ける日本を強くけん制した」、という。さらに、「(日本は)20世紀半ばのように、またもナチス政権を支持しようとしている。今回はウクライナだ。この事実を強く非難する。」とも述べた。(映像では、この後軍服姿の者達が、「ウラー」三唱をしている。)
これに対して、日本の松野官房長官は、「今回の(記念日の名称変更の)成立は、ロシア国民の半日感情をあおるのみならず、日本国内の反ロシア感情をあおることにもつながりかねないもので大変遺憾だ」と述べたという。
報道によれば、ロシアにおける今日の記念行事は、北方領土でも行われた。NHKの解説によれば、「ロシアは北方領土交渉を含む平和条約交渉を中断すると一方的に表明し、ビザなし交流などの交流事業も中止されたままである。」とのことである。
 
ソ連=スターリンは、1939年、ナチス=ヒトラーと手を組んでポーランド、ウクライナ、ベラルーシ、バルト諸国などを蹂躙していたが、その後スターリンがボケッとしていたおかげで1941年、ナチスに三方向から国土を侵略されてしまった。
ロシアは、1939年から41の間の歴史をなかったことに隠蔽することによって、ロシア=非ナチスと規定し、今ではウクライナや日本をナチスとする狂った物語を拵え、宣伝するに至っている。
 
「黙説法」という、ある全体のストーリーの中の一部を故意に語らない(ことによって特有の物語論的効果をもたらす)、という物語の技法が存在するが、ここでロシアが利用している(偽情報)物語の技法の一つは、これすなわち黙説法である。これによって、ロシアこそナチスを倒した物語の善なる主人公、という効果が得られる。
この善の主人公は、ヒトラーを倒した後、ナチス=日本を倒し、真の世界平和を達成したということらしい。
このロシア作(空想)物語の中ではそうらしいが、無論のこと、現実の歴史の中ではそうではない。戦争が終わってスターリンの圧政からいよいよ解放されると思っていた当時のソ連の多くの人々も、その後、そうではない、ということに気付いた筈である。
威張り腐っていた関東軍が民間人を見捨てて早々に逃走を図るなど、内部的には醜悪な事態がたくさん起こっていたとはいえ、既に継戦能力を失い武装解除までしていた日本軍を場外乱闘で追い詰め、観客席にまで雪崩れ込んで多数の人々を強制連行・強制労働させたスターリンと赤軍ロシアの所業こそが、まさに「ナチス」である。
善の主人公の下から、どうして東ヨーロッパの国々が続々と逃げ、「NATO東方拡大」を続け、現在さらに「北方拡大」までしているのか・・・・議論しても無駄であるが、とはいえ、このような物語に対するに、「遺憾節」以外の、国民に共有された、より実質的に有効な物語を我々が身に着けて行くことも、必要だろう。
 
偽情報物語に対して偽情報物語をもって戦うことは悪いことであるが、しかし、現在ウクライナが死を賭して行っているように、「悪い偽情報物語」に対して、善い物語(あるいはもう少しはマシな物語)をもって戦うことは、悪いことではないだろう。

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