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鹿と暮らす

奈良の良さの中で「鹿との暮らし」があります。現在奈良公園と呼ばれているところ、それらに奈良の鹿は生息しており、山に住んでいる鹿とは分けられています。

奈良公園とは、奈良の主要駅「近鉄奈良駅」から広がる広大な公園で、興福寺、東大寺、春日大社といった寺社仏閣の敷地を含み、若草山、花山といった山間部も含まれています。

これらは「世界遺産」にも登録されています。奈良時代、シルクロードを使って運ばれてきた技術を駆使した建物が残り、仏教や都市設計という考え方が今に生きていて、そこで育まれた信仰の受け皿である場所が残っている。

なにかひとつ、単体でなくまち全体として登録されたのが「古都奈良の文化財」という世界遺産です。この中には春日大社も入っているので、春日大社の神様のお使いという地位についている奈良の鹿も、この世界遺産の中を彩るひとるであると言っていいと思います。

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奈良の鹿は野生動物ですが、奈良の人々の暮らしと共にありました。鹿の生態系をおびやかさない程度に開発が留められ、現在も捕獲されたりむやみに傷つけられることはありません。

少し前「鹿男あおによし」という小説がドラマ化され、奈良公園でロケがありました。そこに登場した鹿は、奈良公園の鹿でなく「動物タレント」事務所からやってきた鹿だったそうです。その鹿に首輪をつけて連れて歩いていると、見とがめた近隣住民に注意を受けたとか。奈良の鹿に首輪をつけて歩くなんてありえないわけで、そう誤解したかたが声を上げるというのは(住民にとっては)よくわかる話です。

鹿はかわいいし、鹿せんべいなど与えると手から食べてくれるし、大きな瞳と形いい耳と、フォルムからも完璧なわけです。

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鹿と暮らしていると、それらは当たり前になってきて可愛いのは十分認識しつつ、気に留めない日常になります。道を歩いていてふつうに鹿とすれちがったりするわけです。県庁や裁判所といった公的機関に鹿がたむろしていて驚く人がいたら県外の人だったりします。

奈良に住んでいると、地下からはたいてい遺跡が出てくるので開発はあまり進まないし、道路を走っていると鹿が飛び出してくる危険があるので要注意だし、鹿に入ってほしくないところは、気をつけて扉を施錠するなど気苦労も多かったりします。

そういう暮らしー。面倒な暮らし。開発が進まない暮らし。人間が気をつかう暮らし。そういう暮らしが普通に横たわっていて、世界遺産とかあるけど、だから何?というくらい日常に浸透している暮らし。

大切な鹿が、真横を通っていても気にならないこの暮らしがとても素敵だと思っています。


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