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松岡美術館(東京都港区・目黒駅)

松岡美術館では松岡コレクション展を行なっている。松岡地所の創立者が創設した美術館で、もともとコレクション収集をしたことをきっかけにして一般に公開するようになった。今回はその収蔵品展ということで、現代彫刻やインド彫刻に陶磁器、それと日本画を中心とした展示を開催している。

1階にある3つの展示室ではそれぞれ全く異なった分野の展示を行なっている。古代オリエント美術の部屋では常設展示としてエジプトの石像、棺といったものの他、特別展示として中国青銅器を展示している。饕餮文という神獣を設えたデザインの容器(鼎や爵などの名前がついている)が並んでいる。

鼎とか爵とか尊とか甗とか器の名称が複雑怪奇 

現代彫刻の部屋ではヘンリー・ムアもモッサリした像やエミリオ・グレコのセクシーな作品が並ぶ。現代彫刻はロビーでも展示されており、中でもブールデルの巨大なペネロープ像は美術館の顔でもある。ほかにもジャコメッティマンズーなども揃えている。

ロビーにはギリシャ彫刻も

古代東洋彫刻の部屋では仏像がずらっと並んでいて圧巻の一言。中国仏教彫刻に始まり、ガンダーラ彫刻、インド彫刻、クメール彫刻と立ち並ぶ。いずれも神仏を形取ったものであり馴染み深いデザインのものも多数ある。インドに関してはヒンドゥー教の神が多数を占める。シヴァ、ヴィシュヌ、パールヴァティー、ラクシュミー、クリシュナなど何となく名前は知っていても馴染みがないので、どんな神なのか知っていると面白みが増すかもしれない。

とにかく霊験あらたかである

2階にも展示室が3つある。今回の企画展で最も入れ替えがされているのが2階の展示室で、まず陶磁器の部屋では五色とされる、白、黒、青、黄、赤を基調にした陶磁器をそれぞれまとめている。中でも赤を基調とした火焔の瓶は目を見張る美しさ。今回は松岡コレクションの端緒となった2つの陶磁器のうち『青花龍唐草文天球瓶』が特別展示されている。

火焔の瓶が格好ええ

残りの2つの部屋は日本画の展示室として開放されている。こちらも前回からラインナップがガラリと変わっている。最初は中国に由来する言葉や人ということで橋本雅邦『龍虎図』『諸葛亮読書図』が目を引く。円山応挙『趙飛燕』も美しい。次は花鳥画としてド派手な田崎草雲『玉堂富貴』や滝和亭『海鶴図』、岡本秋暉『牡丹孔雀図』といったもの、対照的に可愛らしい郷倉千靭『宇津羅之親子図』あたりも印象に残る。

これは孔明の罠

最後の部屋には狩野探幽『絵師流書』といった手引き書の巻物、狩野常信『寿老人・竹鶴・松鹿』といった江戸期のものから真野満『鳴弦』といった昭和に至るまで幅広く紹介している。
トイレは安定のウォシュレット式。以前よりは増えてきたものの、やはりまだ見学者が少なく部屋を独占できることもしばしば。

花札に出てきそうな狩野常信の絵


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