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観てきた!特別展「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」at 江戸東京博物館

気にはなるけど、観に行くつもりはなかった、この展覧会。
もしそのまま行ってなければ、この先も知らずにいたかもしれない、日本各地で活躍した方々を何人も知ることができました。
残念ながら、東京での会期はなんと!明日21日(日)まで。
ですが、巡回先やWEB、図録でぜひ、35人の魅力的な絵師の作品に出会ってみてください。

場所:江戸東京博物館(東京・両国)
会期:2020年6月2日(火)~6月21日(日) 
時間:9:30~17:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館:月曜
観覧料:一般1,400円、大学・専門学校生1,120円
    小学生(都内)・中学生(都外)・高校生・65歳以上700円

今後の巡回予定:
山口県立美術館 2020年7月7日(火)~8月30日(日)
あべのハルカス美術館 2020年9月12日(土)~11月8日(日)


◎いつでもお家で楽しめる!ニコニコ美術館へどうぞ

どうやっても会場に行けない・・・という方、落ち込まないでください。
そうです、我らがニコニコ美術館で、なんと無料で楽しめます。太っ腹!
しかも展覧会を監修した安村さんの解説つきで!!!
わたしも、図録を片手に再び楽しみます~。

図録が欲しいという方、ネットで買えますよ~


◎観に行こうと思ったきっかけ

本当になんとなーく、です。
美術館中継&解説番組『ニコニコ美術館』でも中継してたし、気づけば東京はもう会期が終わっちゃうし、ほんとに行かなくてもいいのかなぁ・・・と、特設サイト内の出品リストをよくよく確認したところ、
むむむ!これ行かないと後悔する!!!と、慌てて両国へ走りました。

◎どんな展覧会?

江戸時代には、従来の常識を打ち破り、斬新で個性的な表現に挑んだ「奇才」と呼ぶべき絵師たちが、全国で活躍していました。
昨今注目を集める伊藤若冲、長澤蘆雪、曾我蕭白、歌川国芳ら、過激で強烈な個性を放つ絵師にとどまらず、従来の江戸絵画史において"主流派"として語られてきた、俵屋宗達や尾形光琳、円山応挙らも新しい表現に挑み続けています。

本展では、北は北海道から南は九州まで、全国から35人の奇才絵師を集め、その個性溢れる作品を選りすぐり紹介します。(公式サイトより)

会場に入るとすぐにこんな日本地図が。(公式サイトで観られます

FireShot Capture 132 - 絵師紹介 | 特別展「奇才 -江戸絵画の冒険者たち-」 - kisai2020.jp

そうなのです、この展覧会の最大の特長は、時系列ではなく地域別に、35人もの個性的な作家の作品を一堂に鑑賞できること。
これを見ると、幕府は江戸に置かれてましたが、京で活躍した作家も多いことが良く分かりますよね。また、全国各地それぞれの地にも個性的な作家が何人もいたことが分かります。

こういう構成は、今まであるようでなかった切り口かな、と思いました。
自分の地元から出た人だ、とか、この地域の人だったんだ、とか、日本美術初心者でも身近に感じやすいのでは?

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なお、展覧会のタイトル「奇才」と聞くと、ついつい、昨年大人気だった展覧会「奇想の系譜展」を思い出してしまいますが、作品のラインナップを監修されたのは、長野・小布施にある「北斎館」館長の安村敏信さんです。

この「北斎館」に収蔵されている、葛飾北斎が小布施で描いた貴重な作品や、北斎を小布施に招いたという作家の作品も展示されるなど、安村さんならでは、の人選・作品群となっているようでした。


◎好きな作品・絵師の方々が揃いぶみ♪

35人の絵師の中には、個人的に好きな作品・作家がいくつもありました。
改めてスルーしなくて本当に良かった・・・
ここからはごくごく個人的な感想&おすすめのコメント集です。

●伊藤若冲 ≪鶏図押絵貼屏風≫
大好きなのです、この作品の鶏とひよこの表情!動き!かわいすぎる!!!

