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横須賀美術館(神奈川県横須賀市・馬堀海岸駅/荒井良二展)

横須賀美術館では絵本作家である荒井良二の展覧会「new born いつもしらないところへたびするきぶんだった」が開催。公共交通機関で訪れるには近くの馬堀海岸駅からバスで訪れるのが妥当かもしれない。徒歩だと1時間ちかくかかる。訪れるのに苦労する場所ではあるものの、それだけの価値がある場所である。美術館は本館と谷内六郎館とに分かれており企画展が開催されているのは本館の方。海を一望できるシチュエーションにガラス張りの美術館は天気が良ければ最高のロケーションで、丸い窓が随所に設けられており採光も素晴らしい。

荒井良二は日本人として初めてリンドグレーン記念文学賞を受賞するなど絵本やイラストなど幅広い分野で活躍しているアーティストである。最初の展示室では彼の最初期の作品から紹介。「何冊作っても書いても描いてもいつも初めて絵本を作る人みたいな気分で緊張する」けれど「その緊張をエネルギーに変えればいい」という気持ちで「人に贈るギフトみたいにしよう」と作っているというメッセージが出迎える。最初期の作品である『みち』からはじまり、『あさになったのでまどをあけますよ』や『なんていいんだぼくのせかい』といった柔らかいタッチの作品が紹介される。

初期作品の『みち』ですでに完成している

とにかく絵本好きにはたまらない。一つ一つの原画が紹介されているので絵本を追うような気持ちで観ることができる。ここの展示で秀逸だったのはJBBY賞を受賞した『たいようオルガン』で、どうやったらこんなユニークな絵が描けるのか。とにかく面白くて可愛い絵の絵本が多く、タッチも作品ごとに異なっているのも器用さが窺える。中央ではこれらの作品の絵本を読むこともできる。

作品のルーツも窺える

隣の展示室2では部屋中に作品が展示。インスタレーションも多くあり、さながらサーカス小屋のような様相を呈している。展示室1に比べると少し怖い風味の作品も並んでいる。面白かったのは名詞に「る」をつけて動詞にするという絵。「声る」「月る」「なみだる」など、その絵と共にどうしたらその発想になるのか。荒井良二の仕事机の様子も紹介されており、とにかく広い仕事の幅に感嘆する。会場には親子連れも多く、世代を超えて楽しめる展示となっている。

もう
とにかく
いろいろ
縁日かサーカスか

階段を地下へと降りると常設展となっており、所蔵品は主に近現代の日本画家をメインとした展示となっている。吹き抜けになっている回廊を作品を眺めながら進むのは非常に心地よく、歩いているだけで多幸感を得られる。特別展として美術館の前庭で屋外彫刻を残している若林奮の、関連ドローイングや小さな彫刻作品を展示している。

到底いさむとは読めない ふん

美術館の螺旋階段を上ると屋上広場まで続いており、こちらは恋人の聖地として有名だという。確かにそう思わせてもおかしくないロケーションの素晴らしい美術館。隣接する谷内六郎館では荒井良二が選んだ谷内六郎作品を紹介している。雑誌「週刊新潮」の表紙絵を書いていた谷内六郎のどこか懐かしい絵に荒井良二からのコメントも良い。行くまでは遠いものの「行ってよかった」と思わせる美術館。トイレはウォシュレット式。

螺旋階段の先に屋上広場
谷内六郎館も素晴らしい



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