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宮川香山眞葛ミュージアム(神奈川県横浜市・横浜駅)

江戸幕府が大政奉還してから間もない明治時代。西欧列強に追いつこうと考えていた明治政府が、その技術の高さをアピールするのに参加したフィラデルフィア万国博覧会の中で世界から絶賛された工芸品がある。その名は眞葛焼。高浮彫と呼ばれた技法によって焼き上げられた陶磁器を作ったのは宮川香山という一人の陶芸家によるもので、こちらの宮川香山眞葛ミュージアムは、その世界に絶賛された作品たちを惜しみなく紹介しているミュージアムである。

東京国立博物館や国立工芸館などに所蔵されている宮川香山の作品がこれだけ一堂に介しているのは圧巻。個人的なきっかけとしては横浜美術館で見た時からその高い工芸品としてのインパクトに目を奪われていたのだけれど、明治時代は明治工芸と呼ばれるほど高い技術力と芸術力が爆発した時代。宮川香山はその中心にいたといっても過言ではない人物で、陶器の本来ある形を変形させて一つの世界をそこに構築している。

ぬこ

展示室ではまず宮川香山の作品を5つの時代に分けて紹介している。まず横浜の太田村に窯を築いた当初、金彩を用いて上絵を描くという一般的な作品だった時代。しかし金を大量に使うことから本義ではなく程なくしてやめて次の技法を模索することになる。

最初からすでに技巧はすごい

それが次の代表的な作風である高浮彫の時代。身近な動物や植物を彫刻的な手法による装飾を行うことで一気に世界的な高い評価を受けることになる。

高浮き彫りの時代 立体的になります

高浮彫による作品に一種の到達点を覚えた宮川香山は、次に釉薬を研究することなる。派手な高浮彫から淡白な釉薬の技巧への試み。それが発展して次に釉下彩という技法を用いた作品で、下絵に透明な釉薬を上掛けして高温で焼くことで下絵の色を発色されるというもの。晩年の作品には滋味があふれて伝統的な風情が漂っている。

釉薬へ特化した技巧へと移る

また宮川香山は海外向けの陶磁器を製作する傍で国内向けには野々村仁清や尾形乾山といった江戸時代の名工の写しをしていたという。もともと父である眞葛長造が得意であった野々村仁清の写しを引き継ぐかたちで宮川香山も江戸時代の名工の精神を習得するがごとく作品を制作し、独自の解釈や魅力を加えていったという。ミュージアム内には和室もあり、そこでは特に尾形乾山の作品写しが多く収められている。

和室にある作品は懐かしい感じ

最後の展示室は圧巻の作品群が紹介されている。特に宮川香山の代表的な作風である高浮彫の作品が大量に展示され、そのどれもが個性的で二つとない魅力的な作りをしている。陶器の表面に装飾された動植物はいずれも精巧であり美しく、世界中から賞賛されたというのも納得するしかない。花瓶の中に雛鳥の巣があったり、その発想力に圧倒されること間違いない。割とコンパクトながら、いくらでもいられそうなミュージアムである。トイレは男女共用の個室トイレでウォシュレット式。

花瓶の中に雛鳥の巣


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