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【2016松本山雅】第4節 vsジェフ

 ご覧頂きましてありがとうございます。第4節ホーム開幕ジェフ戦。本当は行く予定だったのですが、仕事の都合で泣く泣く直前キャンセル。スカパーオンデマンド見ながらいくつか気がついたことを。
今節を見た感じそろそろ文章量は減る感じです。今季の方向性はハッキリ見えてますしね。
 
 この試合の後に見ていた大宮vs広島…浅野ウタカ柴崎のサンフレ攻撃陣噛み合ってましたねえ。ACLブリーラム戦からチームの流れが良くなったようです。
そういえばブリーラム戦では個人的に大好きな宮吉拓実が活躍してました。頑張って欲しいです。

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●「31321」っぽいDMFの縦関係

 試合前にスプリンクラーで水を撒いた(山雅では珍しい)とか、相手の船山貴之に盛大にブーイングが贈られたとか、ホーム開幕戦はJ参入後勝ったことがない(1分3敗)とか、そんな試合の入りは前節と同じ。
メンバーも変わらない。風は強く向かい風

 但し2点気になった。ひとつは宮阪武井の縦関係が強めで3421というより「アンカーありの31321」っぽい感じ。清水戦でも縦関係はあったが更に強めに思う。武井の周囲のエリアは喜山當間の両CBがケアする形か。
3センターにはしていないが、後述する喜山・當間・工藤・隼磨が入れ替わりに攻撃参加して縦パスを入れたり守備関与する感じが、3センターのインサイドハーフテイストで興味深い。
もう1点は山本の脚のガッチガチのテーピング。ケガ情報もあり、90分できるのだろうかという危惧は感じた。

●いろいろ惜しい前半

 6〜7分あたり。山本ポスト、工藤が持ちキープして隼磨へ。このとき、前線に山本と石原のFWだけでなく、宮阪や安藤がきちんとおりFWの背後に押し上げている。こういう厚みが清水戦では物足らなかったので、ここは改善されたポイント。

 ダンのキック精度の悪さは気になる。村山(現湘南)も良くなかったが、野澤(現アルビシンガポール)が良かっただけに気にする向きも多いかも。彼はもともとフィールドプレイヤーでGK転向は少し遅かったという話を聞いたが…はて。

 11分。ジェフのDFのパスミスを山本が引っ掛けた決定機。このときGKがかなり前だっただけに、できれば無理な突破よりループで仕留めて欲しかった。結局は滑ってシュートバランスを崩してボールは左へ。勿体無い。これを逃したことが後に響いてしまう。

 14分。スカパー中継のレポーターが相手監督の関塚さんの指示を伝える。「左から攻める」…すなわちSBの阿部翔平側(隼磨側)から攻めろと。
確かに阿部翔平起点の攻めがジェフの特徴でもあるのでこれは納得がいくし、山雅も隼磨クロスが多めだったしその抑制もあるのだろう。
少し船山に縦を入れることに拘り過ぎてるバランスの是正。但し追い風もあって長めのパスは多用されてる。

 16分。その阿部翔平の裏に石原が入る。その後の宮阪のシュートにも2人が詰める。地味ではあるがこういうサイドアタックは続けたい。ジェフはゾーン守備にチャレンジしてるようだが、連動性はまだまだなのでそこは突きたいところ。

 17分あたりの宮阪と武井。縦入れて一旦飯田まで戻したときの飯田と、武井や宮阪との距離感がいい。DMFふたりの距離感も清水戦のそれよりはいい。
この場面では喜山に戻して、喜山が持ち上がってからの縦パス。
ただ、喜山の縦は勿論効果的ではあるが、右サイドにいる宮阪や當間からもバランス良く攻めたいところ。この日の後半がそうだったが、喜山が目立てば当然守備は修正される。

 18分。安藤喜山が上がった裏を狙われるが、ここは飯田のいい守備。

 19分。今年の攻め。安藤からの縦から石原を走らせる。21分から22分。喜山守備から縦→石原には出しそこねたが、安藤に預けて工藤→逆サイド隼磨、隼磨クロス。ニアに石原が走りこみファーで山本が仕留めようとする。
ちょっとした部分で合わせきれてないが、大きなクロスでファーで仕留めるのはいいトライ。

