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#1 ビジネスと文化がどう繋がるのか?こんまりの事例から【前編】

働く人の頭が晴れたらいいなと思って、ラジオを始めました。

この番組はですね、人文学とビジネスがどうつながるのかっていうのを、面白おかしく話していくラジオ番組です。

人文学とビジネスってつながりあるんですか?
なんで繋げなきゃいけないんですかあ?

いや、むっちゃつながりある。
今日はこんまりさんの事例を見ながら、世界に大きな影響を与えるラグジュアリーブランドと文化の関係性を解説します。


で、あなた誰?自己紹介

初めましての方もいると思いますので、まず僕の自己紹介をしていきます。

25歳の頃、高知県で養鶏農家をやりながら農村で暮らしてました。
その後、東京に戻ってきて広告代理店でデジタルマーケティングをやってました。
デジタルのマーケティングやっていてちょっと面白いなって思ったんで、マーケティングスクールMERCっていうのを一緒に立ち上げてました。
農村での経験や、こんまりさんの片づけで理想の暮らしを実現する事業のマーケティングディレクターってやつもやってました。

マーケティングの違和感と限界

ところがある日ふとね、思っちゃったんですよね。
マーケティングにちょっと限界感じちゃうな〜って。
特にデジタルマーケは数字を追い求めるわけなんですけれども、人も数値化したりとかして、それでPDCAってやつを高速サイクルで回していくわけです。それ自体は改善していくのは全然嫌じゃないですけれども。

何が違和感かって、
「あなたの幸せはこうすれば幸せです」っていう前提が匂うんですよね。
例えば、ブランディングとかマーケティングのフレームワークで、「こうすればこういうふうに幸せになれる」ってビジョンを見せるのをベネフィットと呼ばれてます。
マーケティングはこちらが設定したベネフィットを顧客の脳内に見せていくんですけど、こんなは自分なんかが人様のベネフィットを設定してるなんて「それちょっとおこがましくない?」って思っちゃって。
もちろん、インサイト調査もやりますよ。90分ぐらいかけて相手の深い深いところまで耳を傾けて、本当に欲しいものは何なんだろうって、どうすればこの人に喜んでもらえるんだろうって、めっちゃ考えます。
僕は人に喜んでもらいたいっていう営みを持っているマーケティング自体は全然否定しないんですが、
こっちがベネフィットを設定する時に違和感なんですよね。
なんかこれを買えば、こういうふうになれるんだ私!みたいな。
「ディズニーに行く=楽しくなれる!!」
悪くないんですけど、そういうのってちょっと安直じゃない??っていう、そんな違和感を抱えていたんですよね。
もちろん、僕のマーケティングスキルが低々ピューだったという説もあります。かなり濃厚な説です。

MBA至善館でのリベラルアーツとの出会いでこんまりの凄さに気づいた

そんなときある日、大学院大学至善館という、MBAのビジネススクールに通い始めました。

至善館のMBAではリベラルアーツを叩き込まれたんです。
経営リーダーは社会がどういうふうになっているのか知らなきゃいけないぞっていうことで、宗教とか哲学とか、東洋と西洋思想、社会学もみっちり教えてもらいました。

卒業してから、こんまりさんのマーケティングの仕事を進めているうちに、ある日ふと気づいたのです。

「あれ?こんまりさんの片づけって、なんかすごいことしてるんじゃない?」

皆さん知ってますか?
こんまり®︎流片づけ法。ざっくり説明すると「ときめき」で何を残すか選んでいく方法です。
ミニマリストじゃなくてときめくモノを残して、理想の暮らしをつくっていこうよ!そのための片づけです。

でもこの片づけって、実はすごいことやってるなってことがある日わかったんですよ。
「そりゃあ〜世界中に広がるわ!」って。

正直言うとですね、僕もマーケティングディレクターという立場で、もちろんウェブとかデジタル広告とか作って、お客様インタビューもしてきました。
でも、もっともっと広く長いフレームワークで見てみると、こんまりさんの片づけって実はものすごいポテンシャルがあるなってことを発見したんですね。

