marinappur

思い返せば、恋をしていた そんなあの日の私へ。 夜に紡ぐ、小さな物語。

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最近の記事

ふるさと

僕が生まれ育った 変わらないはずの このふるさとに 見知らぬ建物が増え、 どこか置いてかれた気がしたんだ 走る電車も流れる川も 時に逆らいもがく僕も 全部が全部ここに ずっと居られる訳じゃなくて 流されながら生きている あのころ好きだった君は 太陽の匂いがしたんだよな だから晴れの日は 君を思い出しては泣いていた 君と出会って、 僕は生きることの難しさを知った 強くなれる理由は、確かに君にあった 突然の雨粒がアスファルトを襲い、 独特辺りに独特の臭いが立ち込める 雨

    • Answer,

      「二人の関係に名前をつけよう」 なんて言う君、恋人とは違う私達 そばにいる意味なんて そばにいたいだけでいいじゃない ずっと一緒にいられる自信も確証もないし 君のいない人生を歩もうと 知らない街に飛び込み 見知らぬ人の波をたくさん歩いた 君がいたらなあ 細い体も 乾いた手も 透き通った瞳も 全部好きなんだ 君のために生きる意味を考えてみた 誰よりも強くまっすぐで 人と違う変わり者だけれど 壊れた私に生きる意味を教えてくれた 私の人生を変えてくれた もし、私がいな

      • PLAYLIST

        君の好きなバンドに歌を耳にし、 愛されていた過去が蘇るAM1:00 夜に秋風感じながらドライブをし、 海の見える岬で私を抱きしめてくれた君 初めて二人で会った日に作ったプレイリスト 君は今も聞いてくれているのだろうか 私を思い出してくれているのだろうか

        • train

          田舎の無人駅。 一日に数本しか通らない電車。 この赤茶色に錆びたレール達ですら、 役目があるのだ。 影になったホームに1人立ち、 遠くの晴れた空を見上げ、 秋風に吹かれた瞬間、僕は急に怖くなる。 どうしようもない孤独感に襲われ、 途端に打ちひしがれてしまう。 一体なんのために生きているのだろう。 その瞬間、レールに飛び込み、 レールと共にただひたすら 数本しか来ない電車を我が身を持って受け止めたくなる。 そう考えてしまうほどに、 僕は、僕は、 価値のない人間なの

          ヒト

          雑踏の中にたたずみ、 街行く人々に目を向ける。 容姿も年齢も性別も違う人間達が ここにはいるのだ。 誰もが別々のことを考える、 不可思議な生き物なのだ。 分かり合えるはずもない、 分かり合いたくもない。 時に人は甘い顔を見せ、時に牙を剥く。 凶暴で残酷な生き物なのだ。 そして私も、 その不可思議で残酷な生き物なのだ。

          PM5:00

          君の部屋の香りが離れない 腕を回してキスをして カーテンから透ける 夕方のオレンジが 私達を照らす なかなか起きないや 横顔が綺麗だな あ、髪がだいぶ伸びてるな 2人なのに私は1人 下に向けた君のスマホが鳴る そこには私の知らない世界が広がる 飲みきれないお酒 飲み込んだ言葉 グラスに残った氷はすっかり無くなった ああ空っぽなあたしを満たして なんて言わないから せめて今日くらいは夢を見させて

          Telephone

          不安を胸に震える指でダイヤルを回す 機械越しの聞きなれた優しい声 何も言わずにただ私を飲み込んで それが今夜だけだとしても 私には十分だった

          ピアノの発表会

          昔発表会で弾いた楽譜 久々に弾こうと思い漁る本棚 あれ、 ない。 「捨てたかも」 と母が一言。 悲しさが込み上げた でも、私も大切なら それを守るべきだった 大切なものって 失ってから初めて大切さに気づくんだな なんて、ありがちな話。

          ピアノの発表会

          親愛なるs へ。

          すぐに人を振り回しちゃう、 まるで少年のよう 大切なことも忘れてしまう、 まるで老人のよう だけど何も言わなくても寄り添ってくれる 不思議な力を持つ あの日私を救ってくれた君は いつまでも大切な人 だけど、涙が出るのはいつだって私みたい いつか、私を思い出して泣いてね

          親愛なるs へ。

          メロンソーダ

          喫茶店で無意識に頼んだメロンソーダ。  ふいに彼を思い出した。 別れた時は一生の終わりだと思っていたくせに、結局時間が経てば忘れてしまう。 私の紡いできた愛って薄くてペラッペラ。 ファミレスでも焼肉屋でも 欠かさずそれを頼んでいた彼は、 今どこで何をしているのだろうか。 薄くスライスされたレモンが氷に挟まれて 窮屈そうにしながら メロンソーダに溺れていた。

          メロンソーダ

          古き良き、

          新しいものを手に入れて、 全てを忘れるつもりでいた。 「次は新しいカフェに行こうか。」 あの人だったら、 アテもなく車も走らせるんだろうな。 それで急に「車の中でカラオケでもしよう」 なんて笑うもんだから 私はきっと怒る気も無くなっちゃうんだろうな。 「どうかした?」 「ううん、なんでもないよ。」   あの人だったら、 なんてまた考えてしまって、 いつまでも古いものに固執してしまう自分。 惨めで、苦しかった。

          古き良き、

          花言葉

          いつか君が好きだと話していた チョコレートコスモス。 駅前の花屋で買って君の元へ向かった。 「彼女に渡すんです」 と言うと、店員は 「花言葉は移り変わらぬ気持ち、なんですよ」 と教えてくれた。 花束なんてガラじゃないけれど、 喜んでもらえるだろうか。 待ち合わせ場所には 水色のワンピースを身に纏った君がいた。 「君に渡したいものがあるんだ。」 後ろ手に持った花束を差し出した。 まるでテレビドラマのワンシーンみたいだ、 と自分でも思う。 彼女は目を丸くした

          桜舞う、春。

          桜並木を歩くのが好きだ。 落ち込む度に幼い頃から見上げ続けた この景色を強く求める。 風吹けばひらひら舞う花びら、 それを自分と重ねる。 私っていつも人に流され、 ふらふらと世間を漂っているよなあ。 私の意思って何処にあるんだろうなあ。 偶然手に落ちたひとひらが、 どこか私自身の様に思えて愛おしく感じた。 春の陽気に包まれながら、 大きく息を吸い込む。 美しい桜でさえ、 葉に変わる段階はお世辞にも綺麗とはいえない。 不格好でもいいじゃないか。 よし、 明日

          桜舞う、春。

          背景、現代人。

          必死に抵抗しても、 それに打ち勝つ事は不可能だった。 戦えど戦えど、 それは己の無力感を突き付けてくる。 それはやがて一生消えない傷を刻む。 進もうとすればする程 じくじく痛む傷が僕の歩みを阻む。 振り返ることでさえ怖い僕は、 ただ地面に目を落とす。 やがて諦めたように進むことを辞め、 仰向けに寝転がり目を閉じる。 無理に戦う必要なんて無い。 気がつくと、それは消え去っていた。

          背景、現代人。