全ての情報発信には意図がある

「なんでnote」を急に書き始めたのかと突っ込まれたので、今日はその理由について書きたい。「お前がnoteを書く動機なんて知りたくもない」「自分語りキモイよオッサン」と指摘されそうだが、これがライター論と無関係ではないのだ。

僕は別に金と効率性にまみれたライター業界に一石を投じたいわけではない。確かに、ライター未経験者が業界に金目的で新規参入するのは素手でフロイド・メイウェザー・ジュニアに殴りかかるくらい危険だ。それなのに「ライターになろうよ」と煽る人が多すぎるのは問題だとは思うが、僕の知らない誰かがメイウェザーにタコ殴りにされようが、それは僕の人生ではない。
 
また、最近の「誰でもライターになれます!」論とは逆張りの主張で、「ライターになんてなろうと思うな!馬鹿野郎」と呼びかけ、共感を集め、実はライター講座を開く野心があるわけでもない。そんな気があるならば、とっくにやっている。まともにやろうとすると大変労力がかかる。そんなに働き者でもないし、手間をかけずにインチキ講座をやる気はさらにない。

答えは簡単だ。個人事業主とはいえ、仕事に対する考え方を示す必要があると思っているからだ。
ライターはよく実績を掲示する。中には収入を明かす人までいる。でも、本当に示すべきなのは、仕事に対するスタンスなのではないだろうか。
企業が経営理念を語るように、フリーのライターが長く生きるには何を考えているかを開示する必要があるのではないだろうか。過去の実績と売上高しか示さない企業など誰が信用するのだろうか。

経営理念と勢いで書いたがそんなに大げさなモノではない。ざっくりした考え方だ。何をするのか、何でするのか、どんな姿勢で臨んでいるのか。それは何故なのか。
 
これに則れば、僕の場合は、「スケジュールが空いていたら受けます。それは基本的にライターは何でも屋と思っているからです。無理難題に応えますし、条件含めて文句も面倒くさいことは言いません。ただ、当初の約束を反故にされたり、面倒くさいこといわれたりしたら途中でもやめます」となる。
 
こう書くと身もふたもなく、嫌な奴と思われかねない。誤解を招くので、noteでそれなりの文字数を使って書こうと思ったのだ。

書き手がそもそも情報発信をするかどうかについては意見が分かれるだろう。

僕がライター業を始めたのは、もともとは副業だった。記者の傍ら書評を商業誌で書いていた。つぶれそうな新聞社というのは総じて副業が暗黙の了解になっているが、声を大にしていう雰囲気でも当然ない。
だから、自分の名前で商業誌に書こうが自著を出そうが、露出は最低限に抑えていたし、それをてこに営業もしなかった(といっても、新聞や雑誌のインタビューやラジオに出たりしていたけれどw)。
 
で、そのまま独立した。プランはなかった。何も考えていなかった。むしろ、1年、何も考えず、営業もせずに回るかを試したかった。前にも書いたが、スケジュールが空いていれば、原則、仕事は受けた。条件交渉はしなかった。あまり働く意欲もなかったが、それでも、幸運なことに生活は十分回った。

で、二年目に入った今年、自分のスタンスをとりあえず開示してみようと思った。それによって何が変わるかはわからない。だが、個人事業主は会社員と違って、黙っていては誰かが環境を変えてくれない。自ら意識的に環境を変える必要がある。その一環でnoteを書いてみようと思ったのだ。

そう聞くと僕の書いている文章の受け止め方も変わるかもしれない。でも、当たり前の話である。

全ての情報発信には意図があるのだ。

「そりゃそうでしょ」と思われただろうが本当にわかっているだろうか。書く際にはほぼ誰もがこれを理解しているが、情報の受け手になると人は意外に忘れがちだ。

例えば、「あなたも1年後には億り人になれます。気になる人はここをクリック」といわれると誰もが怪しむ。絶対にカモにされるぞと警戒するはずだ。一方、「あなたも半年で食えるライターになれます。気になる人はここをクリック」といわれると、盲目的に信じる人が少なくない。常に、この書き手はなんでこんなことをいうのかと考えた方がいい。

僕が社会人になったばかりのころ、大手新聞社の人に記者クラブの忘年会で「栗下君、全ての記事はタイミングだよ。わかってる?」と説教されたことがある。おまえ、これまで話したこともなかったろ、うぜーオッサンだなと思ったが、その通りなのである。ライターになろう、続けようという人はなぜこの人はこのタイミングでこういうことを書くのだろうかと意識を巡らすとよいかもしれない。見える景色が少しは変わるはずだ。オッサンをうざがりながら、オッサンになったライターからのささやかな助言である。

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