昨年の「奇想の系譜展」の準備の際に、新たに発見されたという作品。ここで実物を再び鑑賞でき嬉しかったです。

●円山応挙 ≪行水美人図≫
シンプルな線で描かれてるのに、なまめかしくて美しい・・・!
素敵な作品です。

●長沢蘆雪 ≪寒山拾得図≫
ゆるい!笑ってしまうほどのゆるさ!!!
≪寒山拾得図≫とは、有名な二人の僧を描いた定番の絵画で、狩野山雪が描いたバージョンも会場に展示されてます。ぜひ比較して、蘆雪版のゆるさに笑っていただきたいです。
あと、表具が本当に素敵です。ぜひ図録に表具ごと載せてほしかった・・・
依頼主、センスいいなぁ、と。目に焼き付けてきました。

●河鍋暁斎
ここまで小さいサイズの暁斎の作品は、初めて観ました。小さいのに、とにかく細かくてすごいユーモラスな描き方。くすっと笑ってしまいました。


◎初めて観た・知った作家がたくさん!

●墨江武禅 (すみえ ぶぜん)
大坂で船頭の仕事をしながら絵を描いていたという方。
洋画っぽい感じが素敵でした。

●加藤信清 (かとう  のぶきよ)
江戸の武士でありながら、信仰心が強いあまり、最終的になんとお経で仏画を描いた方。
解説文を読んで、じーっと絵を観てもよくわからず・・・作品を拡大したパネルをまじまじ観て、えー!っと驚愕しました。文字絵、すごいですよ…
妻子から離れて一人こもり、五百羅漢図を仕上げた、とか、なかなかのエピソードです・・・

●高井鴻山 (たかい こうざん)
地元のために、80代の北斎を長野・小布施に呼んだのがこの方。いいお金の遣い方ですよね。
裕福な一族の方で、自身も京などでいろんな先生について、絵だけでなくさまざまな文化教養を学んだようです。そして描く絵がまためちゃくちゃ上手い。
しかも、花鳥画を写実的に描けるスキルを持ちながらも、歳を重ねるにつれて、岩山が妖怪に見えてきたから、と、だいぶゆるめに描かれた妖怪がたくさん出てくる作品をいくつも残しています。面白すぎる人です。

●狩野(逸見)一信 (かのう(へんみ)かずのぶ)
江戸の方です。五百羅漢図の一部が展示されていましたが、まぁとっても鮮やかに、細かく描かれてます。
保存状態がとても良かったんだろうと思います、本当に色彩が鮮やかでびっくりしました。
しかも描かれた羅漢に皆さんの表情がまた、とっても豊かで面白い!絶対に絵を描くのが大好きで、楽しくて仕方なかったんだろうなぁという印象を持ちました。
この五百羅漢図は、全部で100幅の掛け軸。東京・芝の増上寺が全て所属しているそうで、全部公開!とかってやってるのかなぁ。全部観てみたくなりました。

●菅井梅関 (すがい ばいかん) ≪雪中紅梅図≫
仙台を代表する画家の方。
梅が描かれたお軸は、本当に美しくて見とれてしまうほど素敵でした!!!

●田中訥言 (たなか とつげん) ≪日月図屏風≫
美しい!!!の一言。
尾張の方だそうで、名古屋では有名、とのことですが、知らなかったなぁ…


◎大好きな”ゆる絵”と中村芳中(ほうちゅう)作品群

この方、個人的に本当に好きなんです。
今年3月末頃でしょうか、東京・京橋にある画商「加島美術」さんでの琳派の企画展で、芳中さんの≪托鉢図≫ほか、何点かの作品を初めてみて、一目ぼれしてしまいました。

今回、展覧会に行かなきゃ!と思った一番の理由は、この芳中さんです。

会場では複数点を鑑賞できて、本当に感激しました。巻物に描かれていた鹿のおしりなどは、やっぱり狩野派!そしてあちこちに、たらしこみの技法が。
他の方の邪魔にならないように、展示スペースを何度もうろうろ・・・やっぱり素敵だ!!と一人にやにやしてしまいました。

また、初めて知った方で、大好きになったのが、耳鳥斎(にちょうさい) さん。鬼、かわいすぎ!!!ゆるい!!!
どことなく、高畑勲さんが「かぐや姫の物語」で描いたようなキャラクターたちを思い出しました。
それにしてもかわいかった!図録でも眺めては、にやにやしてしまいます。

また、ゆる絵といえば、安定の仙崖さんの作品も楽しめます。今回展示された作品群もやっぱりゆるめで良かったです。


◎音声ガイドは・・・うーん???

