見出し画像

【2016松本山雅】プレビュー(簡単な自己紹介を添えて)

 初めましての方は初めまして、ということで、naos(なおす)と申します。「フットボールchacha!」というサッカーラジオ(Podcast)を(MCのひとりとして喋りつつ)制作しております。

 昨年まではアメブロ(「フットボールchacha!」ブログ)で書いていた松本山雅FC(以下「山雅」)に関するアレコレを、今季はここnoteで書くことにしました。今回初めての方も、昨季からお付き合い頂いてる方も、どうぞ宜しくお願いします。

 さて。Jリーグ開幕まで1週間を切りました。今季の山雅はどうでしょう…ということで、清水J-STEPキャンプを見てきた感想他から、今季を簡単に占ってみましょう。

●「ビッグマン」から「スモールフットボール?」へ…オフェンスは再構築中

 今季の山雅はズバリ「オフェンスの再構築」をやっている。従来の「CFにロングボールを当ててそこから」的な攻撃から、昨今のサッカー界のオフェンスのトレンドともいえる、ビルドアップとサイドアタックを駆使した攻撃への変化。

 今季4バック(433系でアンカーありの3センター)も俎上にあったはずだが、どうやら昨季後半の3331からの流れで352(3322)…アンカーありの3センターを維持しつつも2トップ化して臨んでいる様子。少なくとも清水J-STEPキャンプでは3322を使う時間が長かった印象がある。

 反町監督の「開幕当初は4バックのチームが多いからね」という発言から考えても、最初はvs4バックでは優位性がある3バックから入りそうだ。

 但し433も試してはいるし、3331や、2014年タイプの2ボランチ3421、同じ3322でも可変性も随時試してはいるので、この辺は試合や局面に応じた変化がありそう。

 最近はどの球技も「ポジションの流動性の高さ」がテーマになってる印象で、数年前のバスケNBAのヒートやスパーズのような「ビッグマン(身長の高いセンター)を置かない『スモールボール』」に代表される、攻守の切り替えの速さ、敵陣にボールを運ぶ速さを重視するトレンドがある。

 勿論そういうトレンドは既にサッカー界にも来ていて、例えば、Jリーグでもご存知の通り湘南とかはそういうサッカーを既に見せている。

 今回山雅が取り組んでいるオフェンスもそんな流れにある。バスケのビッグマン相当の「大きいCF」のポスト狙いのサッカーから、スモールボールよろしく「アタッカーが周囲と連動して運び、狙う」サッカー。

●やや余談…テクノロジーが支える戦術変化

 ちなみに、こういうトレンドは、膨大な量のゲームデータを処理して、選手や戦術の研究や解析を行うテクノロジーの進化が一役買っている。

 Jリーグでもご存知の通り昨季から選手別の走行距離やスプリント数などのトラッキングデータを公開しているが、今や「ゲームデータ処理の本家」とも言えるアメフット(NFL)だけでなく、いろいろなスポーツで、トラッキングデータ他のゲームデータをもとに、選手の長所短所や戦術の長所短所に向き合い、自軍の戦術に反映させる場面が増えている。

 ノートPCやタブレッド端末は普通に(各競技のルールの制限内で)自軍のベンチあるいはアナライザー(分析スタッフ)の手元にあり、ミーティングルームにはオーバーヘッドプロジェクター等で大きく拡大された画像が用意されている。山雅でも、メインスポンサーとしてお馴染みのEPSONのプロジェクターが活躍している

●岩上移籍は大きな喪失ではない…キーマンはウィリアンス

 そんな変化の中で、今季一体どんな選手が使われるのかが気になるところ。昨季からレギュラー級ではインサイドハーフ岩上祐三(→大宮)とGK村山智彦(→湘南)が抜けたが、正直な話、大きな喪失ではないと考える。

