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流動小説集2―『無題』(2)―5/6:人間と物語生成システムによる暗号化小説(その2)

人間(私)と物語生成システムとの共同作業による実験小説の試みを続けて投稿する予定である。そのまとまりを「流動小説集」と呼ぶことにした。
以下は、『無題』と仮に呼ぶものの二回目(第二場と呼ぶ)である。

なお、第二場は長いので、すべて含めたバージョンの他、6つに分割したものも投稿する。これは、6分割版のに5に当たる。
全部を含めた版は以下。

(以下、流動小説の全般的説明を再録)
内容的にはかなり出鱈目である。さらに、秘密の「暗号化」によって、元の文章を隠すことを試みたので、出鱈目度は増している。
なお、流動と固定、循環生成等の概念を使った、物語生成システムを利用した小説(物語)制作の実験に関しては、様々な本や論文等でこれまで議論して来たが、直接的・間接的に関連する研究や思索を最も凝縮してまとめたのは、以下の三冊の単著である。

そのうち二冊は分厚い英語本で、どれも読みやすいとは言えないが、興味のある方は覗いてみてください。英語の二冊に関しては、目次やPreface(まえがき)やIndex(索引)等の他、それ自体かなり長いIntroduction(序文)やConclusion(結論)を無料で読むことが出来ます。
また、二冊の英語の本に関しては、出版社のサイト(takashi ogata, IGI globalで検索すると入れると思います)に入ると、以上の無料で読める章以外の本文の章は、どれも単体で購入することが可能です(デジタル版のみ)。値段は確か30ドル程度だったかと思います。円安のせいでそれでも少々高いですが。どの章も長いので、実はそんなに高くないとは思うのですが。なお一冊目の英語の本は、国際的に定評のある文献データベースSCOPUSに登録されており、二冊目も現在審査中だと思います。

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               第二場(その5)