 25分。武井が最終ラインの飯田と喜山の間に入り、飯田が右に寄って當間にパスするあたりは、広島で言えば森崎和幸、浦和で言えば阿部勇樹の仕事を武井がやってるとも言える。
これをやると守備がCB+武井の4枚で一旦落ち着くので、ワイドを高めにできる利点がある。

●當間建文を諦めない

 この後ビルドアップをやり直してから當間の縦パスが出る。これを待ってた。隼磨ではなく、その隼磨の前に流れた工藤への攻める縦パスというのもいい。結果は長すぎたがいいトライ。パスを出す前の高い位置も良い。
清水戦まではどうにもこうにも遠慮がちで、落ち着かないプレイが多い當間だったが、こういうプレイが増えるとチャンスは増す。どんどん縦パスは出して欲しい。
清水戦の懸念だった縦パスの受け手と出し手の距離感も、CBの持ち上がりや、前線やDMFの貰い方の工夫で大分短くなってるし、オフザボールの動き出しも見られる。縦パスの出し手も當間が加わった。いい傾向だ。

●チャンスは作れてはいるのだが

 26分から27分。山本が降りてきて喜山からクサビの縦を受ける→武井に戻す→武井がダイレクトで石原にというシーンもいい。通らなかったが、山本が相手CBを食いつかせてクサビを受けているので、そのCBが空けたスペースを狙いたい。

 28分あたりもいい。喜山から石原へ縦。石原がCB背負いながら安藤に戻す。安藤から宮阪にダイレクトで戻して宮阪が縦を試みる
石原の相手DF(多々良敦斗だ)のカバーがいいので、縦を諦めて安藤に戻す。安藤からダイレクトで今度は横気味のパスを石原へ。
ダイレクトの多用で相手DFの動かす試みも、ここ3試合より増えたので良い傾向。ダイレクトは崩すためには必要。

 というかダイレクトで球回しする山雅とか、正直昨季まで全くイメージできなかっただけに、噛み合ってくると武器になる。ダイレクトはDFの対応が遅れるので有効。
今は噛み合わないので「変な山雅」「ヘタな山雅」にしか見えないし、実際下手だが。

 30分。相手決定機。船山貴之が降りて受けてからの攻め。ダンが少し気になる。セーブにしてもその後のCKのキャッチにしてもちょっとナーバスか。
今季も前日練習でアルウィンが使えないようで(その割には芝も良くないし)、春先の風も厄介。34分のCK処理もミスが有ったし、なんとか早くスタジアム慣れして欲しい。

●「信州天然水を運ぶ人」武井択也

 40分あたり。イビチャ・オシムの良いDMFを賞賛する言葉に「水を運び人」という表現があるが、まさに武井が水を運ぶ役割をしっかり果たしている。1試合ごとにスムーズになってきてる印象。

 そんな中でバックラインで作り直す→武井が寄って受ける→宮阪喜山當間らを使う(この場面では喜山)→喜山と宮阪で運んで宮阪がダイレクトで縦のクサビ→山本がクサビを受ける流れでスルー(フリックに見えたがこれはスルー気味)→石原が山本に食いついたCBの裏を狙う流れ。
27分では山本がクサビを受けたが、この受けの狙いは先程も触れたとおりで、相手CBを前後に動かして、その裏を開けさせること。ジェフDF陣の寄せの的確さもあって決定機にはならなかったが、狙うことで相手DFのマークミスは誘えるので続けたい。

 43分。右サイドで當間が外に出て、隼磨が中にスイッチする動き。スローインから隼磨の前方で工藤がプレイする動き。
冒頭でも触れた3センターのインサイドハーフの感覚で、隼磨が球回しに参加するのは興味深い。こういうシーンは以前は殆どなかった。
こうやって隼磨が中に入ることで、外を當間だけではなく工藤がもっと使える。工藤が内から外へ流れてパスを呼びこむ形は京都時代の大木サッカーでもよく見かけた。

 46分決定機。工藤宮阪のショートコーナーから當間ヘッドがポスト。第2節の三ツ沢でも気になった、宮阪の「左に比べると少し落ちる」右CKの精度だったが、ショートコーナーという手があったか。
想像だが、宮阪の右CKの精度が落ちる原因は、思い描くカーブを掛けようとすると、アウトスイングが故に、ボールが一旦ラインを割ってしまうのかもしれない。
そこで、工藤にちょっと蹴り出して貰って内側にオフセットして蹴ることで、思い通りのカーブを掛ける幅を確保したのでは。
しかしいいCK。當間ヘッドは本当に武器になるし、飯田當間と2枚揃うと、かつての飯田犬飼のようにマークが分散する利点もあるので今後も期待したい。1本入れば多分変わる。

