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「(昼)+恵方巻き」=手強い

「あーっ!遅かったかー!」
営業から戻ってきたAさんは
パンパンのビニール袋を両手に持っていた。

12時30分。
申し訳ないが同僚と私は思いっきり昼食中だった。

節分だからと社長が社員分買って下さった恵方巻き。
マグロやエビ、穴子も…いろいろと入っている。
ひと言で言うと極上の海鮮巻き。
見た事はあるけど私は拝むだけの、あれだ。
恵方巻き以上の恵方巻きだ。

「美味しそう!」
気にはなるが今はお腹に入らない。
ありがたく持って帰ることにした。

突然、社長がおもむろにパックを2つ開けた。
ひとつをAさんへ渡した。

「方角、こっちでよかったかな?
ご利益があるように黙って一気に食べよう!」

いきなり始まる謎の神事(違
そういえば、Aさんと話していた時、
その後、社長が少し遅れて戻られた時、
2人から中華屋さんの同じ匂いがしていたのは
気のせいだろうか。

恵方巻きを持ち胸を張って無言で食べている2人。
なんだろう、長さがあまり変わらない。
恵方巻き以上の恵方巻きは手強い。

そしてなぜか私達の視界にバッチリ入っている。
私達もお昼ご飯の続きをいただいた。
無言で。ちょっと笑いをこらえて。
だってなんだかシュールなんだもの。

元気だった頃の社長の無茶振りをこの時期になると思い出す。
会社にいるのが長過ぎたせいか、社長ネタはつきない。

社長は天国へ。
空の上でも節分があればいいのに。
あ、節目はなくなるのか。

Aさんも今はいない。
ただし、恵方巻きの一件が理由ではない。

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