ボタン鍋と獅子文六
朝から溜まっていた家事を熱心にやる。
洗濯機を3回まわして干し、床を拭き終わる頃には昼が過ぎていた。
冷凍してあった御飯と即席スープで簡単に昼餉を済ませて、夕方に向けての支度をしながらコーヒー(ゆげ焙煎所のお昼のコーヒー)をマグカップにたっぷり2杯分つくる。
支度の方は着替えて、顔に保湿クリームとアイシャドウ、リップを塗るだけなので一瞬だが、コーヒー作りは気を抜けない…。
獅子文六「青春怪談」
のお供にするのだから…。
とにかくべらぼうに面白い。
今だったらそうね…玉木宏とか伊勢谷友介並のイケメンである慎一と、これはうまい女優が脳内でうまく再生できないハンサムガールである千春の、ロマンチック?ラブストーリーである。
脇を固める慎一の母、蝶子さんの可憐さ、千春の父、鉄也の不器用さも最高にキュート。
なんと言っても65年も前に、今でいうLGBTやジェンダーの問題に真っ向から挑みながら、描き方が小難しくなく洒脱である為、読んでいて一向に肩も凝らず、まるで最高級焼菓子をサクサクとつまむかのように軽々と読めて、それでいて栄養にもなってしまう魔法のような文章。
マニッシュなヒロイン千春が自分の性の在り方に悩むくだりでは、男のなかにも女成分があるし、女のなかにも男成分があり、男とか女とかに囚われずに自由に好きなように生きなさいよ…という獅子文六からのメッセージを受け取ることが出来る。
明日はもっとやさしく生きようというステキなエネルギーが湧く本である。
(イケメンなのに一向にイイ男ぶらず、徹底的に無駄を省こうとする慎一はちょっとだけ米澤穂信の古典部シリーズの折木奉太郎ぽくもあるなぁ、なんて思ったり)
気軽に読めて、しかも心に残る読書がしたいという贅沢な人におすすめ。
夕方、夫が帰宅したので、出掛ける。
仕事関係の方と会食の約束があるのだ。
なんと生まれて初めてのボタン鍋…。
去年から楽しみにしていた。
しつらえの楽しい、隠れ家のようなみせ。
酒はまず梅酒をいただいてから、
老松、雪の茅舎、小鼓と杯を重ねる。
ボタン鍋、コックリと味噌がしみてあたたかく、本当に美味。
見た目も本当に牡丹園のよう。
結局また雪の茅舎に戻る。
フルーティな薫り、繊細な酸味のきいた後味。
旨いよ…。
味もさることながら、名前も美しい。
まだ行ったことのない秋田の冬景色に想いを馳せる。
「結局、人間なんていなくて、虫とかどうぶつが治めていた方がこの星は良かったでしょうな…」
というダンディな仕事関係の方の呟きに肯きながらも、
いい本といい酒を味わう一瞬だけ存在を赦しておくれよ…
などとムシのいいことをボンヤリとかんがえてしまう贅沢な夜は更けていった。
•ө•)♡ありがとうございます٩(♡ε♡ )۶