なんちゃって役者 いざ稽古突入

これは、なんちゃって役者をしていた時の記録。役者を辞めた後、確かに何も残らない。残らなかったけれど貴重な経験を沢山させていただきました!出会った方達、経験、かけてもらった言葉達、全てに感謝を込めて。ちょっとアングラな世界へようこそ。


※実体験を元に書いておりますが、エンタメ性を高めるために事実よりも盛った内容になっております。
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①『なんちゃって役者 爆誕
②『なんちゃって役者 悪魔の本読み』の続きです!

さて、オーディションに遅刻するわ、本読みでうまく読めないわでいいところを見せられていない私だったが、とうとう稽古に突入する日を迎えたのであった。

キャラクターをどう作ろうか、どの様にセリフを言えば自然に聞こえるだろうか。家で考えてはきたものの、立ち稽古(実際に立って動いてシーンを演じる練習のこと)で見せる為のアイデアや材料はほとんど持ち合わせていなかった。やや重い気持ちで稽古に挑む、私。

しかしここで朗報が入った。
「語尾や言い回しなどは意味が変わってしまわなければ、言いやすい様に変えても良いです。」
なんと嬉しい知らせ!

「私もよ!」→「私も!」
「そんなのおかしいわ!」→「そんなのはおかしい!」
「きっと騙されているんだわ!」→「きっと騙されているんだ!」
「まだなんとかなるはずだわ」→「まだなんとかなるはず」

まあなんと言いやすいことか!
そこから、私はどんどん花開いていき自分らしい完璧なアイドルを演じていったのだ。

・・・と言いたいところなのだが、やはりそう上手くいくはずもなく。

語尾を変えたことにより、どんどんと自分が楽に言い回せる方向に持っていってしまった結果、やはりアイドル感はどんどんと失われていった。確かに、自分の中ではアベンジャーズの一員にでもなったかの如く強いトーンでセリフを発していた気がする。かといって、その時にアベンジャーズの中に放り込まれたら弱っちすぎてものの3秒で吹き飛ばされていたであろうが。

そしてとうとう言われてしまったのだ。
「ドル子が男と化しているから、君は語尾を一ミリたりとも変えずに進めなさい。」

ああ、どうしよう、語尾地獄から逃げられると思ったのにむしろ以前より深くハマってしまった。一ミリも逃げられなくなった。もちろん、脚本家さんの書いたものを変えないと言うのは極々当たり前なのだが。

その時は気が付かなかったが、私は一つできないことや気になることがあると、そこから抜け出せなくなってしまう性質を持っているようだ。この語尾問題は思いの外、自分の中で大事になっていった。

言葉に関してはもう一つ謎の現象が起こった。私は生まれも育ちも日本であり、学校も全て日本語だった為、読み書きや漢字、言葉などは何ら問題なく理解できるし使いこなせる。その為、台本を読むにあたって言語に差し支えが出ると言うことはないはずであった。しかし、何故だか声に出して読もうとすると謎の訛りが乗っかったのだ。

外国人風の訛りであれば、ああ、カナダから帰ってきた人だからね、家で英語も喋るからね、それで説明できたかもしれない。でも、田舎のおばあちゃんの家に帰った時に聞くいわゆる「だっぺ」「だべ」調の訛りである。

「お金取られたんば、おめえのせいでねぇの?」の音階で
「お金を取られたのは自分のせいよ。」と言う始末。

な、、、なんでなのだ、自分!!??何が起こっているのだ!?

キャラクター作りもだいぶ苦戦した。これはどちらかと言うと恥ずかしさがどうしても取っ払えなかった。ぶりっ子っぽく?可愛く?フリフリのスカートを着ているイメージで?髪ゴムにちっこいリボンがついているだけでも小っ恥ずかしくてしょうがないのに、無理無理無理無理!!!!

アイドルはアイドルでも、可愛くない系のアイドルにできないだろうかと考えたが、そもそもそんな奴がアイドルを果たして目指すだろうか。

稽古はどんどん進んでいくのに、キャラも言葉も固まらずいたずらに時間だけが過ぎていった。焦り始めるも、焦ったら焦った分だけ空回る私。

こんな状態の私をみた演出家はそこで決めたそうだ。徹底的に細かく直していく事もそうだが、奈緒美が何をやろうとも、絶対に褒める事をせず、尻を叩こう。少しでも褒めたら、悪い癖、できていない部分を修正しなくなっていってしまうだろう。だから、徹底的にできない所を洗い出せ。もがけ苦しんで、さっさと解き明かせ、このヘタレが、と言われている様であった。

確かに褒め言葉はなかった。私に対するダメ出しは、基本的には言葉が使いこなせていない事、全てに対して力が発揮できていないこと、全てが嘘っぽいということ、が主であった。

毎度毎度、稽古の後はとにかく自分を責めた。何でできないのだろうか。他の演者さんは難なくこなしている事を、私は何一つできない。私がいない方がこの作品は面白くなるのではないか・・・。

ある朝、稽古に向かうための電車がホームに滑り込んだ時に、ふと思った。
・・・電車に乗るのをやめようかな・・・。

さあ、どうする!?稽古をバックれるのか!?へっぽこ役者、なおみん!
To be continued!

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