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学校⇄家という生活の中で疲弊する高校生たち

私が新任教諭として勤務していた高等学校は比較的落ち着いている学校としても知られ、学力は進学校とまではいかなくとも、熱心に勉強する生徒も多く、部活動の入部率は97%という学校でした。

1つ前の記事でも書いたように、私は17時以降は職場に残り、指導書を読んだり、採点をしたり、授業を改善したり...と、毎日を過ごしていました。
よって、私の平日の生活は相当の確率で"職場⇄家"だったように思います。

しかし、時には友達と食事に出かけたり、週末はレジャーを楽しんだり、朝まで飲み明かしたり...と、年齢相応の時間を過ごしていました。

授業をしていれば様々な生徒がいて、その生徒たちの様子が日々変化していることに気付きます。
「今日は眠いのかな」とか、
「今日はえらく落ち着きがないな...」とか、
「すごく元気だな、何か良いことあったのか?」とか...

授業中は誰も眠くならないような授業を考えていた私ですが、
それでも眠くなってしまう生徒はいました。

そして、その生徒に一度どんな生活をしているのかを聞いてみたのです。

「朝練があるので、6時に起きて7時には学校に着いて。朝練してから授業です。昼ごはんのあとは昼練があるので、昼休みも体育館行ってます。学校終わったら部活なんで、学校出るのは19時くらいですかね。それから家帰って20時前とかで、夜ご飯食べて宿題とか提出物とかして。週末は練習試合とかあるんで、土日両方部活です。宿題とかあるときついっす。遊べないんで」

え、ちょっと待って。
全然休んでないやん......えーーーーーー!!??!??!?!

私はこの話を聞いた日を境に、宿題や提出物をしてこない生徒、
特に、熱心に部活動をしている生徒を指導することをためらうようになりました。

...だって、誰もがスーパーマンにはなれないのだから。

生徒は学校と家庭の間でこんなに疲弊している。
これに塾へ通っている生徒もいたりするわけです。

これだけ書くと、部活動自体が"悪"のように聞こえるかもしれませんが。
私は問題はそこではないと考えています。

ここで問題なのは、生徒自身が主体的に決めているか。という点。
つまり、自分で選択してその高校生活を生きているか。ということです。

最初の段階で必ず何かの部活に入れと言われたから
途中で辞めると言えば顧問が怖いから
親にも部活には入れと言われたから
みんな部活に入っているから
部活がなかったらやることがないから

こういった思考停止の中で部活動に参加することを選んでいる、
もしくは思考停止になるような発言を周囲の大人から受け、
半ば強制的に、そうすることが当たり前だという価値観に操作されて部活動に参加している。

彼らの思考停止の原因は周囲の大人にあるのではないか...
しかも、日本のような"周囲を気にする文化"の中で、
「みんながやっているから」という言葉文句は思春期の子どもたちの心には刺さります。
しかし、だからこそそれは使ってはいけない言葉。

言葉巧みに子どもを思考停止に陥れている大人もいるのではないか。
そんな風に思うのでした。

実際のところ、こんな声も聞きます。
「部活がなかったら家でダラダラするので、そんなくらいなら部活に行って汗を流し、協調性や上下関係を学んで欲しい」

.....学校に全部任せて、本当にそれで良いと思いますか?
あなたの保護者としての教育理念や責任、努力はどこに.....

正直、この時期に奪った主体性は後々の人生に響くと考えています。
日本の高校生は精神的な成熟があまりみられません。
それは、思考停止に陥り、"自分で決める"という訓練の機会を周囲の大人によって奪われ続けてきたからだと私は考えています。

"自分で決める"という行為は、後に"自分の行為に責任を取る"ということにも繋がります。
要するに、思考停止に陥り、自分で決めるという経験がなければ、自分の行為に責任を取るという行為にも繋がらないわけです。

そうすると、自分に都合の悪いことが起きると、責任を転嫁させたり、言い逃れをしたり、言い訳をしながら生きるようになってしまいます。
そこまではいかないとしても、自分の人生の大切な時に、自分で決める人生を歩めなくなっていくのではないかと思うのです。

「生徒に主体性を身につけさせなければいけない」

生徒の現状を把握していく中で私は強く自覚したのでした。
そして、主体性を身につけるための訓練や練習を授業の中に織り交ぜ、それを学力と結び付けていく授業を作ろう。
そんな風に思うのでした。







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