 前半ラストのFKも、実はよく見ると飯田が完全に相手DFの前に入っており、高ささえ合えば1点だった。ボール1つ2つ高いか。
今の時点でも宮阪のキック精度は相当なものだし、2013年8〜9月あたりの、山雅加入当初の岩上祐三(現大宮)の精度よりも良いのでは。

 こうやって時間を掛けて見てみると、ディティールは1試合ごとに良くなってきてるので、見る方もここは我慢が肝要と思う。

●合わせたいが噛み合わない後半

 後半開始。風強めなれど追い風に。キックオフで「一旦戻して大きく蹴る」のではなく、ドリブルで運んだのは印象的。ショートコーナーから今度は隼磨まで戻してクロスという別バリエーション。

 49分。武井ダイレクトの縦→安藤裏取り→マイナスクロスを工藤に。これが合わない。いや、これは合わせて。安藤工藤は京都時代からのコンビ。しかもやってるサッカーは間違いなく大木サッカーの応用のはず。

 49分から50分の武井→隼磨、隼磨縦パスからの石原の外外のアタックはキャンプでやってたプレイ。ただクロスを上げたくても、前に上がってるのがファーの山本ひとりでは厳しい。工藤宮阪あたりがちょっと見ちゃってる。もっと押し上げたい。

 51分あたりのGKフィード→山本スリップヘッドからの石原裏抜けもいい。このあたりでさすがにジェフも喜山をFW(吉田眞紀人かな)にケアさせるようになった。そうなると當間や武井の出番になる。こういう相手守備は当然ある。

 52分今度はジェフ決定機。ファーのSBやワイド(この場合は安藤)を狙う意図の長澤のいいクロス。ダイアゴナルで入ってきた相手SH(小池)のヘッド。このあたりから関塚さんの狙いである「左攻め」が多くなる。
山雅のようにボールサイドに選手間を圧縮して守る場合、狙われるのは大きいクロスでファーのヘッド。山雅も直後の54分に同様に大きいクロス(工藤)でファー狙いしてるし、守りにくいのは確か。

●勿体無い失点

 57分失点シーン。左からの大きいクロスが長すぎて一旦右でキープ。そこからSHに縦が入る。
そのSHの対応に喜山が行くのはOKとしても、喜山が出た後を埋めるはずの武井が思わずボールウォッチャーになって見てしまって、相手DMF(山本)の侵入を許したのが大きかったか。
ダンも最初のクロスの対応で大きく動きすぎて、次のシュートストップで十分な姿勢がつくれない。
勿論相手のシュートは見事だが、山雅の守備力を考えたら防げる可能性はあったようにも思えた。

 59分。安藤→山本→石原という崩しはいい。ただ気になったのが、この崩しが生まれる直前、また清水戦同様DF・MFとFWの距離感が間延びしていて縦が入れられない状態になった。
FWの受けて上がる動き、DFの持ち上がりは相手守備を恐れず続けて欲しい。

●「那須川はいいぞ」

 65分武井out那須川in。那須川を左ワイド、安藤をDMFにシフト。那須川の突破とクロスで打開しようという考えか。安藤もまた「水を運ぶ」という意味では武井と遜色はないし、安藤の守備力はいい。間延びはなくなり安藤が運ぶシーンが増える。
この辺りは、宮阪がアンカー気味に下がる場面もあるが、押し上げる意図もあるのか縦関係の時間は割に少なくなる。一定の約束事のもとで両DMFが機敏に動いてる印象。

 67分決定機。那須川カットインからのクロスは実にいい。隼磨が触れば1点だった。こういう仕事は那須川は巧いし、あそこから前が開けばミドルシュートもある。この辺からかなりジェフが守備重視にシフト。押し込める時間は増えた。

 73分那須川ロングシュート。ロベカル好きの那須川らしいアウト回転。アウトに掛かり過ぎたか。入ってればとんでもなかったが。

 76分。當間が内側に持ち上がって宮阪に当てて安藤に戻す。安藤から隼磨に大きいパス。そこからの隼磨サイドアタックはCKになるものの、意図はいいし、何より當間が清水戦より自信持ってビルドアップに参加出来てるのが大きい。
當間が清水戦までのようなパフォーマンスに終止してしまうと、今は負傷離脱中とはいえ酒井の出番が復活する。そういう意味では當間にとっては正念場だったかもしれないが、これなら當間は答えを出すのでは。次節山口戦は見ものだ。

