食道がんで闘病中の楽天在籍経済評論家の"がん保険は不要だ"について。
山﨑元さんが癌に罹患されたというのが昨年?くらいだったと記憶しています。個人的には著書も全て目を通しておりまして、大変勉強になっております。ウィスキーがお好き、ということもお聞きしていまして、勝手に親近感を感じておりました。声を出すのもおつらそうで一刻も早い回復をお祈りしております。
さて、中身ですが詳しくはNewsPicksの本番の動画を見ていただければ幸いですが要約すると
末期食道癌の経験
山崎さんはステージ3から4の食道癌を経験した。標準治療の期間と費用
標準治療では約40日程度の治療期間。抗がん剤治療→入院で済み、医療費は総額約230万円。そのうち160万円は差額ベッド代で、実際の医療費は70万円程度だったことを指摘。高額療養費制度と健康保険組合の支援
医療費も実は安かった/高額療養費制度と東京証券業健康保険組合の付加給付により、実際に支払った医療に対する実費負担は14万~15万円程度だった。がん保険の必要性に疑問
保険会社が多くのCMを通じてがん保険を宣伝していることを指摘し、がん保険は賭けとして参加しない方が得策であるとの見解を示している。保険の本質
保険は稀に起こるが大きな損害をもたらすリスクに備えるためのものとし、がん保険は「不幸の宝くじ」に例える。がん保険に対する見解
がん保険に加入して助かった事例は、「宝くじを買わないと当たらない」と同様の非論理的な選択だと批判。消費者保護問題
がん保険からどれだけの医療費が回されているのかが不透明である点を、消費者保護の問題として指摘。 生命保険業界に対する批判:生命保険業界は「ろくでもない」と強く非難。がん保険に入るかどうかの選択
人生をやり直すとしても、がん保険に加入することは「もちろんNO」と断言。生命保険料の問題
余計な生命保険料は家計において大きなウェイトを占めるとして、問題視。
という内容でした。
私は保険業界に身を置いているのですが、山﨑さんの意見に対して、私の視点からの反論をまとめます。なるべく簡潔にまとめ、冗長的になりがちなデータなどはAppendixとして後ほど。お時間がある方、余裕がある方はどうぞ。
日本におけるがん罹患及び死亡の状況
2019年に新たに診断されたがんの症例は約999,075例であり、日本人の生涯におけるがん罹患率は男性で65.5%、女性で51.2%に上ります。この高い罹患率は、がんリスクに備える重要性を強調します。死亡率も部位によって違ってきますので一概にがん保険が不要、というより保険が不要という結論と短絡的に紐づけることができません。(ただしほとんどが50代以降に発症)食道がんの治療方法と費用
食道がん治療には、内視鏡的切除、手術、放射線治療、化学療法など、複数の治療法が組み合わせられます。これらに加え、入院の際は差額ベッド代を支払うことでプライベートな空間を確保したり、抗がん剤の副作用の倦怠感からタクシーで通院することなど治療中のストレスを軽減する選択が、全体的な自己負担費用が高まることになります。(ちなみに山﨑さんは160万円と支払い額面のおよそ7割を快適に過ごすための費用=必須ではないけど快適さの追求のために支払っています)高額療養費と健康保険組合による支援は収入と所属先により違う
高額療養費制度と健康保険組合による支援は、医療費の負担を軽減します。例えば、東京証券業健康保険組合は手厚い給付を提供していますが、これらの給付内容は自身の組合によって異なるため、個々の状況に合わせた選択が必要です。(後述しますが東京証券業健保組合の付加給付は健保業界の中でも優良!!)公的保険制度と民間保険の役割及び性格と実績
民間保険は公的保険制度を補完する/上乗せする役割であって、損得やリターンを求める金融商品ではありません。先進医療の出現や医療費の高額化に伴い民間保険の需要が増加しており、これにより効果的で良質な治療選択肢を消費者は選べるようになっています。
2022年の生保協会の発表によると、がん保険は近年契約件数が2500万件ほどで落ち着いていますが、医療保険は保障範囲が拡大され高額な入院手術などに対応できるようになったこともあり、4800万件を超え増加傾向です。保険の必要性は個人の状況によって違う。
