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何を残したいのか

人の命は、儚い。
突然の訃報を聞くたびに、
考え直すことがある。

明日自分が死ぬかもしれないと思ったら、
今日何をする?

何を残したいのか。

人生の断捨離を考える。

何を残したいのか。

物は消耗品。
壊れない物は無い。
永遠の命というものも無い。

残したいものは、人から取ったり取られたりしない物。
人の心に宿る、温かさ、思い出、感動、経験、みたいなもの。

定年退職後にサックスを始めた、
大人のプエトルコ出身の生徒さん。
16年以上も教えていたけれど、
認知症になって車が運転できないから
レッスンに来られないと言って早数ヶ月。

今日久しぶりに電話があり、
サックスのレッスンを再開したいという。
すごく明るい声で、
「全部忘れちゃってると思うから、よろしくね」
やっと認知症を受け入れたようだ。
私が訪問レッスンをすることになった。

彼はその16年間のうち、認知症の奥様を10年近く看病して看取っている。
認知症のエキスパートだ。
「薬局の駐車場から家に帰れなくなった」と、
本人が認知症を自認して、
動揺した声で電話してきた時の事は忘れられない。

音楽家を育てるのも音楽家。
音楽の文化を伝えるのも音楽家。
音楽の感動を伝えるのも音楽家。
音楽の喜びを伝えるのも音楽家。

それが伝わる相手によって生かされる音楽家。

飾ってあるクリスマスツリーを見た生徒に頼まれて、
レッスンの合間にクリスマスソングを弾いてみた。
(手首、相変わらず痛いので、そーっと)

そしたら、双子たちは楽しそうに踊っていた。

何を残したいのか。
誰に残したいのか。

ツリーのオーナメントを集めていた頃は、
娘たちに残したいと思っていた。
いつの間にか、そんなこだわりすら無くなっていた。









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