●前田大然という才能

 79分石原out前田大然in。ここでパワー系FWの選択肢がないのが痛い。勿論オビナは離脱中。ウィリアンスもケガらしいし、大卒新人のハンスンヒョンに至ってはキャンプから全くアピールできてない状況。1枚足らない。大然くんには頑張ってもらうしかない。

 83分あたり。安藤からいい浮き球の縦が山本に。惜しいパス。ただこの時気になるのが大然の動き。横が多すぎて受けに来ないので縦パスが入る余地が無い。
縦で受ける動き、裏を取る動き、横へのスライド。パス&ゴー。やることはたくさんあるので頑張って覚えたい。
高卒ルーキーとしては大然はホントに良くやってるが、よくやってるで終わってはいけない。世界的に見てもトップクラブの戦力になっている18歳とかザラに居るのだから。

 84分。宮阪の浮かせた縦、SBの裏から猛然とボールに関与して後方に落とした大然、拾った工藤がCB引きつけて大然にパス。
裏取った大然だったが、トラップが流れる。でもよく追って追いついてニアにクロス、そこに山本もGK守備でシュートならず。

 惜しいんだけどその流れたトラップが勿体無いぞ大然くん。佐藤寿人なら、大久保嘉人なら、そのタッチは流さない。絶対打てる位置に置くから! その打てる位置に置いたら自慢の右足で打てたはずだから!!!

 というか、この前田大然を見て、広島時代の石原直樹がこんな動きからアフリカ系みたいな体幹の強さ使って変態シュートを決めてたのを思い出すくらい。いや、この18歳やるわ。粗いけどいいものは持ってる。

 87分から88分。ファーへのクロス、安藤キープからの那須川ミドル。シュートでもあるし、これを触れば1点もののクロスにもなる。安藤のDMF、那須川のワイドはいいかもしれない。

 AT。パワープレイのファー折り返しを當間がやる、前田大然が積極的に飛ぶ、鐡戸ミドル2発(2本目は非常に重たいショットだった)等々頑張ったが試合終了。ジェフは山雅J参入前の試合含めてアルウィン初勝利。

●惜しい試合ではあったが

 負けは負けとしても惜しい試合ではあった。阿部翔平は上手に消し、船山貴之もかなり消して攻め手は制限したが、現状ではそこまでだったか。ジェフは予想通り攻守の連動性は今ひとつだっただけに、勝ちたい試合ではあった。

 一方、今季の狙いでもある、クサビにしろ裏にしろ、縦パスの有効性は増してきている。2節の山本のゴールのような形もいいが、できれば中央というかCBを縦パスで割ったシュートで得点したい。
そうなると縦パスを相手が脅威と考えるようになるし、自然と相手FWやMFが縦パスを警戒するあまりに、宮阪や喜山や當間にプレスに行くことになる。

 その結果、守備の連動性を精力的にトレーニングしてない、あるいはサボりがちなJ1J2のチームなら、連動に乏しいプレスの副作用として起きる、「選手間の間延び」や「守備連動ミス」を誘いやすくなる。
ちょうどアメフットで、ショートパスでリズム作ってから、レシーバーに「ショートを受ける動き」でディフェンスバックを釣り「そこから裏を取るロングパス」を試みるような。縦パスにはそんな「相手守備を壊す」利点もある。

 開幕以降懸念だった石原の動きも前節より見るものがあったし、何しろ意図がわからないふわっとしたプレイがなくなったのは大きい。

 當間のフィット感が増していることも朗報。もっと攻守に絡んで欲しいし、CKのヘッドにも期待。

 武井は失点に絡むカバーの問題を除けばかなり良くなってきた、DMFの距離感は試合ごとに良くなってきている。あとは縦パスの質と相互のカバーリング。
但し那須川先発となると、安藤のDMF適性、特に守備力が抜群にいいので、彼がワイドからシフトするかもしれない。(※岩間は攻撃へ移るパス精度という昨季露呈した難点が大きいのでまずはそこから)

