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靴がとれない! 保育園の垣根を超えた出来事

秋の中頃のこと。

1歳児のあっくんとがんちゃんとで、せせらぎ(浅い水辺と少しの岩がある見通しのよいところ)で過ごしていました。二人とも、まだ言葉がはっきりとは出てこず、出てきても2語文までいくかいかないかという子です。
他の1歳の子達は、50mくらい離れたところで過ごしています。

あっくんは、せせらぎの向こう側(幅は約50cmくらい)に回り込んで、そこから僕のいる側に戻ってこれなくなってしまいました。せせらぎの中を入ってこれないし、飛び石も難しいし、回り込むという考えにも及ばないようです。

あっくん「さんたあっこーあっこー!」


気持ちには寄り添いつつ行動に寄り添わず、
少し見てみることにしました。

さんた「困ったね、戻ってこれないもんね。どうしよっか・・・」


一方、がんちゃんは。


せせらぎの中に、植木鉢の受け皿が(なぜか)浮かんでいるのを発見。
しかし、せせらぎの中に入らないと届かない位置にあります。

がんちゃん「あれ。あれ。」
といって僕の手を引きます。とって、とって、という意味です。

さんた「届かないね~。どうしようね」
と言っていると、がんちゃん自分で考え出しました。

まずは、すこーしだけせせらぎに入ってみる。
次は、もう少し。しっかりと一歩入ってみる。
よし、入れた。もう一歩いける!

とやって、少しずつ中に入り、
靴とズボンの裾は濡れながらも
目的の皿を手にすることができました。

ここからがんちゃんは、そっとではあるけれど
躊躇なくせせらぎを行ったり来たりしはじめました。


さて。


そんながんちゃんを見ていてか、
対岸に渡れなかったあっくんも、なんと自らせせらぎに一歩踏み出したのです!

これは僕にとっては衝撃でした。

なぜかというと、あっくんは夏でもあまりせせらぎの水であそんだことはないという記憶があり、すすんで水に突っ込んでいく人でもなかったからです。

そんなあっくんが、自らの意志でせせらぎに入った!
そうか、これで渡れるな~


と、思っていると。


どうやらあっくんは、こちら側へ渡るのが目的ではなくて、
がんちゃんがさわっていたお皿を手に取りたかったようです。

それでも、あっくんが自ら入ったのには感動でした。
がんちゃんの姿を見て、刺激を受けたのかな。


__


せせらぎに入り、お皿に触れられたあっくん。
ところが次なる問題が発生しました。

このせせらぎ、地面がどろでぬかるんでおり、
動きがゆっくりなあっくんの足はどんどん埋まっていったのです。

あっくん、ついに足が抜けなくなっていることに気がつきました。

「あっこーーーー!」

どうやらこれは、自力では難しい感じ。
ちょっとだけ、僕の手をつかめるように手を差し伸べてみました。

手を掴んで、脱出成功!!


と、思いきや!?


あっくんの足を見ると、片足の靴がない!!

さんた「あー、靴がない!」←先回りで言ってしまった。
あっくん、泣き始めました。


さんた「困ったね~・・・
    ん、足が冷たくて困ってる?
    ・・・足が痛くて困ってる?
    ・・・靴がとれなくて困ってる?」

どうやら、靴が取れないことが悲しい様子。

さんた「そうだね、靴取れないね。困ったね・・・
    どうしようね・・・」
あっくん「あっこーーーあっこーーー」

しばしその場でギュッとしていました。


異年齢で保育していると(群れ)、
小さい子が困って泣いていたりすると、
年上の子や同世代の子達が「どうしたの?」と駆けつけてきてくれる。
そんなことがよくあるのですが、

今回は横割りです。1歳児しかいません。
しかも周りにはほとんど誰もいない。

ここですぐに僕が靴をとってあげるのは簡単。
でも、それでいいんだろうか。
「靴が埋まれば、大人がとってくれる」
そう思ったりするかもしれない。
それで終わってしまったりするかもしれない。


どうしようかな・・・


悩みながら、「困ったね・・・」と
あっくんと話していました。


すると・・・


「どうしたの?」

他の保育園の、どうやら年長さんくらいの男の子が2、3人近づいてきました。

さんた「靴が抜けなくなって、困ってるんだ。ここにあるんだけど・・・」
「ふ~~ん」


会話のあと、男の子達は離れていきました。
さすがにそだよなぁ~~~どうしよう~~~


と、思っていると!?


