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新地政学

半導体の地政学を先に記したが、そもそもの国家間の地政学の状況や歴史に一度戻ってみようかと思う。

今回は主に2つの点に着目して、感想を記したいと思う。

1点目はそもそも地政学とは?
地形における主な特徴について


2点目は各国、地域の地政学状の特徴

上記2点について記す
①地政学とはそもそもその国家における立ち回りの戦略について考える学問と言える

例えばA国は周辺を諸外国に囲まれているとする。
そのような状況で例えば同盟を結ぶことで、他国との衝突を回避することも一つの戦略と言える。

ランドパワー(大陸国家) とは国家が支配下に置く陸地を整備、活用する潜在的、顕在的な能力の総称である。
簡単に言えば交易などを陸上交通に頼っている国のことである。
ランドパワーの国の特徴はより広大な土地や海洋を求めて勢力を拡大しようとする。

またそれに対して国境の多くが海に面している海洋国家をシーパワーと呼ぶ。
シーパワーの国の特徴は、海を通じて世界各国に交易等でアクセスが容易な点。
また他国からの侵入に対しての、海洋という存在が防波堤となりうる点である。

15世紀以降シーパワー優勢の状況は続いたが、19世紀後半変化が生じた。
ランドパワー諸国で鉄道の登場により、輸送力の向上。
20世に初頭には自動車と航空機により輸送手段が増えた。

実際ドイツはベルリン、イスタンブル、バクダードを鉄道で結ぶ3B政策を打ち出し、勢力拡大を図った。

○ハートランドという言葉は、イギリスのマッキンダーが生み出した。
ランドパワーの勢力が基盤としており、シーパワーが到達できないユーラシア大陸の内陸部をハートランドと呼んだのだ。

○シーレーンとは、その国の安全や経済活動を維持する上で重要な海上交通路である。
例えば日本におけるホルムズ海峡からマラッカ海峡の地域である。
石油の購入を八割輸入に頼っている日本はここを抑えられると、経済的に厳しくなる。

○シーレーンの中でも極めて大切なポイントをチョークポイントと呼ぶ。

バランスオブパワーとは国際秩序の維持モデルである。
強力な力を保有するa国に対して、1対1では敵わないが、同盟などを結ぶことにより、力のバランスをa国と均衡させることで衝突を防ぐことを意味する。国家さらに国際社会の平和と安定に寄与する国際政治上の原理である。

cf)ヨーロッパにおける勢力均衡
19世紀フランスでナポレオンの登場により、周辺国へ恐怖が伝達された。
そこでイギリスはオーストリアやロシアと対仏大同盟を結成した。
また20世紀のドイツの勢力拡大志向が膨張すると、イギリスはフランスやロシアに働きかけてドイツに対抗した。
イギリスはシーパワーの国であり、島国のために直接侵略の恐れが他国より低いためにこの立場に立つことができた。

②諸外国と地政学


日本

日本の特徴として、四方を海に囲まれたシーパワーの国である。
この海に囲まれた島国の為に、日本に攻め込むには大量の軍船などを用意する必要があった。
莫大なコストもかかるために、攻めるには不利な環境であった。
そのため優先的に攻め入る土地に選定されることもなく、他国が先に攻められてる際に情報を収集することで国を固め、列強の脅威に備えることができた。

また中国との距離感も近すぎない為に、支配体制に組み込まれず、遠すぎないが為に中国の進んだ文化や技術を組み入れながら独自の文化を発展させることができた。

また19世紀後半は、東アジアでランドパワーのロシアが海を求め南下政策を実施。
東アジアの地図で朝鮮と日本の北部九州は約200キロの為に日本にとって朝鮮をロシアが侵攻することは脅威であった。
そこで日本もロシアよりも先に影響化にと考え日清戦争が勃発する。
しかしロシアがドイツとフランスを引き入れ三国干渉をすることで、遼東半島を手放すことになった。
ロシアとの対決に備え、同じシーパワーの国のイギリスと同盟を結ぶ。
日露戦争は実質的にシーパワーvsランドパワーの対決であったと言える。

