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26課メモ 「んです」『みんなの日本語』

ので」のところで書きましたが、私の中で、何とかしてほしい文法項目第1位「んです」!扱いにくい項目ですが、私のなかでの落としどころをご紹介します。

まず、私の中での「んです」の納得できる説明は「わくわく文法リスニング100」の中にある「何か理由や事情の説明が必要なときに使う」(p.65)というものでこれを根拠に考えています。

例えば、私は病状を聞く場面で違いを説明します。

顔色が悪そうな人を見た時、心配な気持ちで理由が知りたい時は

A:どうしたんですか。

B:熱があって頭がいたいんです。

という会話。

病院に行って、医者が患者に症状を聞くときは

A:どうしましたか。

B:熱があって頭がいたいです。

という会話になります。お医者さんはどこか具合が悪いからきているという事情はわかっているので、病院に来た理由を知りたいわけではなく、症状をきいているわけです。事実調査みたいなものです。

まず、これを認識した後『みんなの日本語』9課をみてみましょう。

例文では

6 A:毎朝、新聞を読みますか。B:いいえ、時間がありませんから、読みません。

7 A:どうして昨日早く帰りましたか。B:用事がありましたから。

と、あくまでもフラットな質問(事実調査で他意はない場面と受け取って!)と答えという形になっているのですが、

練習Bでは

A:どうして料理をならいますか。B:料理が下手ですから。

A:どうしてタイ語の本を買いましたか。B:来月タイへ行きますから。

というように、どう考えても事実調査ではなく「事情の説明がほしいから聞く質問」なのに「んです」を使わずに聞く練習になっています。この調子で、教師が「初級の初期の段階だから仕方がない」という認識のもと、なんでもかんでも「どうして~ますか」を9課から25課までやり続けると、学習者は26課になって急に「んです」を使いましょう♪と言われて「どういうこと⁈」となります。(と、他人事のように書いていますが自分がやった経験による大反省に基づいています)さらに、例文のような雑談の中の単純な質問である設定の会話も「残って残業してほしかったから、事情を説明してほしい」というような場面に設定して「どうして昨日早く帰りましたか」と質問し、個人的な理由を「から」で答える失礼さ、みたいなものまで定着させてしまいます。(「ので」と「から」をご参照ください)

ですから、私はまず26課になるまで、できるだけ「んです」を使ったほうがいい会話練習はしないようにします。理由を聞いたり、言ったりする場面が必ずあるのでその時には「~ですから」を使いますが、できるだけ事実調査の会話になるようにします。

そして、26課を一通り学習した後「どうして日本へきましたか」と「どうして日本へきたんですか」を誰がいうか考えてもらうと、「前者は入管の人で、後者は日本で友達になった人」と答える人がではじめて、なんとなくわかりだし、さきほど紹介した「わくわく文法リスニング100」のp.65「あたまがいたいんです」で、「んです」を使っているときと使っていないときのやり取りをたくさん聞いて、「単純な質問と答え」と「事情がある場合」の違いをつかみます。

そして、最後に「どうして日本へきましたか」と「どうして日本へ来たんですか」は意味だけ考えるとほとんど同じだけど、使う場面と言いたいことが違うことを話し『みんなの日本語 初級Ⅰ』の時は意味がわかればよかったけど「初級Ⅱ」は使う場面と、どんな気持ちで使うかがとても大切だと伝えます。(チームで教えていて「どうして日本へきましたか」が定着している場合もこれと同じ説明をし、これからはワンランクアップした日本語を覚えましょうと話します。)

これをしておくと、「調べます」と「調べておきます」はどう違いますか、とか「はりました」と「はってあります」は同じですか、というような質問がかなり減ります。学習者は「初級Ⅰ」の間、意味の理解をしようとしてきたのだと思います。そこに同じものに思える二つの表現が出てきたら、どう意味が違うのか考えるでしょう。そして先生に聞くと「意味は同じ」と言われる。じゃあ、片方わかっていればいいや、となってしまいます。教師がいくら使用場面の違いを説明しようとしても、右から左、定着しないまま進むとニュアンスの違いがわからなくなり、伸び悩んだり、大きな誤解がおこったりしてしまいます。ポイントが意味の違いではなく、使用場面と気持ちだという意識があれば、教師の導入がすんなり受け入れられるというわけです。

それと、26課の「んです」は使用場面が多岐にわたるので、25課までに学習した語彙と文法の総復習的な要素があります。学習者の弱点が露呈して慌てたりします。絶好の復習の機会として練習しますが、でも、あんまり復習ばかりしていても飽きるので、学習者のレベルによって練習場面を狭めてもいいかと思います。

平凡な顔をした26課はレベルアップの洗礼をうける課ですが、わかってやっていれば大波をかぶることはありません。さらなる日本語力向上にむけて頑張りどころです。

まとめ

1.「んです」は文法項目自体が難しい。

2.これまでの学習との整合性をつける。

3.初級後半スタート!「初級Ⅱ」は既習事項でもいえることを細かく言い表すことの連続。学習者にこれまでとは違う心構えを伝える。

~note内リンク~

25課メモ「~ても~」

23課メモ「問題」

21課メモ「~しないと」

19課 16課 5課 メモ

18課メモ 「~ことができますか」

17課メモ「~ないでください」