この体験がきっかけで、
「人文学とかリベラルアーツを学んで、ビジネスと繋げるともっと面白くなるんじゃないか?」って思って、このラジオ番組を始めたきっかけになります。
さて、じゃあ何がそんなに面白いんですかっていう話に移ります。

新・ラグジュアリー戦略とこんまりの共通点

ここで一つ本を紹介します。
『新ラグジュアリー戦略』という安西さんが書かれた本です。

世の中のいわゆるラグジュアリーブランド、ちょっとお値段高めなブランド
実は既存のマーケティングとは違うフレームワークや構造で成り立っているんじゃないかっていうことを研究してくださってる本なんです。
面白いのですが長いので、ものすご〜く乱暴に要約すると、
現代のラグジュアリーってのは2つの特徴を持ってるそうです。

【現代のラグジュアリーブランドの2つの特徴】
①カウンターカルチャー(反骨精神・ロマン主義)を持つ
②クラフツマンシップを持っている(手仕事である)

『新・ラグジュアリー戦略』より筆者要約

1つめのカウンターカルチャーであると反骨精神みたいなものですね。
既存の常識をそのまま100%良しとしないという価値観です。
カウンターカルチャーを持っているのは、例えばココシャネルですよね。
女性でもズボン履くでしょうよっつってね、女性用パンツを作って売りましたね。女なんかスカート履いとけみたいな時代だったわけですよ当時は。
そこに「いや女だってパンツ履くわ!」って反骨するのが驚きと共感を生みました。


2つめの特徴はクラフトマンシップです。クラフトマンシップ、手仕事ということですね。
「人間の手で作られたものっていうのはごまかしが利かない本物である」いう価値観が根底にあります。手仕事が入っていれば入ってるほどそれはお金を払う価値がある「本物さ」が増すわけです。

さて、カウンターカルチャーと手仕事っていう2つの特徴をラグジュアリーブランドは持っていると。
ここでよくよくこんまりさんの片づけを見てみると、
実は2つのカウンターカルチャーを持っているわけです。

こんまり®︎メソッドがカウンターカルチャーである2つの特徴

こんまりさんの片づけは意外にロックンロールなんです。
じゃあそのカウンターカルチャー、いわゆる反骨精神とは一体何なのかっていう話に移ります。

特徴①片づけは大量消費社会へのカウンターカルチャー

大量消費社会と言われたわけですね今の現代は。
物をたくさん買えば、より豊かになれると。でもモノの片づけ方を知らないままどんどん物を買っちゃう時代でもあります。それで幸せなのかというね。

ただ、こういう状況になったのもいろいろな社会的背景があります。
1つには「モノを自由に処分=所有できる」って実は比較的最近の考え方だそうです。
例えば日本だと、1970年代?60年代かな?子供部屋っていうのができたらしい。
子供部屋ができる前は、おうちのものはイエのものっていう感じで、自分だけのものってあんまりなかったそうです。タンスとか着物とか家のものっていうのは、次世代に引き継いでいく。
「嫁入り道具」って言葉があるぐらい、後世に引き継くことが前提とされていたので「自分の一存で勝手に処分してはならん」と。「先祖代々の土地を私が確定処分するわけにはいかん」とか言ってね。ほんまかいな〜っていう。まあでもそういう意識がありますよね。

これ西洋はまたちょっと違った感じで、個人の自由な所有権というのがなかった。
基本的に、城壁に囲まれた町のものっていうのは王様のものであると。
王様の所有物であるので、全部王様に帰属する。だから自分のものっていうよりかは、王様の所有物をちょっと分けていただいているみたいな感じですね。床とかおうちとか、そういったものは自分で勝手になんかしちゃいかんと。

こんなふうに、自分で自由に物を処分=所有権がないっていう状態で片づけが生まれるはずがないのです。
ここに、近代の自由資本主義が入ってきて、
「人は自由に物を作って自由に物を買って、自由に交換すりゃええやないか〜!」となりました。
「なんのためにそれをするのかっていうと、自由な自己実現ですわ!ルネッサ〜〜ンス」という自由な時代が出てくるわけですね。

その波が日本にも来て、子供部屋に物があふれました。
でも、親も「この部屋の物をどう処分するように指導したらいいのかわからん!!でも、とにかく整理しなさ〜い!!」という状況です。

そんな近代に、片づけが必然として生まれてきたわけです。

大量消費社会で、私たちは本当に自分の自由な感性でモノを選べているだろうか?

