「かもめ食堂」に見る、自由で地に足のついた、ひとり上手な女性たち
予想外にノルウェーでの暮らしが始まり、北欧のことを知るために少しずつですが旅行本、書籍、SNSを見てみたり、北欧を描いた映画を見たりしています。
先日、フィンランド在住の方のブログを読んでいて、映画「かもめ食堂」ってフィンランドだった!と思い出し、ひさしぶりに鑑賞しました。
以前見たのはたぶん10年以上前。北欧が舞台で、くすっと笑えるマイペースな女性たちが繰り広げる、ゆったりした映画という記憶。
「あ、わかる」が増えたこと
映画の公開は2006年とのことで、作成されてからもう15年たつのですね。今回見て、北欧雑貨、マリメッコ、ムーミン、北欧的家具、シナモンロール、などなど、今も続く北欧ブームの中心となる小道具が映画のなかに溢れていることを再確認。北欧ブーム、息が長い!
そして、登場人物たち。
小林聡美さん、片桐はいりさん、もたいまさこさんという演技派・個性派女優さんが演じるそれぞれのキャラクターが秀逸!
以前見た時は、コミカルでどこか面白い登場人物たち、という捉え方でしたが、今の自分は映画の彼女たちと同年代か、もっと上かも。
今回あらためて見て、3人それぞれ、日本でしんどい日常を乗り越え、何かしら卒業してやってきただろうこと、遠い遠い異国にひとりでやって来る強い覚悟があったこと、そして、どこでもちゃんと自分でいられる強さを持っていること、そんな大人の女性の心のありようをキャラクターの中に感じることができた気がします。
自由で、地に足の着いた、ひとり上手な女性たち
映画のなかで設定されてる年代を考えると、彼女たちは昭和生まれ。男女格差がまだ歴然と残る時代で、40代以降で独身でいるのは少数派で、社会は決して優しくなかったはず。そんななか、日本経済は強くなり、海外へ進出する企業が増え、日本を飛び出して海外で学んだり、仕事を見つける女性が出てきたころ。
主人公のサチエは、そんな時代の先駆けの一人。彼女は自分が何をしたいか、何がゴールなのか、そのためにどうすればいいかをちゃんと理解しているし、ぶれない。自分をしっかりもった芯の強い女性であり、異質なものと対応する柔軟さも持ち合わせている。そして、ひとり異国で暮らしていくため、孤独と向き合う覚悟もある。海外で、ひとりでチャレンジをする女性たちのロールモデルでもあり、地に足の着いた等身大の姿に勇気づけられる女性はきっとたくさんいる。
片桐はいりさん演じるミドリは、目をつぶって世界地図を指さした先がフィンランドだったから、という理由でフィンランドにやってきた、素直で正直で気取りがない女性。何かすごいものがあるわけでなくても、外国語がしゃべれなくても、ちょっとの勇気と冒険心でひとり世界に飛び出せば、新しい世界が見つかるかも、と思わせてくれる。
もたいまさこさん演じるマサコは、落ち着いていてマイペース、どっしりと構えているけど、フットワーク軽くて決断も早い。謎めいたところがアクセント。人生のなくしもの、予想もしていなかったところから見つかるもの、そして思いもかけない贈り物、そんなものを体現している。
3人に共通しているのは、ひとりが上手なこと。自分の足で今までもしっかり歩いてきたし、仲間がいてもちょうどよい距離感で、心地よく付き合っていける。そして、きっとまたひとりに戻っても地に足をつけて生活を送っていくだろう安定感があること。そんな大人な女性たちだからこそ、慣れない異国でのチャレンジが浮つかないし、穏やかに見ることができる。
「かもめ食堂」がフィンランドだった理由
そんな個性豊かな、自由で大人な女性たちが日本を飛び出し、暮らし始めた国がフィンランドだったこと。
ヨーロッパのおしゃれな風情や豊かな自然が絵的に良いし、かわいい雑貨など女子の「好き」がつまっているから?でも、きっとそれだけじゃない。フィンランドの国民性が大人な彼女たちにマッチしているのでは、とも思うのです。
北欧の国々は、西欧の中でもシャイな人々が多いといいます。でも、人間嫌いなわけではなく、すごく親切だし、仲良くなると家族のように迎えてくれる。そして、個をすごく大切にする。他の人がどうであろうと、まわりからどう見られようと、自分が好きなことを大事にする。孤独がネガティブではなく、ひとりの距離と世界を大切にする。他人と一緒にいて沈黙があっても気まずくないし、適度な距離感を持つ。そんな特徴があると言われます。
主人公や登場人物たちのキャラクターとフィンランド、親和性がすごくあると感じるのです。ひとりで自分と向き合い、自分の好きを大切にしたい、そんな自分を持つ大人な女性たちにとって、北欧はほっとできて、過ごしやすい国なのかもしれません。
ちなみに、女性向け映画という位置づけかもしれませんが、我が家の息子たちもかなり楽しんでいました。かもめ食堂最初のお客さん、トンミ君のキャラクターがツボにはまっていたり、スーツケースのキノコ、突然の猫の登場に笑ったり。そして何より、おいしそうなおにぎり、鮭の塩焼き、とんかつにから揚げに彼らの目はくぎ付けでした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?