見出し画像

【本】『おおきな木』を「今」だから読む

久しぶりの本の話です。

昨年末、サマリーポケットに預けていた本をすべて引きあげてきました。

公式のサイトはこちら。


 預けていた本の中に、「おおきな木」が入っていました。

 ああ、懐かしいな。

 こんなにいい作品 何で教科書から無くなったんだろう。

 かなり昔の教科書(自分が新卒だった頃だったと思う)に載っていたお話で、覚えている人も多いのではないでしょうか。

 最近、noteでも、紹介されることが多い1冊です。

 書評などでも、再び注目されているのかな、と感じます。

 シルヴァスタインの絵本は、子供向け、というよりも 大人向けの作品として紹介されることが多いですが、英文はとても平易で読みやすいものです。

  絵本ではありますが、絵本らしくない。

 白黒のモノトーンだったり、緑、赤など、単色をちょっと使っているような挿絵も印象的です。

 作者のシルヴァスタイン、どんな人だろう?と写真を見ると、想像を超えるようなマッチョな感じで驚いたことを覚えています。

画像1




 英語の教科書に載っていた『おおきな木』ですが、私が持っている本は、ほんだきいちろうさんが日本語訳をしている本でした。

 今手に入るのは、村上春樹さんの新訳になります。

 英語の原書も比較的簡単に手に入ります。


 りんごの木と、少年の話が最後まで続くお話です。

 りんごの木は、ひたすら少年の要求に答え続けます。

「求める者」と「与える者」の立場が入れ替わることは、最後までありませんでした。

 歳を重ね、老いていく少年。

 与えることで喜びを感じ続けるりんごの木。

 少年は、年を追うごとに、利己的になっていきます。

 そして、りんごの木は、最期に自分自身の体までを少年に与えます。


 この救いようのないラストに、中学生は呆然とします。

 その意味を、彼らは理解できませんでした。

自分を犠牲にしてまで、与える必要はあるのか?

 それが、愛というものなのか、

 そもそも、愛とは何なのか。

 答えのないまま放り出された感じ。

 そして、大人になって再読して、

 そのたびに 答えがわかっていく。

 そんな一冊です。


 子どもでも、大人でも簡単に読める英文であるにも関わらず、

どんな解釈の仕方もできる 不思議な物語だなと思います。

 読み手の年代や、人生経験や、いろいろなフィルターを通すことに   よって、見え方が違ってくる、プリズムのような絵本。

 「無償の愛」が、与えるものに何をもたらすのか。

 与えられるものに、何をもたらすのか。

 現代であれば、地球と人類 という見方もできてしまうのかもしれません。

 そんなこと、20年前には、思いもしなかったのに。


 今、再びオミクロン株の脅威におののき、

  疑心暗鬼に囚われてしまいそうな私達が、

  もう一度 人間としての温かな感情を取り戻すために

  必要としている「気付き」を

  今、この本は、私たちに与えてくれると

  思うのです。




#おすすめの本 #英語絵本 #おすすめ絵本


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,460件

サポートありがとうございます。頂いたサポートは、地元の小さな本屋さんや、そこを応援する地元のお店をサポートするために、活用させていただきます!