見出し画像

【僕たちは母を介護する】-16「意識」

次男を迎えに行き、病院へ向かう。
「どんな状況だろうか・・・」
弟が消え入るような声で私に尋ねた。
「わからないが・・・何かあったら連絡があるだろう。連絡はなかったから悪い事にはなっていないんだと思うよ。」
弟もあまり眠れていないようだ。
疲れが顔に出ている。
私も1時間おきに目が覚めた。
そのたびに着信がなかったか確認していたので、時間ははっきり覚えている。
しかし、不思議と疲れていない。

病院に着いた。
昨日と違い駐車場にたくさんの車がある。
今日は天気も良い。昨日は曇りで日中でも薄暗く感じたため同じところにいるのに少し違和感を感じた。

集中治療室へ向かい、インターフォンを押した。
病院のスタッフが出てこられ、要件を聞かれたので
「母の面会に来ました」
と、母の名前に私たちの続柄を伝えた。
「予約されましたか?」
スタッフの方に言われたので、事情を説明すると一度中に戻られ
「わかりました。今度面会に来られるときは、帰りに看護師へお伝えください」
と言って、中へ通してくれた。
「ありがとうございます。」
礼を言って、中に入る。
するとまた違う空間にきたような気分に。
亡くなった父が集中治療室で治療を受けていたことがある。
その感覚とはまったく違うのは規模の違いだろうか。

スタッフの案内で御袋の部屋の前についた。
部屋の真ん中のベッドに御袋が寝ているようだ。
ベッドの後方にはたくさんの機械がある。
血圧の数値らしきもの以外は見てもよくわからない。
中に入り御袋の傍に近づいた。
私は1ヵ月前にあっているが、姿がまったく変わっていた。
想像はしていたのだが、別人のように感じる。
一気に老いが進んだように思えた。

近くによると目が少し開いた。
反応があった。
ホッとした。
「よぉ」
私はなるべくいつもと変わらない挨拶をした。
すこし頷いたように見える。
「大変だったなぁ、驚いたぞ。調子はどうだ」
調子が悪いのはわかっている。しかし母は私の性格を知っている。あまり心配そうな雰囲気を出すと、逆に心配させるのではと思い、そう言った。
「とても立派な先生と、優秀なスタッフさんたちが一生懸命治療してくれている。良くなるから、がんばれ」
私は、御袋の手を握りながらゆっくりと話した。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?