 那須川には期待している。プレビューでも書いた通りで攻守ともに良く、この試合でも彼の良さは出たと思う。

 そして那須川同様、大然がもたらした刺激もまた大きく、次節以降先発メンバーの変化もあるかもしれない。
次節以降に繋がる要素は多々あるので引き続き期待したい。

 但し、そうはいってもやはりCFは1枚足らない。移籍市場が一段落しつつある1/9に新人の外国人(ハン)の獲得を発表しているあたり、恐らくは狙ってた、あるいはめぼしいFWが獲れなかったのでは。
フロントに追加補強の意志はなさそうで噂もないが、どうにもこうにもパワープレイができ即戦力で使えるFWが足らない感じはする。
ちなみに移籍ウィンドウは月末まで開いている。メンバー外になりがちな背の高いFWはJ1J2にいないだろうか。もうひと動き欲しいのだが。

●長い目で見る必要性

 最後に。前回もちょっと触れたが、負けると外野はうるさいもので、「山雅弱くね?」「カウンターどうした」「ガチャガチャやってた方が強かったよね」等々の酷評は出る。
実際「2014年の方が強かったですよね」と言われればそうだねと答えるしかない。2014年のチームはJ参入後練り上げてきたチームの3年目で、選手も割に適材適所ではあった。

 ただ、本当に編成も歪みなく良かった年がなかなかないことも踏まえておきたい。バランスが比較的良かったのは、塩沢(現長野)と長沢(現ガンバ)の併用に目処が立ち、岩上(現大宮)が加入した2013年の夏の終わりから最終節まで。
2014年長沢が抜けてサビア(現在フリー)に無理なポストプレイを求め、塩沢が負傷離脱したあたりから微妙にバランスは悪くなったが、それでも船山の好調さと、山本という急成長株、隼磨というリーダーを得た守備に前半は助けられた。
それでも9月に守備が崩れたが、リベロに大久保裕樹(現ジェフ)を据えた10月に守備が好転して乗り切った昇格であり、正直、磐田のドタバタ等の運もあった。

 2015年の初J1は守備は悪いなりにも保ったが、J2で通用した攻撃がミドルサード段階で潰され、「この(昨季までの)サッカーのままじゃJ1定着は不可能というのが結論」で今季は始まっている。
セットプレイは持っている型がいくつかあり、カウンターもできる。ならば遅攻というか崩しも覚えよう。今季はそんな1年になるのでは。

 そんな今季故に、まだこの方向性を支持する支持しないの段階ではない。静観するしかないし、好転することを願っている。
但し、過去のソリさんの改変は、新潟でも湘南でも、後々の変化の下地を作った反面、即効性には乏しかったことは、念のため頭の片隅に押さえておきたい。果たして今回はどうか。

●山雅のゾーン守備

 最近のJ2では金沢・山口・町田とかで442のゾーン守備が練られてきてる。特に相馬監督の町田の守備はハイラインかつ各選手が機敏で興味深い。
SBがときにDMFよろしく中央で球回しに参加して、前に預けて即SBポジションに戻るとか、DMFのひとりがひたすらボールサイドでビルドアップの黒子としてSBからアタッカーまでサポートするとか工夫も多く、3ラインの距離感が抜群に良い

 「リトリートして個人能力の力技基本で守備する日本の常識」からの脱出は個人的にも望んでいるし、ソリさんがそういう方向に2014年あたりから取り組んでるのも支持している。
ヒントがアッレグリ監督のユベントスの3バックということで、最近時々ユーベの試合を見る。それがリーグでもカップ戦でもCLのバイエルン戦でも(あれは凄かった)、時々「ああこれ山雅もやろうとしてる」というプレイに出会う。

●飯田真輝の起用法と折り合い

 ソリさんはこう言う。確かにJ2でゾーン守備は増えた。でも山雅で4バックをやるにはCBの強度に不安があると。それ故の3バックと。この辺はインタビューやら昨年末のトークショウでも出た話。
結局は飯田真輝をどう使うのか、ということになるのだろうか。飯田は、4バックCBは2014年のプレシーズン等で試してはいるが難しく、3バックでも足元が厳しい。しかし対人とヘッドに利点はあり、得点源でもある。
多分飯田抜きでDFを組めば、今の山雅の人材ならJ2で通用する程度の4バックはできる。でも飯田が欠ければセットプレイは攻守ともに確実に厳しくなる。