まあでも、別に処分の仕方もわからないままどんどん物を買ってもいいんですよ。
だって、自由に物を消費するっていうのは自由な自己実現のためにやってるわけですから。もし自己実現になるんだったら、どんどん買ったらいいんですよ。

ところが、そうはなってないことが問題なわけです。
自分の自由な感性で物を選べたらいいですけれども、やっぱり人間、わかりやすいものを買っちゃいますよね。
コスパ/タイパが良いとか。
デザインがかわいいとかおしゃれとか。
最近ではなくストーリーなんかって言われちゃってね、作者、社長はなかなかいいこと言ってるから買っちゃうみたいな。
そういった何かストーリーみたいなものがくっついてきちゃって、なんか本当に自分のために自由に選んでいるのかというのは、甚だ疑問なわけです。しかも、別に自分のためにならないようなものを、処分する方法もわからんときたもんだ。落語みたいですな。

そこで生まれたのが片づけ。
時代が求めている必然ですよね。
とにかく物をたくさん消費しましょうというメッセージは、会社がマーケティング戦略の中で言っているプロパガンダでもあります。

例えば、
「おうちご飯作るの面倒くさいですよねササっと美味しく!レトルト食品!!」
「時短で愛情たっぷり美味しい〜」

そういった食品会社のプロモーションがたくさんありましたけど、
「手作りで作るのがあたかも面倒くさい仕事かのように言うじゃんか」って、子どものときになんかすごい違和感を覚えたわけです。まあしかも買っちゃうっていうね。

でもそういったプロモーションや商品は、いつしか人々の感情の一部になって、人々の心や脳内に入り込み、本当に自分で選んだわけじゃないものもたくさん家の中に入ってきた。
それこそがブランディングの成功だぜ!と。
現代のそういった消費生活に対して異議を訴えるのが、片づけが持つ1つめのカウンターカルチャーになります。結構最近なんですよね。

特徴②日本文化がもつ独特な精神性

こんまり®︎メソッドの2つ目のカウンターカルチャーは、日本文化の精神性を引き継いでいるんじゃないかと。
つまり、「あらゆるモノの魂を認めて対話する」というスタンス。

これは長くなるので次回詳しく解説しますけれども、
例えば、おうちに入ったときに時にご挨拶をするとか。いつも守ってくださって、生活をさせてくださってありがとうございますと。これからお片付けさせていただきますねと。
モノを手放すときにもですね、感謝して手放すわけです。今までお役目を果たしてくれてありがとう、と。

こういったその所作というのは前提として、そのモノに人格があるような、日本で言うと八百万の神が宿っちゃってるよ!っていう精神性が見えてくるわけですね。

これは日本の独特な感性だと思います。
中国の儒教とかインドの仏教とか、イスラム教とかで、西洋のキリスト教などの宗教文明では、こういった考えは認められないんですね。

魂が存在するのは神と人間だけ。世界はそれだけですって感じなんです。
儒教とか仏教にいたっては、いや神すらもういないと、人間しかいないのだと。

モノの魂を認めてそれに感謝するというスピリチュアリティ、精神が今までなかったんですね。
だからこそ、世界にとってこんまりさんはある意味ショッキングな存在でした。新ラグジュアリー戦略の方に書いてあったカウンターカルチャーそのものです。

人文学とビジネスをつなげると、面白い。

2つめの日本文化の精神性の部分は、次回もうちょっと詳しく解説していきますが、いかがでしたか?
ここで、ラジオ番組を始めた趣旨に立ち返っていきましょう。
人文学とビジネスがどう繋がるのかをもっと楽しく学べたらいいなって思ったきっかけにはですね、こういったカウンターカルチャーを持つためには、今の自分たちの社会とか、自分たちの人間存在を知らなきゃいけないんじゃないのかあって、思い始めたのがきっかけです。
だって、何に対するカウンターカルチャーなのかがわからなきゃ、カウンターしようがないじゃないですか。