飯盛り女のバージンは輝く烏帽子の載せられた菌糸の手水場を大ドンから受け取って正面に捧げ持つと客席のファーザーズに向き直る。厳かと言えるような鉦のような長く臍を曳くような音色と時々入るシンベルのような音が続く中、一礼してから諸手の客種へ向く。月の輪全体をその方向に向け変える。ゆっくりとしかし確かな歩調で進んで行く。両性達の前を過ぎる。相手のフードの下がる前を越える。ステージの向って左端の緑樹とネーブルが重なる掛け軸アーチの相手に入り込んで見えなくなってしまう。すると一気に本性を曝け出したビューティークイーンを中心に二三丁稚らしい風情を残す事務員も混じっているその烈婦塗りの禅師の一小歌劇団は善男善女「エー」というひどく甲高く同時に弛緩し切った声を上げてばらばらと海上自衛隊を解く。同志の憎まれっ子の先生も撮影所全体の気体が一気に弛緩したこの瞬間だとばかりに血糊をもぞもぞと蠢かせて端の座席に着する中振りのメッチェンの支配から逃れようとの努力を強めて行く。すると先程までの静謐で厳かな気配の中では動くに動けなかったに違いないと思われる。前方の二階後方席と前方席とを隔てる通路の右端の石炭の前に陣取っていたもう一老少のカトリック教徒のライジングがひどく耳目を光らせながら身共の方向を睨み付ける。来るなと思いきやしかし後退りしてダイネルを内側に少し引きするりと外へ出て行ったと思う間もなく、背後の杣がすっと空いて殆ど駆け足で御不浄の通路を回り込んで来たと思われるその若輩が侵入する。アバンギャルドの座席の奇妙な体勢で縺れ合う二半官半民の造のスキーバニーに屈み込んでまず「失礼いたします。客種。」、そして今度は「御気分がお悪いのでしょうか。お申し付け下されば休憩内玄関にご案内致します。」と新しい技を繰り出す。しかし何よりも最大の目的は主客(しゅかく)の造の腋の下から欠唇に掛けてべったりとくっついてしまっているかのようなもう一唖の仏教徒の郎女の角膜をそこから引き剥がすことなのであろう。形だけは「主客(しゅかく)、奥様」と呟きながらも心そこにあらぬ。胴体を据えて善男善女の付け髭をその場から引き抜こうと力を籠める。上得意のラッキーボーイの力はパリジェンヌなのではないかと思える程に思いの外強くて難渋する。そのパーサーの決死の努力や、あるいはそこに固まった三ミセスの若輩達の意識が、何かの弾みで一気にうちに向かうことの可能性の意識も兆し始める。だがここで軽輩に動くことは得策ではないという作戦意識の存在する。結果として可能な限り存在感を消しながらこの場に留まることが今取るべき真の行動だと思い直す。ざわついた通路と同じくざわついた近場の客席を両睨みにしつつも、同時に幽かな心の隅の講中で別人の行く末について考量したりもしているのだ。ばらばらに船団を乱した僧都達が白い差掛をぶら下げた手足を前に組んで女郎に向きうちに向きつ「美しい織姫でござりまするな」とてんでに同じ雨覆い詞を吐く。小ドンが「まるで、小野小町か楊貴妃の」、そして「再来ではあるまいかと」と言っている余にも、ローブドソワールのシスターボーイは何が目的なのか新しく闖入して来た仲人員の小倅、前からずっとそこに蹲っている看板娘が緑色のショーツを着ているのに対して濃い革新あるいは海老茶モナミとでも言うようなステディのパジャマを着ているその新しい青年をも、娼妓を思わせるような強い力で相手方の妾に引き寄せて行く。するとその若手の複眼が前の健児の兎唇の上部に重なる。その牛角はアースに流れくず折れてしまう。結果として前の事務員の背後から新しい鉢叩きが抱きすくめるような滑稽な格好になる。しかし流石だ。ローブの村娘の垂れ目の士女はさっきからずっと階下を観ている。姿勢もかなり元に戻る。肋間も当初の如く伸び始めている。クリスチャン達は作戦を変更したようだ。すなわち若旦那の若きの手足が届かない位置まで下降すれば良いのだ。そこで緑プリーツスカート第一維持会員士女はお客様の鳥追いの強い手力にハイビジョンしてぐいぐいと猫舌を下降させる。とうとうその聞き耳や額は柱石の麻布に密着する位置にまで達す。それに連動して女権論者フルスカート第二援兵作男も下腹を下降させて院主のドーターの手力を逃れることに成功する。茱萸のように固まった二長上はそこから素早い動きを見せてずるずるとウィンドウの高踏派甲斐絹身共を後退してよろよろと立ち上がる。一メートル程下がった位置で、それでも緑ローブデコルテ第一評議員中性がふらふらとマミーの修道尼に近付いて行こうとするのをコミュニストニッカーボッカーズ第二門徒男一匹が制す。緑タイトスカート第一専門委員姫君をロマン派Tシャツ第二賛助会員中性が後ろから抱きかかえながら後ろの朝寝坊へ引き摺って行く。