 「いや、岩上のセットプレーやロングスローは脅威だったよ」という向きもあろう。でも、昨季アメブロでも夏の柏戦の記事で指摘した通りで、インサイドハーフ岩上は正直守備が不安定でよろしくないし、攻守の切り替えからのビルドアップも、工藤浩平のそれと比較すると辛いモノがあった。

 その上、岩上抜きだった天皇杯(特に湘南戦)やJ1最終節横浜FM戦が結構良かっただけに、その辺のイメージで今季を考えれば、岩上の存在はマストとは言い難いもの。

 では今季の注目株は?となると、まずウィリアンスの名前は出しておきたい。清水J-STEPキャンプでも2トップの左に入り、再三左サイドからスピードがある良い突破を見せていたので、旧知の(アメリカミネイロ時代の同僚でもあった)オビナとのコンビに期待したいところ。

 どれだけ周囲がいい縦パスを供給できるかがポイントになる。シュート力は十分だし、突破時の加速が素晴らしいので是非TVやスタジアムでご堪能頂ければと思う。昨季にちょっと顔を出したディシプリン的な未熟さ(カッとなるとついついラフプレーが入る)や、昨季オビナが苦しんだ相手のオフサイドラインが克服できれば相当やれるはず。

●「信州のマルキージオ」となれるか宮阪政樹

 その「パスの供給元」として期待される宮阪については、アンカーというポジションから「守備重視?」「ピルロ風?」等々言われてはいるが、雰囲気としてはピルロというよりは同じ(反町監督が好きな)ユベントスでも「走力(耐久力や持久力)と戦術理解度の高い」マルキージオ的という印象。

 昨季の山雅のような守備一辺倒ではなく、時にはトップ下的な高い位置でパサーになったりなどなかなかの神出鬼没ぶり。この辺は昨季の岩間雄大には全く無かった要素なので期待したい。

 但しまだアンカーや3センターには不慣れな様子も見えたので、この辺に関してはGWのセレッソ戦(5/3@アルウィン)ぐらいまでに100%近く仕上がればよいかなと思っている。

 ちなみに清水J-STEPキャンプのTM藤枝戦では、彼の武器でもある直接FKをしっかり決めている。球質は岩上祐三のそれとは違って良いカーブが掛かる中村俊輔風味。恐らく狙い通りのコースに蹴れればGKはほぼノーチャンスだ。

●懸念の左サイドには那須川将大がいた

 実は、今季の山雅の編成の段階で「左サイドどうするんだろ?」という懸念を個人的には持っていた。但しどうやらそれは懸念ではなかったようだ。

 そう書かざるをえない程那須川がいい。なかなかJには3バックの左ワイドでスーパーな日本人が少なく、攻守ともに高い水準でバランスがいい左ワイドは柏好文(広島)と山岸智(広島→大分)ぐらいしかいない(山岸ファンとしての身びいきは承知している)のだが、その中に那須川が名前を連ねそうな勢いでいい。

 守備はCB経験もあって安定感はあるし、攻撃はサイドアタックは勿論いいし、インサイドへのカットインもいい。シュートのパンチ力もあるし、クロスも悪くない。もともとFKやCKを蹴れる資質はある選手だけに期待したい。那須川に目処が立つと、このポジションの候補だった安藤淳(キャンプでは別メニューだったようだが)をインサイドで使うことも可能になる。

●その他新戦力…ルーキー前田大然は恐らく出てくる

 この他で注目選手を挙げておきたい。

 まずは丸坊主の高卒ルーキー前田大然だ。本人は大久保嘉人(川崎)や岡崎慎司(レスターシティ)が目標というが、タイプとしては石原直樹(浦和)ではないだろうか。ジャンプ力もあるしプレーが強気で、つぶれ役もこなせそうだし、シュートのパンチ力は高卒の18歳とは思えぬ良さがある。

 反町監督も使う方向で考えてるようで、十分ベンチ入りの可能性があるし、春のうちにJデビューする可能性は十分ある。高卒ルーキー共通の懸念としてフィジカル面が気になるが、見た限り体幹は18歳らしからぬものがありそう。

