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松濤美術館(東京都渋谷区・神泉駅 奈良国立博物館コレクション)

久々にやってきた松濤美術館。こちらでは奈良国立博物館コレクション展が開催されている。国立の名に恥じない名品揃いで、もちろん他の美術館にこれまで作品を貸与したことはあっても、実は収蔵品を名品展という形で東京で開催したことは今までになく、今回が初めての展覧館となる。収蔵品のうち仏教に関する美術工芸品を一堂に紹介しているという貴重な展覧会だという。

順路は地下階から回って2階へと上がるという流れ。螺旋階段を降りてまずは地下階へ。展示室に入った手前のガラス展示は順番的には後半で、前半は展示室の奥にあるガラス展示からという、いつもとは違う展示方法に少し戸惑う。これはおそらく仏典などの書物が右から左へ読むことから来ているものだと推察。なので展示室の入室も出口側から入った方がよさそうだと思い、改めて廊下を回って出口側から入り直してから見学。

ホールから近い入口ではなくてぐるっと回った入口から

さすが国立である。え、いいの? っていうくらいに国宝や重要文化財が揃っている。最初の展示品から既に重要文化財である首懸駄種子曼荼羅厨子がお目見え。名前の通り首に懸けるものらしいのだけれどそれなりに大きいので首がもげそう。正面の鏡板が取り外した状態で厨子(仏壇)と分かれて展示されているので、普段は見られない厨子の内側にある曼荼羅まで見られるようになっている。正面の鏡板には梵字が施してありその中に舎利数粒と金属製の種子が取り付けてある。学芸員の方に尋ねてみると、舎利数粒といっても本物の骨ではなく、釈迦の骨に見立てた宝石だそう。ちなみに正面からは見づらいのだけれど、鏡板の裏側にも曼荼羅が描かれているので裏側まで回って見てみるのも一興。その隣には法華経曼荼羅如意輪観音菩薩坐像などがある。重要文化財。ちなみに国宝の辟邪絵も展示されている。

地下階の展示品のなかで特に度肝を抜かれたのが刺繍阿弥陀三尊来迎図刺繍種子地蔵菩薩像といった絵。絹に彩色するのはよくあることだとしても、黒く塗られているように見える部分はなんと毛髪による刺繍。たしかによく見ると毛みたいなもので編まれている。呪術みたいな方法で仏像を描くなんてゾクゾクするぜ中世。

螺旋階段で地下から2階へ

そんな気持ちを引きずりながら2階に上がれば薬師如来坐像がほっと癒してくれる。有難い。観音菩薩や毘沙門天の立像もまた微細な箇所まで作り込まれているのを見ているだけで心が落ち着く。こちらの階では工芸品が多く展示されている。国宝である牛皮華鬘や重要文化財の五鈷鈴だけでなく、懸仏や螺鈿で飾られた卓など、こういった美術品を作ろうとした人たちの信仰の思いとか、そういうのにグッときてしまう。もちろん仕事として請け負っているのもあるだろうけれど。
とにかく展示品の一つ一つにキャプションが丁寧について解説されているのでわかり易い。欠損箇所に何があったのか、といったことまで調べているのはさすがというか、すごい。気になった点も尋ねればしっかりと答えてくれるので、そのクオリティの高さに驚く。ちなみに階段の途中にある像は村田勝四郎『顔を膝に乗せて』そのままのタイトル。トイレは安定のウォシュレット式。

顔を膝に乗せている


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