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ナポリタカオの小ネタ劇場

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ナポリタカオの小ネタオリジナル作品をまとめたマガジンです。登場人物のN氏とは著者・ナポリタカオ本人のことです。
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2021年9月の記事一覧

あとからジワジワ思い出す予感

※この話は前回から続いています。 泣きべそをかくオヤジN氏はT氏からの留守電を聞いてみた。 「まいちゃったよ……折り返し連絡もらえるかなあ?」 さっそくT氏の携帯に電話をかけてみる。 「どうしたんですか?」 「あのさぁ……今、オレ、警察から出てきたとこなんだよぉ」 「えっ!?」 すでに泣きべそをかいているオヤジ。 「実はさあ、あの公園から車出したとき、気づかなかったんだけど、オレの車も後ろをぶつけられてたんだよ」 「車の後ろ!?」 ふたりとも、前のほうから座席に

あとからジワジワくる悲劇

渋滞、渋滞の往路広告代理店社長、T氏に起きたある悲劇である。 朝、クライアントの本拠地に車で向かったT氏は大渋滞に巻き込まれた。 その日はコピーライターN氏との同行だった。 「もう、どうしたんすかぁ。こんなに遅れて」 待ち合わせにも遅れて、朝からN氏にブツブツ文句を言われるT氏。 おまけに、そこから先の道も大渋滞であった。 「こんな渋滞はめったにないのに、まったく今日に限ってどういうわけなんだよ……」 T氏のイライラは募るが、ひとまず、クライアントに到着の遅れを詫びて了承し

名演奏を成し遂げた音楽家

※この話は前回から続いています。 教祖様の登場理容室のオヤジの話は続く。 「音楽家の人は教祖様がいるって部屋の前に来たら、お付きの人からこんなことを言われたんだとさ。 『これから教祖様があなた(音楽家)に、ありがたいエネルギーを送ってくださいます。つきましては、それを受ける準備として、その場に正坐してひれ伏してください』ってね」 まあ、ここまできたら音楽家の人だって、演奏しなきゃならないし、しょうがないよ。言われた通りにするわな。そこへ教祖様の登場だ。 しばらくして

音楽家が演奏を捧げた相手

モヒカンを熱く語る理容室のオヤジ「客の頭へダメ出しする理容室」で書いた理容室のオヤジに聞いた話。 この日もオヤジのトークはノリノリで、N氏は眠らせてもらえなかった。 「この前ね、ソフトモヒカンにしてくれってお客さんがいてね。話してるうちに怒って帰っちゃった」 「どうしたんです?」 「あのね、ソフトモヒカンっていったって、モヒカンにもいろんな種類があるんですよ」 「ああ」 この話、何回聞いたっけ?と思いながら、付き合うことにする。 「だいたいね、外国でそんな言いかたすると

アウトレイジが激震するスーパーで10:15

※この話は前回から続いています。 孤軍奮闘の女性、ボサッとする仲間たち坊主はすばやくうどん売り場に引き返し、棚の前から大声で叫ぶ。 「おい!ここだ!ここからとったんじゃねえか!150円じゃねぇだろ?!」 レジの女性は仕事に慣れているようだが、こんなことは珍しいのだろう。両方の掌を自分の胸に当てて、動悸をなだめているようだ。 なんとかしなければ。N氏はまわりを見た。 向こう側のレジにいるもうひとりの女性は、並んだ客とともに目を見開いてこちらを見ている。知らせてやれ!こ

アウトレイジが日曜のスーパーで10:00

日曜の朝1番でスーパーに並んだ人達 コロナ騒ぎが起きるずっと前、N氏は世田谷区に住んでいた。 真冬の日曜の朝、冷蔵庫におかずが入っていないのに気づいたN氏は、近所のスーパーの10時開店に並んでしまった。 並ぶのは大嫌いなのに、なんだか納豆が無性に食べたくなったのだ。 日曜の朝1番でスーパーに並んだのは6組。小学生くらいの子連れの主婦以外は、50代以降の人が多いようだ。 朝からそんなにソワソワしなくてもいいんじゃないかと思うほど、店内ばかり気にしていて、みんな余裕のない