なんちゃって役者 悪魔の本読み

これは、なんちゃって役者をしていた時の記録。役者を辞めた後、確かに何も残らない。残らなかったけれど貴重な経験を沢山させていただきました!出会った方達、経験、かけてもらった言葉達、全てに感謝を込めて。ちょっとアングラな世界へようこそ。


※実体験を元に書いておりますが、エンタメ性を高めるために事実よりも盛った内容になっております。
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前回、『なんちゃって役者 爆誕』の続きです!

役者として初めてお世話になった劇団、その名も「劇団 飛べ飛べブラザーズ」!!
いや、実際はこんなダサい劇団名ではないが、そこはお名前を伏せさせてもらう。実際の劇団名には掠りもしないような仮名なので悪しからず・・・。

舞台稽古の初日は、多くの場合は四角に机を並べその周りに座り、自己紹介、そして配役発表の後、配られた台本をみんなで読み合わせるというのが常の流れである。中には稽古を進めながら本を書く脚本家さんもいらっしゃるので、初日にはまだ台本は完成していない場合もあるが、それでも最初の数ページを渡され、そこから進めていくものである。

その時は台本はすでに完成されており、自分の役のセリフを読んでいく事となった。

ストーリーとしては、詐欺にあった被害者達がホテルの一室に集まって詐欺師への復讐を計画するが色々と困難が降りかかり、あらぬ展開が彼らを待ち受けている、というドタバタコメディものであった。

役は以下の通りである。

リストラされ、借金まみれの男性:カリオ(45歳)
理由はわからないが騙された男性:なぞ太郎(38歳)
妹が詐欺師に騙された為、復讐をしたい女性:フクコ(28歳)
地下アイドルをしており、活動資金を騙し取られた女性:ドル子(20歳)
へそくりを騙し取られた近所の主婦:シュフミ(50歳)
ホテルマン:ホテ郎(30歳)
乱入してくるオタク:オタッくん(40歳)
詐欺師の女:サギミネコ(年齢不詳)

8人で織りなされる話であった。もちろん役名はこんなヘンテコリンなものではなく実際に日本名としておかしくないものであるが、ここでは便宜上、上記のように命名させてもらう。

さて、私の役はというと地下アイドルのドル子役が充てられた。

アイドル・・・

アイドル・・・・・

正直に言って不安しかなかった。

それは何故ならば私自身が、アイドルとはかけ離れた人種だからである。楽しくもないのに、ああ、この上ない幸せ!!!!!!という様な笑顔を貼り付け、「どんなに辛い事があっても皆さんのおかげで乗り越えられます!」と豪語し、一番肝心な「しかし頑張れるのは、お金を落としてもらった時です♡」という裏をサラリと含ませる。それを、どこかのお偉方のおじさんの指示の元、恋愛感情をくすぐりながら客の財布の紐を緩めてチャリンチャリン引き出させる。そんなのは果たして表現と言えるのか、どこにアート性が含まれているのかと、当時のひねくれた私は思っていたのである。

今も、何もアイドルを好きになった訳ではないが、商品として成り立つ理由はわかるし、それ以前にアイドルという存在に救われている方が大勢いるのもわかる。ダークな大人の事情が渦巻いてしまっている現状を除けば、「あり」な商売だろう。ダークな部分が存在するのは、何もアイドル業界に限ったことではないが・・・。しかし、当時の私は受け入れる事ができず、とにかくアイドルに対して苦手意識を強く持っていた。

当時の私はミラ・ジョヴォヴィッチやアンジェリーナ・ジョリーの、華麗に世界を救うカッコいい様に憧れている様な女であった。実際の私はそんなに強さを体現した様な人間ではなかったものの、いわゆる守ってあげたいような可愛さは持ち合わせていなかったと思うのだが、主宰の方は私に何を見たのだろうか。さあ、困った。初っ端から自分とは180度違うものを求められたのは予想外であった。

そして本読みが始まった。ここで第二の難関が私を待ち受けていた。

「私も騙されたのよ。」
「悔しくてしょうがないわ!」
「どうすればいいのよ。」
・・・語尾がお年を召されたマダムの言葉というか、おねえ言葉というか。

この語尾の処理は本当に悩んだ。ちなみに稽古中もずっと処理ができずに怒られまくったのであった。だってそんな喋り方をするのは60年代の映画の中の女性達か、オネエだけでしょ!!???モノに出来ない私の力不足であり自分の出来なさを台本のせいにしているだけなのか?いや、しかし、今考えてもそんな喋り方は絶対にしない!少なくとも若いアイドルは!・・・え、違うかな・・・。小心者なのは今も昔も変わらないのだ。(←偉そうにいうな。)

本読みが終わった時の空気は心なしか重かった。

この時の私は知らなかった。この現場が如何に、いばらだらけの、チャレンジだらけの、むず痒いだらけの、挫折だらけのものになることを・・・!!

だらけが多いな。笑
To be continued!

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