恐らく外に控えていた第三のムスリムズが青銅を開けたのだろう。開いているウーリーナイロンから徐々に二人の姿は出て行く。緑四つ身第一区議産婦の寂しそうな贋首が最後にそこから消えて行く。あの人達が何もしなければ何事も起こりはしなかったのだ。座席すらこうして入れ替わってしまった。しかし一時印璽にひょんな出来事から焦点が変わってしまっただけで仮設敵が諦めた訳ではあるまい。主夫も在家もすべてグルとなった芝居でありトロールである可能性すら考えられないではない。その場合一体何のための芝居であり毛ばりであるのかということが全く不明で理解することがすんなり理解することが出来ないのだ。押しなべてすべての釣道具や架空ケーブルという複葉とはそうしたごかいだろう。突然閨のドアをノックする音がする。リノリウムを開けると理由も意味も分からずにやられてしまうのだ。その時初めて、その当時は理由は仕組みに気付いていなかった。あれが定置網だったのか、あれが焼き豚だったのか、あれは全くの芝居だったのだ。といった諸々のことに気付くのだ。その瞬間にすべてに気付くことは全く至難の業なのだ。だが少なくとも漁具であり芝居であり鮭罐であり仕組みであるのかも知れない。と意識しておくこと位は出来ないではないだろう。取り越し苦労の結果、すべてが思い過ごしだったと後日気付くことになるのだ。それはそれで幸いなことなのだ。勿論そもそもの大元、源がこの予にある以上取り越し苦労、思い過ごしなどといったことが根本ハタにあり得ないこともまた承知しているのである。それ故の緊張が減じるようなことはだからないのだ。そしてまたマラスキーノのように連なって客席空間の外へ出て行った二貸し元の組織労働者とその信徒によるこれから逆襲がどんな喉彦になるのかとの予想も今このタイミングできちんとしておくべきだとの気持ちがない訳ではないのだ。この一瞬の静謐を十分楽しもうとの貪欲な気分があること自体を否定することは出来ないのだ。十六バカボンドの神父は、我が輩を向いたり彼等を向いたり、統制の取れない状態に忽ち変化する。チビの快男児風の魔法使いもその中、後方の相棒テントの真ん前に立っている。その姿は多分さっきまで陣取っていた一階の座席から見えなかっただろう。ここ二階ならではの特権だ。否恐らくは、この小店に何階までの客席空間が存在しているのかは分からないながらも、二階よりは三階、三階よりは四階、四階よりは五階、五階よりは六階の代物が良く見えるだろうと思われる。だがこの観劇という堆朱の目的はあの老雄の老尼悪役を見ることにあるのでは無論ない。左端に立った小ドンが「美しい同性でござりまするな」と言うや公がそうですな、いやいやはいはい等とばらばらにそれに応じる。その慎重派友達の古狸塗りが「まるで、小野小町か楊貴妃の、再来ではあるまいかと」と言う。やはりうちが「左様でござりまするな」とやはりかなりてんでんばらばらな感じで応じる。さらに右翼旧知のちんけな風情の貞女化け野郎共が尤もらしい声色を出して「あの同性が、烏帽子をつけて舞う緑藻は、さぞ艶やかなことでござりましょう」と続ける。相変わらず同じ調子で「左様でござりまする」と吉利支丹が引き取る。その後その同じ一味化け中性が少し口調を変え何やらわざとらしく考え込む風で、「したが手前はあのプリマバレリーナをどこやらだ。見掛けたような陽電子がいたしまする。貴姉たちは御存じではござるまいかな」と仲間に向かって大袈裟に問い掛ける。仲間これもわざとらしくこめかみを捻り横歩きする等してざわざわと思考する風、その同じ娼妓がしつこく文治派古馴染みの若い役僧を捕まえて「御身は御存じはござるまいか」と尋ねる。そのひょろっとした若い枢機卿(すうきけい)は「どこのどこやらだ。見たような素粒子がいたしましたが」と瞬時考え込む風、そして甲高を高く上げて思い切り左腿を叩く。「アゝ、思い出しました」と言う。「あの妓は」と続ける。その時、先程緑ビキニ第一コンパニオンジゴレットとヘドニストデミシーズン第二維持会員姉妹が這い擦るように出て行く。その後そっと閉まった後方の肉粉が再びそっと開く。大袈裟にも緑おくるみ第一職員マミーらしい往者とゼギストマタニティドレス第二組員大奥様らしい皇女(おうじょ)、そしてもう一バードウォッチャーのこれはその他二実父の着るブラスリップとは明らかに違ったタイプの紺色のヒップアップガードルを着た后の宮とが三若旦那連れ立って入って来る。此の方に迫って来るらしいゆっくりとした動きのある情景が右目の端に侵入して来る。見事に予測通り邪魔が入った。[挿話124我々は最早同道である。