保険の必要性は、個人の健康状態や経済状況、ライフステージによって異なります。現役で働いている人々や資産形成が十分でない人々にとって、がん保険は重要な安心材料となります。山崎さんは1958年生まれということで65歳であり、既に現役世代とは違い資産形成も終了しているであろうこと、リテラシーが高く金融のプロフェッショナルでありますから、資産も人並み以上であると推察されますし、堀江さんも十分に稼げることから保険による医療費の準備は必要ないと考えられます。それと一緒の状況で考えていいのか?が焦点でしょう。生命保険業界と商品選択
金融リテラシーが高く、既に貯蓄の多い個人にはがん保険が不要かもしれませんが、一般的には多くの人々にとって経済的な補填をできる手段としては重要な選択肢の一つです。健康保険と年金制度である社会保険料も自己負担率は上がっており、結果として手取りが下がり、現在の日本における貯蓄額は低くなっているのが現状です。
また保険商品も日進月歩で改善されており今の医療事情にフィットした商品(機能)とそうでないものがあるので一概に良し悪しは言えません。医療データと商品の支払い事由、約款の情報を整理し、事実を見ながら、商品のスペック、お財布と嗜好、感情(お気持ち)により選択するものでしょう。がん保険の必要性の個別性
がん保険の必要性は、個人の健康状態、経済状況、ライフステージによって大きく異なります。したがって、保険加入の判断はこれらの要因を総合的に考慮し、個々のニーズに合わせて行うべきです。
以上の議論を通じて、がん保険の必要不要は一概に一般論では言えず、個々の状況に応じた慎重な検討が求められます。保険は単なる経済的な補償だけではなく、患者や家族に対する精神的な安心を提供する重要な役割を担っていますのでそれぞれ個別性があるものです。個人的には若くして白血病や大病になる方も一定数いらっしゃり、(治療方針にもよりますが)かかる費用は若ければ若いほど負担感/率が一般的には高く、また死に至る確率も高いのが実際です。経済的な負担が発生した際、自分が稼げなくなることで経済的に困る人がいるかどうか、もしいるなら必要額をヘッジできる手段があるor諦められることができるか?という選択だけ。これも個人の価値観なので一人ひとりが判断すればいいだけ。
というポジションです。
現行の高額療養費制度も数年い一度改悪されていますし
健康保険組合も少子高齢化を背景に財政の悪化が進んでいますのでこのまま継続できるかどうかはわかりません。
保険診療も科目ごとに見直しになるかもしれませんし、国民皆保険についても持続可能性が騒がれているなかで、Youtubeの次のレコメンドがこちらの動画でした。
「がん保険は不要?それってあなたの感想ですよね。」
というコメントが聞こえたような気がしました。
がん治療も進んでいます。生きるための手段が開発された時に、そこには対価が必要となる。健康で人生を豊かに生きる手段として、こういった手段を選べるようにできるための手段が保険にはあると私は思います。
以下からAppendixです。お時間がある方はどうぞ。
1.日本におけるがん罹患及び死亡の状況
まずそもそもがんってどのくらいなってるんだっけというお話。
国立研究開発法人国立がん研究センターのデーターよると、
日本人が一生のうちにがんと診断される確率は(2019年データに基づく)
男性65.5%(2人に1人)
女性51.2%(2人に1人)
日本人ががんで死亡する確率は(2021年のデータに基づく)
男性26.2%(4人に1人)
女性17.7%(6人に1人)
となり、ある意味国民病とも言われるものです。では具体的にどのような癌になるのが多いのでしょう。
2019年ですと
男性 1.前立腺 2.大腸 3.胃 4.肺 5.結腸
女性 1.乳房 2.大腸 3.結腸 4.肺 5.胃
ですね。
10万人あたり毎年どのくらい癌になるか、というと男性1030人程、女性721人ってことで圧倒的に男性の方が罹患率が高いんですね。(多分のべになっているはずですが今回は割愛します)ちなみに10万人とはどのくらい?ということで長野県佐久市か広島県三原市位をイメージしてもらえればいいと思っています。(イメージつかない?)
