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アート思考に触れて

『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』という本を読んでみました。内容としては、反響を呼んだ美術作品を紹介しながら、アートとは何かを全6章の授業形式で探していくものになります。プロローグからガッツリと引きずりこまれ、最後までスラスラと読めました。

この本を読んで、アートの楽しみ方が少し変わったように思いました。今までは、絵画に描かれている人物とか風景とかを眺めながら、綺麗な部分、美しい部分を探していました。そして、一般的に美しいと言われる箇所と自分の中で美しいと思える箇所とを一致させるような鑑賞の仕方をしていました。批評と意見が合えば正しいことなのだと安心して、意見が違っていればその意見こそが正しいものだとインプットするような感じです。これもまた美術を鑑賞する1つの方法なのかもしれませんが、私にとっては窮屈さを覚えるものでした。正しいとか間違っているとか、常にプレッシャーを感じていたというか。素直に楽しむことができなかったのはその方法に原因があったのかもしれません。

そして、この本を読んだ後は、もっと自分の考えを自由に表現しても良いのだと思いました。1つの解釈じゃないからこそ作品により深みが感じられるし、様々な解釈に触れるからこそ自分の考えも豊かになっていく。
「今まではこう考えていたけれど、もしかしたら、また違った視点から考えることもできるのではないか。」その発見と感動を味わいながら、新たな解釈や色を付け足してゆく。それが「鑑賞する」という言葉の意味だと思いました。


「デザインあ展」に行ったときのことを思い出します。「デッサンあ」というコーナーがあって、たくさんの人がデッサンを描いておりました。私が行った日には宇宙飛行士のモデル像が置いてあったのですが、完成されたばかりのデッサンをリアルタイムで見ることができました。あの時は、投影されているデッサンの中で「この人上手!!」と思えるような、忠実に再現したものばかりに目が止まっていました。以前の、正しさを見つけようとするような鑑賞の仕方でした。

ただ、改めてHP上でデッサン集を見てみると、デッサンの中にいろんなストーリーを感じられるようになりました。ななめ後ろから描いた宇宙飛行士はどこか孤独を思わせるような雰囲気で、きっと描いた方も何か感じるものがあって、このアングルを選んだのだと思いました。また、背景に惑星などを描いているものも見られ、作者の思考の中にはきっと神秘的な空間の中にいる宇宙飛行士の姿がはっきりと描かれていたのだなあと思いました。それぞれに個性があって愛おしく感じられ、あの時にはできない楽しみ方ができたように思えます。


そして、鑑賞が面白くなると、表現することもまた面白くなってきたように感じました。こうして文章を書く時も、自分が何を感じたのか、何を考えているのか、丁寧に汲み取ることを意識できるようになってきました。ああでもない、こうでもない、を繰り返しながら、自分なりに形にすることができた時は気持ちがいいです。これからもっといろんな作品や文章に触れて、自分の中に湧き出てくる新たな発見とか感動とかに出会えたら嬉しいものです。


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