 忘れてはいけないGK「ダン」ことシュミット・ダニエル。サイズの良さを活かしたクロス対応とセーブはさすが。但し清水J-STEPキャンプではそこまで厳しい局面も少なく、本領発揮はリーグ開幕後(よりによって第1節は古巣熊本戦)ではないだろうか。従ってこの段階で語れる要素も少ない。

 武井択也は清水J-STEPキャンプでは控え扱いで、まだまだ山雅での自分を模索している印象だったが、もともと攻守ともに非凡なものはある選手。場合によっては彼をアンカーに据え、宮阪をインサイドハーフに一段上げるのも手かもしれない。岩間雄大が別メニューで仕上がりが遅れるのなら、彼のベンチ入りも早いのでは。

 當間建文安川有は清水J-STEPキャンプではまだ山雅の3バックとしては戸惑いがある印象。酒井隆介との競争はあるが、頑張ってほしい。その他の選手もまだまだフィットしてるとは言い難く苦労はあるかと思うが、反町監督はしっかり練習から各選手を見ている。まずは公式戦直後慣例のTMでアピールしたい。

 最後に山本大貴について。勿論2014年昇格メンバーではあり期待はしているが、ウィリアンスが切れ味抜群な分、少し物足りなさもある。当然スタメンがなくてもベンチ入りはあるだろう。縦への速さは彼もいいものがあるだけに、競争を期待したい。

●熊本戦含めた最初の4試合の展望

 プレシーズンマッチを見る限り熊本の調子はいい。但し攻守ともによく整備されているかと言われればそこまでの深みはなく、まだ未知数ではある。横浜FCは残念ながら見る機会がなかったので第1節を見てからになる。

 清水もプレシーズンマッチはそこそこの出来。但しここは主軸ふたり(CB角田誠とCFチョン・テセ)が負傷離脱。特にテセの離脱は響くのでは。あと、小林監督の1年目は尻上がりによくなる反面、春は過去もあまり良くない点は考慮しておきたい。

 ジェフは絶好調で442のオーソドックスなゾーン守備にもチャレンジしてる様子があるが、それにしては山雅時代ゾーン守備がお世辞にも上手じゃなかった多々良敦斗がSBにいたり、逆にゾーン守備を栃木時代に松田浩さんにしっかり教わっている大久保裕樹が別メニュー等、気になる面もあるので、ここも様子は見たい。

 最後に、今季は2013年以前の「春はお世辞にもいいとはいえない山雅」に戻るであろうことを指摘しておきたい。いかんせん攻撃面は再構築中で、守備はベースになるものはあるにせよ、人は多少入れ替わる以上、すんなり勝てるとは思えない。

 幸いにも今季のJ2は大本命が不在。前評判のいいセレッソも、2014年に(そこそこの面子が揃っていた上に堅守速攻型という意味では監督に合ってたはずの)大宮アルディージャを「盛大にぶっ壊した」大熊サッカーである以上、年間を通して安定する予想は非常にしにくい。

 山雅は、いかにこの「乱戦のJ2」をサバイブして、プレーオフ圏内を目指すかが今季の目標となる。今季は地元紙報道を見る限りでは人件費は昨季と大きく変わらないものの、予算は昨季同様の16〜17億円(昨季は当初予算は同様の16億円規模だったが最終的な決算段階では20億超)と聞く。その予算の中で、夏の移籍ウィンドウを含めてどうチームを仕上げ、秋に勝負できる位置にいるかが肝要。

 ということで、今季もここnoteでお付き合い頂ければ幸いである。

 追記:iPhoneアプリで校正(修正)するとたまに一文ぬるっと消えたりする模様。逐次PCブラウザで修正するも、おかしな部分があった場合は、多分にエラーと思われるのでお待ち頂ければ幸い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?