死亡についてはこちら。
こう見ると、食道癌は珍しい部位ですね。
生存率はこちら
こうみると食道癌は5年で4割、10年で2.4割という、がんの中では死亡率が高い方のがんと言えます。
2.食道がんの医療費はいくらなのか
日本臨床外科学会のサイトに食道がんと診断されたらというサイトがあります。その中で昭和大学病院 食道がんセンター 特任教授 村上雅彦 教授 大塚耕司 のお二人が監修されている記事がこちら。
食道がんは主に男性で60~70代で罹患率がピーク、死亡率80代がピークというのがデータです。がんは遺伝ではなく、生活習慣病と言われ、近年では飲酒は百薬の長から百害あって一利なしとWHOでも広くnoticeされるようになりました。
ここで大きく費用に関連するのが治療方針の決定です。
1.内視鏡的切除、2.手術、3.抗がん剤、4.放射線の4つ
から選択すると思われますが、
国立がんセンターもHPで公開しています。
医療費総額は症状や治療期間によっても違いますが、費用全体としては大きいですね。
3.公的保険と東京証券業健康保険組合について
公的保険制度については金融庁が公的保険ポータルを発表しています。
東京証券業健康保険組合は超優良健保の一つです。
付加給付が手厚く、高額療養費の自己負担からさらに健保が負担をしてくれる仕組みです。詳しくはこちら
4.年収と貯蓄率について
5.がん保険の歴史と現在
そもそも日本のがん保険はいつからあったのでしょうか。がん保険を国内で初めて販売したのはアフラックです。国内の開業は1974年でした。(アリコは医療保険で1973年にスタート)
〜抜粋〜
1970年、当時社長のジョンB.エイモスは大阪万国博覧会の開催中に初めて日本を訪れます。そのとき風邪予防のためにマスクをしている多くの日本人を見て、その健康や衛生に対する意識の高さに驚きます。「これだけ健康に対する意識が高いのであれば、がんの苦しみから人々を救いたいという想いも、日本人に届くに違いない」アフラックは日本進出を決意しました。
しかし、「がんは不治の病」といわれていた時代。当初、複数の生命保険会社に提携を打診しましたが、がんの話題すら避けたがる風潮もありました。がん保険への関心は低く、提携交渉は不調に終わったのです。
それでも創業メンバーは、「がんによる経済的悲劇から人々を救いたい」という変わらない強い想いで認可取得に向けて邁進します。1974年、日本進出を決意してから4年の月日が経った頃、ついに大蔵省(当時)より事業免許が交付され、日本初のがん保険が誕生したのでした。
(1970年の大阪万博の画像を漁ってみましたが私はマスクしている人は確認できませんでした)
アフラックの創業本はこのあたりに書かれていて特に大竹さんの著書は印象的でした。
それから月日が経ち、1995年の抜本的な保険業法の改正によりそれまで外資の独占だった第三分野も2001年より国内の生損保に解禁されました。(背景はこちらの芹澤伸子さんの研究ノートがよくまとまっています。日米の貿易摩擦もはじめ、政策的な意思決定であったのは個人的に非常に興味深いです。)
がん保険はここ数年2500万件ほどで推移しており、医療保険はN大疾病など保障範囲の拡大により新規、保有契約件数の拡大が続いています。
医療費の自己負担額の高騰も一因としてあるようですが消費者のニーズと販売者の営業努力?により市場は拡大傾向が続いています。
後記
ちなみに山﨑さんのコメントに一個ずつ突っ込んでいくと
・内視鏡とかはおえっとなる/人間ドッグは医療ビジネスには気持ち的に乗らない→え?付加給付あるやん。自己負担ほぼなくて受けれるのに受けなかったの?(堀江さんは毎年受けている)
・ウィスキーはストレートで飲む。人生やり直しても飲む→ウィスキーフリークしては大賛同。でもWHOが飲酒はすべからく体に悪いって言ってますよね。しかもストレートで飲むと食道傷めるって言われてますよね。
NPについても
・スポンサーの絡みで地上波ではできない、といっていましたのでNewsPicks/ユーザベースは保険会社からのスポンサーは受けないという宣言とも取れます。(大丈夫?)
あれ…やっぱりスポンサーが入らないのかな…
デューデリだんも終わっちゃったし。
保険を叩くと一定数PVが上がるのでいいのでしょうね。(後田さん、岡田さん、お疲れ様でした。)
最後に。山﨑さん、楽天Gにお勤めですがグループ内には生保も損保もあります。そこは批判評論しないの?
おしまい。長くお付き合いいただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?