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東京国立博物館(東京都台東区・上野駅 国宝 東京国立博物館のすべて)4/5

・東京国立博物館 法隆寺宝物館
東京国立博物館の中でも比較的あたらしい部類に入るのが法隆寺宝物館。奈良・法隆寺から皇室に献納されて戦後になって国に移管された宝物を収蔵している博物館で、もともとは古くからあった建物だったのが全面的に改修されて1999年にリニューアルオープンしたもの。こちらの設計はニューヨーク近代美術館の新館や葛西臨海水族園、GINZA SIXなどを手がけた谷口吉生。その名前から想像できる通り東洋館を設計した谷口吉郎の子である。親子にわたって国立博物館の建築を手がけているというのが凄いもの。コンセプトとして「崇高な収蔵物に対する畏敬の念と、周辺の自然を十分に尊重する方針によって、今の東京には貴重な存在となってしまった静寂や、秩序や、品格のある環境を、この場所に実現することをめざした」とある。敷地内において隅に位置しており中央の喧騒から離れてとても静かな雰囲気の中で館の前に広がる水盤が非常に印象的な建物である。

ロビーの吹き抜けも開放的

ロビーは2階までの吹き抜けとなっていてとてもスタイリッシュな内装。日本古来の法隆寺の宝物を収蔵しているのに比例して近代的な建築になっているのが面白いところ。展示室は1階からで、まずは灌頂幡という仏教の儀式で使われる装飾品に特化した展示から始まる。天蓋(傘)から吊るされた板状の幡と呼ばれるパーツをそれぞれに紹介している。幡の造りは非常に精巧にできており、飛鳥時代の頃から工芸技術が秀でていたことがわかる。

こんなふうに吊るされる灌頂幡

メインとなる展示室は多くの仏像が等間隔で並んでいる荘厳な雰囲気。30センチほどのサイズの仏像が所狭しと紹介されており、重要文化財に指定されているものも多数。この展示室にある仏像だけでもどこかの国の国家予算に匹敵するんじゃないかというほどのクオリティ。

遠慮なき仏像の部屋

興味深いのはこれらの仏像が決してスタイルがよいわけではなく頭部が大きく、当時の人間のスタイルが窺い知れるところ。仏教にも詳しくないので、それぞれの仏像が仏教の中でどんな役割をもっている仏なのかはよくわからないけれど、その細かな造形に一つ一つうっとりとしてしまう。奥の部屋では伎楽で使用されたお面が多く展示されている。中国の神をイメージしたお面はユニークかつ少し怖い感じもあり、夜中には訪れたくない場所である。

あまり夜には遭遇したくない

階段を上った2階ではまず弓矢やら農具らしきものやらがお出迎え。全てが重要文化財というから驚き。2階のメインとなる展示室では瓶や鉢といった工芸品が中心の展示になっている。中でも注目なのは法隆寺の印と鵤寺の倉印。いずれも重要文化財である。その他、法隆寺で使用された如意や三鈷杵といった仏具の類が展示されている。奥の部屋では劣化した仏具(布など)の修復作業の紹介がメインとなっている。

ここにもしれっと国宝

法隆寺宝物館という名称から想像すると、これらの仏像や書物が全て法隆寺に保管されていたということなのだろうか。今でも法隆寺は独自で所蔵品の公開をしているあたり、奈良の法隆寺と東京の法隆寺宝物館と合わせれば相当の美術品が法隆寺に保管されていたことになる。どれだけ広いんだ法隆寺。こうなったら修学旅行を最後に行っていない奈良の法隆寺も訪れてみたいもの。トイレはウォシュレット式。

穴が空いていても重要文化財

東洋館の近くにはひっそりと校倉づくりの旧十輪院宝蔵が建っている。こちらも重要文化財に指定されている。元興寺の別院、十輪院にあった宝蔵は現在ではちょうど表慶館の真裏にあたりとても目立たない。こちらを発見するだけでも一苦労である。逆にそういったところが好みだったりするのだけれど。

外観のみのレアな重文

尚、旧十輪院宝蔵の近くには資料館が建っていて、こちらは研究者を中心にして資料を公開している施設になっている。一般の人も利用することは可能なものの基本的には平日のみの開館となっており、博物館の展示を見に週末に訪れた人はだいたい休館になっているというある意味でレアな建物でもある。こちらもトイレはウォシュレット式。

資料館 ひっそりと佇む知の宝庫

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