「これで取れるかな?」

といって、さっき話しかけてくれた男の子が長い木の枝を持って
再びやってきたのです!

「おぉ、どうだろう・・・」


トライ!
もうちょい!
とれたーーーー浮いてきたーーーー!!


さんた「うわ~とれたね~~~ありがとーーー!」
(と、ここでも気持ち先回りしてしまった)
「どういたしまして!」

せっかくなので名前を伺って、
さんた「○○くんかぁ、ありがとうー!
    あっくん○○くん取ってくれたねー!」
あっくんは複雑そうな表情。

そして、一緒にいた別の男の子も名前を名乗ってくれました。


ん、ということは。

実際動いてくれた男の子と、一緒にいた男の子。
名前を名乗ってくれたってことは、
この子たちも、困ってるあっくんに気持ちを送ってくれてたのだろうかー!?


僕にとってはとても大きな出来事でした。


困ってて、助けてくれる子。
普段から一緒に過ごしている仲間ならあるだろうと思うけど、

まさかまったく別の園の子が助けてくれるとは!

この子たちも遊んでたのに、小さい子が”困ってる”ことに気づいて、
来てくれるものなんだーーー!!

子どもたちは。いやいや人は本来、
困ってる人が気になって、動きたくなるものなのかもーー!!


大きな気づきでありました。


__


やっと靴が抜けたあっくん。

さんた「どうする?履く?」

濡れてるわ、泥だらけだわで嫌がるかなと思ったら、
すんなりと履きました。


近くをみると、すぐそばにがんちゃんがいます。

がんちゃんは、せせらぎの浅瀬を通って、あっくんより少し先にせせらぎを離れていきました。


まてよ。

そういえば、がんちゃん。
さっきからなんだかんだあっくんの近くをうろうろしてたな。

そして、向こうにいる子達は先におにぎりを食べ始めてて、
がんちゃんはそれを知ってた。

自分で行こうと思えばいけたのに、
行かずに近くにいたよなぁ。


あっくんと僕とで手をつないで、
がんちゃんが渡ったところからせせらぎを越えていきました。

さんた「いこーか!」
というと、

がんちゃん「いこーーーー!!」

と、あれあれ!?
がんちゃんがなんか張り切ってるぞ!?
そして、あっくんもそれを見てか
なんか元気になってる!


みんなのところへ走り出すがんちゃん。
あっくんは、ちょっと走ってから、
「だっこー」となりました。

靴も濡れてるし、気持ち的にも
ちょっと抱っこでいこっかなと
あっくんを抱っこして歩き出しました。

するとちょっと先を行っていたがんちゃん。
なぜか、その場で足踏みしたり、なんか踊ってる?
止まっています。

待ってくれてる??

あっくんは、すぐに抱っこから降りようとしました。
降りて、がんちゃんに追いつくと、

今度は2人で一緒に走り出したのです。
僕をおいて、笑顔で、すーーーーっと。



もしかして、だけど。


がんちゃん、こまってるあっくんに
ずっと気持ちを送ってくれてたんじゃないだろうか。

特に何か言ったりしたりはなかったけど、
そういえばずっと近くをうろうろしてたし。


そして、この2人の走り出す姿。


がんちゃんは、あっくんが困難を乗り越えるのを
信じて待ってくれてたんじゃないだろうか。


この、

”気持ちを送る”子どもたちの姿。
なんか気になってほっとけなくて、近くで見守ってくれてる姿。

こんな、1歳くらいからこういうことがあるんだ。

そういえば、

見てないようで見てること。
気にしてないようで気にしてること。

あったなぁ。。。


子どもたちは、年齢問わず
きっとお互いのことを想い合っているのかもなぁ。

そんなことを思ったのでした。


年長さんや仲間から気持ちをもらったあっくん。
どんな気持ちだったんだろう。
そして、これからどうなっていくんだろう。


せせらぎ、渡らせてあげなくてよかった。
靴、取らなくてよかった。
がんちゃん、先にみんなのもとへ誘導しなくてよかった。
焦らなくてよかった。

それでも、いっぱい先回りしちゃったけど!(笑)


子どもたちは、生きてる。

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