戦後の日本は東西冷戦の西側陣営に組み込まれた。その中でアメリカが日本に求めたのは、社会主義国の拡大を防ぐ防波堤であった。

中国

東アジアの地形を育んだランドパワーの大国
東アジアの面積八割
人口九割を占めている。

現在の中国は一帯一路の政策を念頭に掲げている。
一帯とは中国からアジア、ヨーロッパに至るルート。
一路とは海のルートである。

この一帯一路に該当する国々にAIIB(アジアインフラ投資銀行)を通じて投資することでインフラを整備して経済の拡大を図るというものだ。
一帯一路政策の目的は新たな本国の製品の輸出先の発見の開拓や、陸や海からも影響力の拡大を発信するという思惑がある。
またこの政策で支援を受ける国は発展途上国や東欧など経済が低迷している国も多い。
これらの国は近代化を図る為に莫大な資金が必要な為だ。
中国は内政不干渉の立場に立っている為、諸外国から援助を受ける際の条件よりも好都合なのだ。

ただスリランカなどは融資を受けハンバントタ港を建設したが、債務の返済が困難となり99年間に渡り港の運営権を中国に付与することとなった。
こうした中国の手法を債務の罠と呼んでいる。
他にもパキスタンやアラブなど、中国のシーレーンの要衝となる港を押さえている。
こうした動きに各国は警戒心も抱き始めている。

台湾問題
近年中国は大西洋西部に第一列島線と第二列島線という2つの防衛戦を設定。
この第一列島線の内側に台湾が位置している。
アメリカや日本からすると、台湾を取り込まれることは、中国の勢力の拡大を防ぐ防波堤の一角を崩されることを意味する。
今後も台湾問題に対しては見逃せない立場にいる


アメリカ

アメリカは巨大な島とされている。
北米大陸の中にあるのに、島国と説明するのは少し疑問を感じる方もいると思う。
北米大陸を構成する国がカナダ、アメリカ、メキシコであり、それぞれを比較するとアメリカだけが経済、軍事面で突出している為、カナダやメキシコが軍事侵攻してくることは考えづらいためである。

アメリカは周辺を海に面しており、他国の侵入を受けにくい立場にある。
また太平洋、大西洋のどちらにも面している為、ヨーロッパ、アジアの両方に影響を放てる立場なのである。

近年のアメリカは所得の格差などが分断を加速させている。
アメリカの政治を説明すると、①共和党②民主党が挙げられる。

①の共和党は近年 男性、白人、中高年、非大卒
②の民主党は近年 女性、非白人、若者、大卒

上記の特徴が鮮明となっている。
民主党はクリントン時代以降ウォール街重視に変質。もともとは民主党はブルーカラーと呼ばれる人々が支持を寄せていたがクリントン以降変質したこともあり、ブルーカラーの声を代弁してくれる存在として登場したのが共和党のトランプだったと言える。

対中関係では、新冷戦に突入とも言われている。
中国の不公正貿易を理由に経済制裁を開始。
中国による知的財産権の侵害、強引な海洋進出、人権の抑圧など様々な分野で批判を展開するようになった。
この背景には中国が今後も経済成長と軍事拡張が続けばアメリカの覇権国としての座が奪われかねないためである。

○ロシア

ロシアの現在といえば、ロシアはウクライナのクリミアを実効支配している。
その理由としては黒海をNATOの内海にすることを避けたいからだ。

ソ連時代のロシアにとってウクライナは、海への出口である黒海に面しており、クリミア半島には軍港セヴァストーポリーもあるため、地政学的にも重要な場所であった。
またウクライナもソ連最大の穀倉地帯で、鉄鉱石なども豊富な国であった。
ソ連の解体により、ウクライナが独立。
その後ロシアとなったが、セヴァストーポリの基地は失いたくなかった為、ウクライナに借地料を払い港を使用してきた。
2014年にウクライナ内でNATOやEUへの加盟を主張する親西欧派が誕生。
するとロシア派が多かったクリミアの住民が住民投票を経てウクライナから独立。
ロシアへのクリミアの編入を決定。

このように国にはその土地の形質からの特徴が存在する。
その形質を活かして戦略を立案する国
また土地の形質上自国には持ってない特徴を得る為に、他国侵攻することにより自国の拡大を謀ってきた国
また隣国のパワーに常に警戒してきた歴史を持つ国

このように各国位置している場所が違う為に、行動戦略もまた千差万別なのである。
ある時にはa国の同盟国となり、ある時にはa国と敵対関係になる。
こういった出来事は歴史上当然と起こりうる。

各国の活動に注視して、なぜその国はその行動を行うのか?
この疑問を持ち世界の国のニュースを地政学の視点から紐解いていきたいと思う。

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