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清川泰次記念ギャラリー(東京都世田谷区・成城学園駅)

抽象画を中心として活動していた清川泰次。彼の住居兼アトリエがあった世田谷の地に世田谷美術館の分館という形で展開されているのが清川泰次記念ギャラリー。成城学園駅から歩いて程ない住宅街の中にある利便性の良い美術館である。
今回は白と線の時代と称して、独自の境地を見出して独特な抽象画の表現が充実した時期の作品を中心とした企画展を開催している。

館内へは履き物を脱いで用意されているスリッパで入館する。もともと住居だった部分とアトリエだった部分とに分かれていて、入って左手がアトリエだった部分を生かした展示室となっている。アトリエだったことから天井は2階まで吹き抜けの高さになっている上、白を基調としておりとても明るく開放感のある造りになっている。清川泰次の作品自体が特に今回は白と線を生かした大判な作品なため、作品と展示室がこの上なく融合している。

白い壁と白い作品が占める空間 内部はもっと白い

清川泰次の抽象画の変遷ということである程度は編年で展示されている。最初は抽象画の中でも割とカラフルな色遣いをされていたのが、渡米を期にシンプルさも身につけている。1970年台の作品になると透き通るガラスのようなモチーフが描かれ、1980年台になるとさらにシンプルな線へと移り変わる。隣の展示室で展示されている1990年台の作品になると再び色をつけ始め、同じ抽象画の中でも作風の変遷があることがわかる。隣の展示室は書斎だったようで本棚などの名残がすこし感じられる。画家のミュージアムにありがちなイーゼルの他、自身の作風を生かした線を設えてデザインした陶器も展示されている。

作品の中では詩を添えている作品がある。「白といっても白であろうか/あるといってもあるのであろうか」「もうその上に何もいらない/一点の線も点も入れることはできない」といった言葉もまた余計な雑味がないシンプルになっていて、作風とかなり親和性が高い。

受付の右手、住居だった方のエリアは市民ギャラリーとして開放されている。個人的にはもっと清川泰次の作品を見たかったところではあるけれど、こうして地元の文化芸術の発展を願って開放されているのだろう。トイレは個室で洋式。

ギャラリー側の入口もかつての名残があるがこちらからは入れない


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