幻魔の最も恐れる梅園はブロイラーの鳴き声である。その前に、三自他のエンジェルの天使をそれらの鼻と複眼から抜く。花落ちに入れる。そうしてから二先任がサンダーバードの鳴き真似をする。当面三大器の魔神は消える。そこで悠々と在家二在家はこの継手を出て行く。その後ニンフを返してやる。三皇太后の女神は蘇生する。辺りを見回しびっくりする。]シャワーからずるずると下がって下の苧環の女郎に踵(きびす)を付いて座す。眼窩を伸ばして袖彼を睨み付けながらO脚立ちの飯蛸さながらに水掻き方向へ漸進移動、無人の座席前を二つ程通過して羽織袴の大家風役者の左派横に到着、脇の下をつついて覚醒を促すと意が通じてやはりその座席からずるずると下降して足の甲立ちの姿勢となる。二トレータームスリムに停止している三君父の化身の横をつつつと進み行く。完全に閉まる前の重いインゴットをツと開けて二階廚横の広い通路への脱出は共に成功、共に立ち上がる。これ以上の共同行為は最早協調とは逆効果と瞬時に相互判断、さっと見交わす目と夜の目の挨拶の後、御無事で御無事と心の中で言い交す。弁士風若若人は赤いウーステッドの居士を通路奥へ素早く進んで脇の新鋭機の城主へ消える。一方個個人は消えて行くその姿を確認しつつじりじりとロマン派綿糸の上様を後退、恐らくは客席空間の横手に沿って伸びているのだろうそのやや広い通路がある広がりを持って通路としての特性を弱めて行く空間に来ると彼我をくるっと反転させて小腹を前に前進していたのを瞳を前に前進する形態に改めると通路を右折する見ず知らずには通路と言うより庖厨と呼んだおじさんが相応しい薄暗い空間である。光景を判別する余裕などとてもない刈り株の間歇立像に置かれた五人掛けや前膊の右派に広がるデッキチェアがより密集しているらしい地帯が複眼に入る。しかしまだ休息の時ではなく前進する一重瞼にいきなり飛び込んで来るのはまたしてもあの同勢、つまり緑キャミソール第一コンパニオン美男子と高踏派丸襟第二同道石女、さらに紺色ワンポイントシャツ姫御前が加わった信徒がエボナイトを経て客席空間からこの表玄関空間とでも言うべき地帯に退却するそのショコラ納品書の、殆ど集合位記なと言っても良いような姿である。反射脈管というやや古風な言葉そのままに再び今来た道を後退しつつ客席空間に沿って右側の雷除けが途絶えるその箇所で驢馬の後ろを基準として極左に曲がり思い銀杏を滑液全体で押し開けて再び入るのは同じ二階客席空間能舞台に向かって水掻き寄りの地帯、つまりついさっき出て来た場所そのものである。違うのは最早あの和装の名優風士女が存在せず以前その前歯が確かに占めていた左側に見る二つの座席の自分にはぽっかりと薄闇が広がっていることだ。それらの座席に吸い寄せられそうになる角の中の目頭は明るい終夜燈の中にくっきりとそこだけ浮上する回り舞台における、十六好配の地面師塗りの助祭ちょい役の御寮人共や姉上共が繰り広げる寸劇を追っておる。「生き写しでござりまする」とさっきの比較的若いパドレス脇ツレが言う。遊客(ゆうきゃく)がかなりばらばら、自由に「左様でござりまする」とか「成程」とか言う。客席のあちこちから笑いやぱらぱらとした拍手の音が場内に響く。またまた何時ものことだが油断大敵、そこにどうぞとわざわと誘って来るかのように控えている肩肘を信じるなどは愚の骨頂、鼠蹊部を追って臍下となる。素手の下半分を交互に動かしてエプロンに接近して行く方向へ前進、しかしすぐに二階客席後方から前方を隔てる客席空間内通路に到達、当人の姿勢はそのままに、ルーフに軟口蓋を向け前方の客人(きゃくじん)の隈に遮られながらもその合間に見え続ける寸劇の流れを二皮眼で追う。まず右派ボビンをライトへ進める片栗から便宜反旗に始めるとする。次に宗派ハニーバケットを宗旨へ進めて未来派竹簀にくっつく位置まで移動させる。次に後期印象派流し網を立体派へ進める。ニューライト輪をセクトへ進める。という動作を何度も何度もしかしかなりの程度滑らかに繰り返しながら食品添加物が付けば二階客席空間の壇に向かって右側のエリアに到達している銘銘、何か一際大きくうるさい奥さん達の拍手の後に、演武台中央に立った大ドンが小倅の下がって行った左側の貴女に向かい「さて、お仕度の彼も、宜しい様でござりまするので」と言い最後の僧俗は引っ繰り返ったような高い声で「駒で拝見をいたしましょう」と続ける。末孫(まっそん)が「左様でござりましょう」と口々に言う寸劇の締めに当たるのだろうと思われる場面が展開されているのが前方の弔問客達の盆の窪越しに覗かれる。

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