 そこで、442ゾーン守備のエッセンスを「ボールサイドのワイドが1列上がる」形を使う中で「左右どちらにスライドしても飯田がSBの役割をすることがない中央」に飯田を置いている。これだと比較的難点は露呈しにくい。
但しイリアン・ストヤノフ(元ジェフ→広島→岡山)や千葉和彦(広島)のような、攻撃の起点になるリベロ像はそこにはない。
個人的にはイリアンが好きだったので、飯田のようなリベロ像はちょっと違和感があるが、當間と喜山が攻撃の起点になるなら、それもありなのかなと。

 この守備は試行錯誤の末に2015年のJ1シーズンの9月(飯田を中央にして酒井を右に出し左を喜山にやらせる)には出来上がり(天皇杯の湘南撃破やリーグ戦だとガンバ戦以降時折見せた好守備等)、そこそこ堅い守備にはなった。
故に、今季はこの守備から、攻撃にどう転じるか、ビルドアップをどうするかを求めているところと思う。

 勿論「脱飯田」というか世代交代して、若手の有能な選手でやれれば、よりJ1を目指しやすく落としこみもスムーズとは思うが、J参入から歴史が浅いクラブの「人脈のなさ」故に、そんな選手は全くといっていい程山雅では獲得できない
大卒もやっと「大学選抜候補」ぐらいは来て貰えるが、「ユニバ代表級」「五輪代表候補」はまだまだ他クラブが持っていく。高卒も「年代別代表経験者」は殆ど来ない。ユースからのトップ昇格など、あと数年は掛かるだろう。
J1J2の選手でも獲得に至らず断られてるケースが多々ある(加藤GMや南TD曰く)のが山雅である。

●新・起動は一歩づつ

 中国超級クラブのような「カネ」で解決する手段はあるが、EPSONグループはスポーツに一定の理解はあっても、中国超級のようなカネの使い方は不可能なので難しい。
EPSONグループはモータースポーツ他へのスポンサードも継続しながらの山雅支援であり、結局はクラブが、地味に営業、スカウト、育成等を頑張るしかない、ということになる。

 今できることは、パスサッカー経験のあるベテラン(安藤や工藤)中心で、今後5年は使えるであろう「遅攻時の攻め」の基礎をつくり、セットプレイとカウンターに続く3つ目の要素とし、後はユース育成、高卒大卒等を育てていく手段をとることになる。
目標のJ1定着までには、恐らくいろいろな浮き沈みはあるだろう。
その中でユース含めてクラブの総合力を上げて、トップでもユースでも有力日本人選手が獲れるクラブになるのが目標となろう。今季はその再出発1年目。故に、スローガンにも「新・起動」という文字が入る。

 一気の飛躍が出来ないから、一歩づつ。クラブの総合力を上げつつ、チーム戦術も、その時にいる選手ができる戦術を落としこむ。
リアリスト反町康治には期待している。但し、ソリさんの戦術で全ては解決できないことも理解しておきたい。J1に上がり定着したいならクラブの総合力の向上が不可欠

 次節の山口はJ3上がりで新進気鋭。昨季のJ3を凌駕した攻撃は鋭くゾーン守備の連動もいい。岸田の裏抜けにどう対処するのか。庄司をどうコントロールするのか。442ゾーン守備をどうブレイクするのか。
連敗は避けたいだけに、ジェフ戦で良かった部分を伸ばしていきたい。勿論、当分は復帰が難しいオビナを除くケガ人の復帰も願っている。

 山雅公式サイト「7年の時を経て」という煽り。スコアは2008年09年の地決(全国地域サッカーリーグ決勝大会)の対戦スコア。鳥取開催の2008年はPK負け、松本開催だった2009年は3-0勝利。
古くからののファン・サポーターの琴線を揺さぶるキーワードだろうし、09年に山雅に移籍しこの地決の試合に出場している鐡戸裕史(選手の入れ替わりが激しい地方Jクラブとしては稀有な存在)にとっても、何かを感じる対戦なのかもしれない。

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 最近周囲で高まる「工藤浩平のユニのサイズはもしかして…S?」という話が面白かったりします。ファン・サポーターの目線は面白いものですねw

 あと最後のシーンのジェフFWエウトンの独走→不発を見て、「ジェフの外国人って毎年一人こういう選手いるよねw」と、ちばぎんカップがピークだった?ジャイールとかを思い出しておりました。こちらは山雅側ですがそれでも「そこはトドメを刺せるだろ」とw

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