なんちゃって役者 爆誕

これは、なんちゃって役者をしていた時の記録。役者を辞めた後、確かに何も残らない。残らなかったけれど貴重な経験を沢山させていただきました!出会った方達、経験、かけてもらった言葉達、全てに感謝を込めて。ちょっとアングラな世界へようこそ。
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自分のことを元役者というにはあまりにもおこがましい気がするので、「以前はどんなお仕事をされていたのですか?」と聞かれた際には、なんちゃって役者をしておりました、と答えるようにしている。

本格的に役者をしていました、というには大した仕事はしていないが、それなりの期間は活動していた。しかし、「役者だったんですが、全然売れなかったんですよね・・・」というと相手は十中八九返答に困る。そこで、考えたのが「なんちゃって役者」である。出来るだけ明るいトーンで、「いやぁ、なんちゃって役者やってたんですよ!大した事はしなかったけれど、楽しかったなぁ!」というと、相手も安心して話ができるというものだ。

さて、初めて日本で舞台に立たせていただいた時、私は21歳であった。海外の短大を出て完全に外国人かぶれな感じをプンプン匂わせていた私に怖いものはなかった。単身で海外に行き、向こうでの演技経験を引っ提げた私の自信は、表面張力のおかげで溢れそうで溢れないコップの水のようになみなみであった。

早速オーディションサイトを通して応募し、主宰の方と会う約束をした。その時はオーディション会場で実技披露するというものではなく、カフェで面接の様な形式でお話をするというものであった。

面接当日は、新宿アルタ前で会う約束となった。

この、新宿アルタ前・・・。私は生きてこのかたずっと東京や神奈川あたりに住んできたので、新宿はそれなりに馴染みはあったし、新宿アルタ前という場所名は幾度となく聞いたことがあった。何より有名な所が故に、駅にいけば表示が至る所にあるだろう、当たり前の様にそう思ってしまった。しかしこれが大きな間違いになるとは露知らず・・・。

早めに新宿に着いた私は、東口を出た所にあるおしゃれなアパレルが並ぶそこを見つけ、無事に辿り着けた事に安堵し、何を話すのだろうかと色々思考を巡らせながら待った。

そして、待ち合わせ時間はやってきた。しかし、待てども暮らせども主宰の方は現れず・・・。

あれ、遅れてらっしゃるのかな?そう思いながら引き続き待っていたら、電話が鳴る。

「あれ、今日お会いする予定ですよね?今新宿にいらしゃいます?」なんて恐ろしい事を言ってくるわけだ。
私「あの・・・すでにアルタ前に到着しているのですが・・・。」
主宰「僕も着いているのですが・・・。今日どんなものを着てらっしゃいます?他には何が見えます?」
私「〇〇コンビニがありますね。」
主宰「あ、それ多分アルタ前じゃないですね・・・。」
・・・えええええええ???!!!と内心叫びながら恐る恐る自分の立っている頭上を見上げると「LUMINE」の文字が。

心の中で「あ」に濁点をつけて叫ぶ私。ごめんなさい、間違えました、今すぐ行きます、と言いながら、電話口で誘導してもらい何とか最終的には無事に出会うことができた。

新宿を知らない方のために説明をしておくと、新宿アルタは東口にはあるものの、地下改札を出てさらに階段を上がると徒歩2〜3分ほどのところにそびえ立っている。そう、新宿駅から徒歩2〜3分。隣接はしていないのだ。

無事に会えたものの、時間通りに辿り着けなかったのできっと落とされるであろう。そう思っていたが、なんと程なくして合格の連絡が来たのだった。

さて、最悪のスタートを切った私の運命やいかに。
To Be Continued!

ちなみに後ほど聞いた話だが、この新宿アルタ前に辿り着けなかった、という事が逆に合格の決め手になったそうな。なんじゃそりゃ!な話だが、それだけバカならば芝居に対しても変なクセもなく素直に聞いてくれるだろうと考えたそうだ。

クセ強くなく・・・ね・・・。
バカね・・・。
失礼な・・・!!!(笑)


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