冒頭でも言ったように、大学院大学至善館のビジネススクールに通ったときにリベラルアーツを深く教えてもらって、
「自分たちがどこから来てどこへ行こうとしているのか?そして今どこに立っているのか」を初めて考えました。
こんまりさんの片づけがいかにユニークなのか、いかに今までと違うのかっていうのが、より大きな視点で見えるようになってきたんですね。
これは面白い!と思いました。
だって、人文学を学ぶっていうことはもしかしたら、世界で一番有名になったそのこんまりさんみたいな影響力の大きいサービスとかラグジュアリーブランドとかそういった活動を再現性を持って生み出す可能性を持ってるんじゃないか?と僕は面白く感じるわけです。

だからこそ、やっぱり自分たちがどこから来てどこへ行こうとしているのか、そして今どこに立っているのかっていうのを見つめるために、人文学とかリベラルアーツっていうものが、その支えになるんじゃないでしょうか。
でも、意外とこういう話をするとですねいや〜文化はお金にならないよとか、うちはそんな余裕ありませんからみたいな感じで、話せる場所が狭く限られています。
お金とか時間を理由にして、文化と仕事は関係ないみたいな文脈で語られたりするんですけど、いやいやいやいや。
むしろ自分たちのビジネスが、一体何の役に立ってるのか、社会的にどんな意味があるのかっていうのを見つめ直すときに、人文学っていうのはすごい実は役に立つんだよってことを、本当は言いたい。

ただですね、ラグジュアリーブランドを作りたいから、要するに超高単価な商品を作りたいから、そのために人文学を使っちゃろう!みたいなね。それはそれでどうなんだと思いますけどね。ちょっと浅はかなんじゃないか。
結果としてはもちろんあってもいいですよ、結果としては。
あのブルネロ・クチネリなんかちょっとしたシャツが僕のシャツの9倍の値段しますからね。さすがやな。結果としてはね、そういうふうになってもいいと思うんですよ。

でも、より高利益の商品を作ってより利益を儲けたいから、人文学を学ぼうっていうそういった目的設定としては、どうなんだろうか。もちろんも入り口もそれでいいですけど、学び始めたらね、面白がっていきたいわけですよ。

だって、楽しいじゃないですか!!
日本の文化の精神性ってそんな違いがあるんだとか、自分たちのルーツとか、今自分たちが立っている場所がよりくっきり見えてきたりとか、今まで見えてこなかったものが見えてきたりとか、
何かそういう好奇心をくすぐるものってすごく面白くないですか?

もちろん状況にはよりますけど、でも、生きていく上で大切なんじゃないかなと思いますので、無駄も楽しみつつ、僕のトークも非常に無駄が多いですね無駄が多いので聞くのねもう20分経っちゃった15分ぐらいで収めようとしたのに無駄が多いなということで今日はね、ここら辺にしておきたいと思います、はい。

最後にですね今日の参考文献を皆さんに紹介したいと思います。今言ったような、ラグジュアリー戦略を新しく捉え直すっていう新ラグジュアリー戦略っていう本ですね。これ安西さんの書かれている本です。非常に面白いですね。

2つ目ですね。『消費社会の神話と構造』という本です。これも面白いですよ。「全ては消費される記号にすぎない」とか、意味わかんないこと言ってるんですけれども、それ私達は物を消費してるんじゃなくてその物にまとわりついている情報とか、コミュニティとか、感情やイメージ、そういった記号を消費する時代に突入しているのだと。
ただ、本は読みづらいですね要約サイトがあったりするんで、ネットでも検索してみてください。

はい!。ということで、ついに始まってしまいました。

働く人の頭が晴れたらといいなという、このラジオ番組ですけどどうでしたでしょうか?
人文学とかビジネスが繋がっていくと、今まで見えてこなかったものが見えたりとか、自分のやっていることはこんな意味を持つんだなとか、自分の仕事に誇りを持てたり、なんだかちょっと悩んでいたことが晴れやかになったりですね、そんなふうになったらいいなと思います。

それでは第2回もお楽しみに!ありがとうございました。

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