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田端文士村記念館(東京都北区・田端駅 芥川龍之介 愛とサヨナラの物語)

田端駅の北口からすぐの場所にある田端アスカタワーの1階には田端文士村記念館がある。この北区田端の界隈というのは大田区の大森・馬込文士村と同じように多くの作家や画家が住んでいた一帯で、田端文士村というのを形成していたという。今でも田端周辺のはその遺構が点在している。

もともとは小杉放庵や板谷波山といった画家・陶芸家が集っていた場所に芥川龍之介を中心とした文士が転入しはじめて大きな流れとなったという。田端文士村記念館ではそれら多くの人物を紹介している。区がやっているので開館時間は短いが無料で見られるというのは嬉しいところ。ただし写真撮影はできない。

折しも北区は所縁のある渋沢栄一を猛プッシュしており、渋沢栄一の特集もコラボレーションしながら田端文士村を盛り上げようとしている気焔が感じられる。残念ながら現在では遺構はほとんど残っておらず掲示板などをたどることがメインとなるけれど、学芸員の方による散策ツアーも日によって行っているという。

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常設展示室では芥川が田端で暮らした家の模型や、板谷波山の陶芸窯の円筒の一部などが展示されている。室生犀星や萩原朔太郎、佐多稲子といった後に大森・馬込文士村へ住むことになる面々が田端でも居を構えており、文士たちが住みやすい土地というのが所々にあるというのがわかる(東京では他にも新宿区の落合や杉並区の阿佐ヶ谷一帯などがあるそうだけれど、どちらも資料室などは残念ながら無かった)。芥川の後には菊池寛や直木三十五、堀辰雄や小林秀雄といった文豪や竹久夢二、田河水泡といった画家・漫画家も住んでいる。

今回の企画展はまさに芥川龍之介をメインとした「愛とサヨナラの物語」と題し、芥川と師匠である夏目漱石や、友人の小穴隆一(芥川の遺書にも子供に向けて「小穴隆一を父と思え」と遺されている)、妻となる文への書簡などがこれでもかというくらいに紹介されている。センチメンタルな芥川の内面が垣間見えてなかなか面白い。死んだ当人にとっては生前の恋文を晒されてたまったものではないが、有名税というやつでどうか勘弁してほしい。

ちなみに階段を上って2階には室生犀星の家の庭にあった苔が今も育てられて残されている。トイレは和式と洋式。


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