展示点数は約80。絵師は35名なので、一人当たりの作品点数はそれほど多くありません。会場内には、絵師一人ひとりの名・どんな人物かの説明パネルが作品の傍らに大きく置かれていました。
ほぼ全ての作品にも解説文がついています。なので、全部をしっかり読もうとすると、結構時間がかかるかもしれません。

なので、音声ガイド(¥600)をレンタルしてみました。(接客の様子や消毒等、きちんと対策がとられていましたよ)

今回の音声ガイドは、大人気アニメの主役などで活躍する人気男性声優さんが起用され、”古美術の商人が絵師たちにまつわるエピソードを語る”という演出の元で作られていました。
が、正直、残念ながらわたしにはキャラクターの語りの個性が濃すぎて、内容がちゃんと入ってこない、というか、聴き続けづらい、というか・・・
個人的にはちょっと、うーん・・・と思ってしまうもので、非常に残念でした。

わりと音声ガイドを借りて鑑賞することが多いですが、ちょっと聴き続けづらい・・・と思ってしまったのは初めての体験で、少々面食らってしまいました。

大人気の声優さんだと思うので、ファンの方はとても嬉しいと思いますし、初心者に親しみを持って鑑賞してもらうための演出意図だったと思います。

が、個人的には、説明に徹したバージョンもあると嬉しかったかも・・・とも思ってしまいました。
ただ、監修した安村さんの解説がところどころ聴けたのは良かったです。
音声ガイドについては、また別途記事を書きたいなぁと思っています。


◎グッズ&図録は?

図録(¥2,700)、買ってしまいました。3会場で展示される作品と解説がまるっと掲載されているため、さすがのボリュームですが、買って損なし!
いろんな作家別に多くの作品を楽しめますので、ぜひぜひお薦めします。

また細かいのですが、個人的にとても良い!と思ったのが、作品ページのすぐ横に作品の解説コメントがあること!
図録の解説コメントってやや長文なので、だいたいは作品ページではなく、巻末にまとまって載っていることが多いのです。
だから作品ページと解説ページを行ったり来たりするんですよね。それが地味にちょっとだけ面倒くさいっていう・・・。今回の図録はそれをせずに楽しめるのが良かったです。

ちなみに今回、このご時世なので、売り場には自由に手に取れるサンプルが置いてないですが、レジの方にお願いすれば、ぱらぱらと立ち読みできますので、ご安心を。

グッズ売り場は、会場を出た後に。
それほど広くないですが、Tシャツやポストカード、布バッジ、複製画のほか、北斎や狩野派など、さまざまな作家に関する書籍コーナーも充実していました。わたしが持っている芳中さんの書籍も並んでましたよ。



◎まとめ

それにしても、江戸時代の人々の暮らしや心持ちは、文化的にとても豊かだったんだろうだなぁ、と思いました。
こんなにも個性的な作家が全国各地にいた、ということは、その作家たちに絵をオーダーした方々もたくさんいた、ということですからね。ちょっと変わった絵、これまでになかった絵を描く作家たちに、お金を出して応援していたっていう。本当に素敵です!!!

残念ながら、本来の会期は4/25(土)からだったので、1.5ヶ月分臨時休館に。一部作品は展示されずに終わってしまいました。これ、フル開催だったら、通っていたかもしれないです・・・
そういう意味でも、展示されてない作品を全て観ることができる図録は、非常に読みごたえがあっておすすめだと思います。

巡回先の展示も、無事に開催されることを祈っています…ぜひ多くの方に、江戸時代の個性豊かすぎる絵画の世界を楽しんでもらえたら、と思います。

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