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#1 カフカ短編『ボイラーマン(火夫)』

ここ最近、フランツ・カフカの短編を読んでいる。
現在読んでいる短編集は光文社のこちら。

カフカの長編はまだ『城』しか読んだことないが、短編もそれほどは読んではいない。なので、しばらくカフカの短編をいくつか読んで行こうと思う。

目次を作って、きっちり書くやり方はあまり得意ではないけれど、今日は使ってみようかな。


1. はじめに

今回の『ボイラーマン』は、未完の長編『失踪者』の第一章にあたる。
カフカ的には、『失踪者』の中の、この第一章だけ合格点をつけたらしい。
『失踪者』は未読であるので、今回読んだ『ボイラーマン』は単独の作品として読んだ。

‥‥‥よく意味が分からなかった。汗。

結局、ここに出て来るボイラーマンは何だったんだろう。長編の第一章として読めば分かる気がするけど、独立した話しとなるとハテナになる。
ボイラーマンの彼が結局どうなるのか分からないままに、突然置いてけぼりにされ、切られてしまった感覚…。

2. ストーリー

主人公のカールは16歳のドイツ人。女中のヨハナに無理矢理誘惑され、彼女との間に子どもができてしまったことにより、両親にアメリカへ送られることになった。
ということで、カールはアメリカ行きの船の中にいる。

両親に――事実をありのまま伝えるために、こんな言葉を使いましょう――ポイと捨てられちゃったのです。怒った猫がドアから放り出されるみたいに。

本文より

普通に考えれば、両親はなんで女中を残し息子を追い出すのかよく分からないし、突然家を追い出され、納得できないとも思える状況なわけだけど、カール本人は楽しんでいるようにも見える。自由の女神を見てその大きさに感動していたり。
…こういうのを「カフカ的」といっていいのだろうか。

ちなみに、カフカの描く自由の女神は右手に「松明」ではなくて「剣」を持っているようだ。

ニューヨークに到着し、下船するって時に忘れ物に気づいて大事なトランクをその場に残したまま再び船の中へ入っていく。
しかし広い船の中で迷ってしまい、船内で働くボイラーマンと会うことになる。元々機械に興味があったというカールはやたら感動する。
ボイラーマンと仲良くなり、トランクのことは忘れて船内のボイラー室で眠りかけたりする。

16歳とはいえ、幼い子どものようなカール…。

どうやらボイラーマンは業務上不当に扱われているようで、強気な感じで本部へうったえに行くとのことでカールも同行。協力して共にうったえるが、そんな中に偶然にもカールの叔父さんがいたという。しかも叔父さんは、お偉い上院議員で、これまでカールに起きた身の上話を全て知っていたのだ。
どうやら、叔父さんはカールを探し、連れ出す目的でこの船に乗船していたらしい。理由はこういうこと。

つまり、女中がカールのことを思って、カールの叔父にカールの到着を知らせてきたというわけだ。

本文より

カールと上院議員が親戚関係だと判明後、ボイラーマンは急に人が変わったようだった。不当な扱いなどなかったかのように。さらに、カールに向けて「おめでとう」なんて祝福の言葉を言ったりとか。
身分の差を感じたのだろうか。

結局、叔父さんはカールを連れ出し、カールもそれに従い船を出てボートに乗り換えることになる。
もちろんボイラーマンは置いてけぼりに。

3. 最後に

こうして書いてみて思ったのだが、カールは常に受け身の少年に思える。

家にいたときは女中になされるがままにされ、船内ではボイラーマンが頼れる存在となり、トランクも忘れ物のことも忘れて眠ってしまったりするし、これからは叔父さんの庇護によって旅立つことになる。

カフカ作品にはこうした受け身の男が多い気がする。女が強いとも言えそうだけれど。

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