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菊池寛実記念智美術館&VLCギャラリー(東京都港区・神谷町駅)

・菊池寛実記念智美術館(東京都港区・神谷町駅)
久々に訪れた菊池寛実記念智美術館では、反骨の陶芸と題して河本五郎の企画展を開催。美術館の敷地内には国の登録有形文化財に指定されている西洋館があり、本館の入り口には篠田桃紅の巨大な書画や、さらに地下階の展示室へ降りるための螺旋階段のフォルムも含め非常に美しいミュージアムである。

河本五郎は陶芸=目的を持った器、という既成概念を打ち破り、芸術品としての陶芸のあり方を模索した陶芸家の一人である。陶磁器の聖地である愛知県瀬戸市に生まれ、幼少期より窯業に携わってきた河本は、花器や茶碗、壺といった従来の使用用途の器も当然ありながら、その中で自己表現とは何かを問いかけ続けてきた。壁面装飾や筺も一見すると何のために作られたのかわからないような造形も多く、却ってそれが格好いい。

黒い鳥の器

その生涯の前半では土の表情や裂け目、ひずみなどを計算しながら素材を生かして造形化して行く陶器がメインで紹介される。通常は轆轤を使うことが多い当時の瀬戸では珍しく手びねりで作品を作り開発してきた。後半には作家として自立すると、瀬戸の染付磁器、さらにそのルーツとなる中国陶磁器への考察から独自の染付磁器に取り組んだ。

色絵龍紋花器

展示作品の中でも特に衝撃的だったのが俑と呼ばれる、死者の魂を鎮めるために作られている陶器。特に作家の三島由紀夫が割腹自殺を遂げた事件を元に、三島由紀夫へと捧げられた白磁俑は圧倒的な存在感を放っている。白装束をきた人型にも見える白い釉薬の造形物の中央部分から染められた赤は割腹の血のようでもあり、さらにそれが白い床へ日の丸の形で広がっている。

隣接する西洋館 いつか入りたいなあ

館内は基本的に撮影はできないが一部の階段したホールで撮影可能な作品もある。ざらついた土の質感を強調した陶器の「黒い鳥の器」や「灰釉鳥の器」、可塑性の高い瀬戸の磁器の性質を強調しつつ、中国の陶磁器の技法を採り入れた「色絵龍文花器」も印象的だが、やはり死者の魂がうごめくように見える「陶人俑群」が印象的。トイレはウォシュレット式。

死の匂いが漂う

・VLCギャラリー(東京都港区・虎ノ門ヒルズ駅)
虎ノ門ヒルズからすぐの激坂で知られる江戸見坂の途中にあるVLCギャラリーでは、鮮やかに光をとらえて写真に収めた作品で知られる写真家の田原桂一の写真展が開催されている。生前に使われていたカメラも残されている。モノクロームで切り取られた被写体は正体がつかめない。

VLCギャラリー

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