イソヒヨドリの探しもの[2024/2/21(水)〜2/27(火)]
2024/2/21(水) トイレにひとりで行くのがこわい
朝3時に起きて原稿を書く。前日10時ぐらいまで椅子に沈みながらも粘ったせいで、まだ眠い。あっさり8時に寝るべきだった。
ようちえんのぬらし絵の日で、一緒に行く。先生のお話を親たちが聞く特別な回で、お話がとても良かった。大人の意識にはブロックがあって、「これでいいのかな?」と感じながらこれまでぬらし絵に取り組んでいた気がするけれど、先生のお話を聞いた後だと、もっとのびのび、目の前の画用紙で起こっていることを楽しめるように感じた。
家に帰ってお昼ご飯を食べるとすぐお迎え。
小雨降る中、子どもたちはA山に登ったようで、娘の上着のボアは雨でぺしょぺしょになっていた。町の地産給食を進める会のミーティングがあるから、雨の降るなかEコーヒーへ移動。レインコートを持ってきたけれど、レインコートは着ないと娘が言うから、二人でビニール傘に入って歩いた。そういえば、私の赤い花柄の傘は、電車に置き忘れて以来戻ってきていない。
Eコーヒーに着くと娘に「トイレに行こう」と声をかける。ようちえんの間にトイレに行くのを我慢しているものだから、終わったあとはすぐにトイレに誘うようにしている。「行かなくて大丈夫」。何が面倒くさいのか、簡単には行ってくれない。
「お母さんトイレ行きたいんだけど、ひとりで行くのこわいんだ。一緒に行ってくれない?」
これは昔々の会社員時代、2歳の男の子がいる同期に「ひとりで行かないで、って言うと行っちゃうけど、ママこわいから手つないでてって言うと、絶対手を離さないでいてくれる」と聞いたことの応用だ。
「トイレで誰かにどんどんってされるかもしれないからこわいの?」「そうなの。〇〇ちゃんが来てくれたら安心なんだけど」「わかった」。
かくしてトイレに連れていくことに成功した。
娘に続いて私が個室に入ると、「お母さん、〇〇ちゃんここにいるからね。これで安心?」と聞いてくれる。子どもは限りなく優しい。
ミーティングは話すべきことがたくさんあって、白熱した。隣でドーナツを食べ、ホットオーツミルクを飲んでいた娘は一段落着くと「あそぼ」と友達の子どもたちを誘って遊び始めた。盛り上がってるのか「きゃー」とか「わぁー」とか声があがるから「しっ!君たち、ねずみさんの声ね!」「こういう声?(コソコソ声で)」「そう、その調子!」というやり取りを何度かした。
帰り道もやはり雨が降っていて、ふたりでひとつの傘に入って帰った。
2024/2/22(木) ニコニコ顔が見たいから
ようちえんに送って、図書館のリサイクルコーナーへ。年に数回図書館を除籍になった本が並べられている。いつもに比べて絵本など少ないように感じたけれど、大好きな荒井良二さんの絵本と、長新太さんの漫画エッセイを入手。ほくほくしながらアフリカンダンスに向かう。
続々と完成してきた衣装を付けて、みんなで踊る。華やかな色や柄が舞う。フォーメーションも入って、わくわくしてきた。
ようちえんのお迎えをして、家に帰る。来月、町で行われる映画の上映会のチラシを携えて、去年の夏まで娘が通っていた幼稚園に歩いていった。
インターホンを押して開けてもらうと、すぐに年少の頃にお世話になった先生に会えた。娘の顔を見て、みんな「大きくなったね」と声をかけてくれる。お友達もやってきて「〇〇ちゃん、どうしているの?」と不思議そうな様子だ。娘は照れて、身体をもじもじさせながらいた。
雨の中、今度は近所の一軒家のレンタルスペースに向かう。今日はお友達がそこでマルシェをやっているのだ。ドアを押し開けて中に入ると奥のテーブルで、友達の何人かがお茶しているのが見えた。テーブルの一角に娘と座らせてもらって、ハーブティーを入れてもらう。トルコランプのワークショップをしている方が「もうすぐ終わりにするけどやる方いますか?」と声をかけてくれて、娘と参加させてもらう。
小さなランタンの周りに、ダイヤ形や四角形のガラス片を貼らせてもらう。娘はたくさんの色の中から好きな色を選んで、いろとりどりに飾り付けていた。
再びテーブルの談笑に加わらせてもらう。娘がブルーベリー味の寒天をみんなに配ると、ランタンづくりに参加されていた方から「お返しに」とおいしそうなパンをいただいた。
雨は一日中降っている。傘をさして家に帰る。アフリカンダンスの疲れだろうか、眠い。簡単な夕飯にしたかったが、娘が餃子をつくりたい、と言うから餃子をせっせと包む。なるべく手早くすべてを形にしようとする私と違って娘は「これはダイヤ!」「これはハート!」「今度はまんじゅう」といろいろな形をつくって遊んでいた。
お風呂に入ると頭がぼーっとする。お風呂を上がると、よろよろと靴下を履く私のことを「おーっと大丈夫ですか?こうしてますからね」と娘が支えてくれた。「ありがとうございます。あ、もう大丈夫です」「ずっとこうしてますからね」と私の腰のあたりを押さえているから笑ってしまう。「お母さんのニコニコお顔が見たいからやったんだよ」とこちらを見上げた娘が言った。
2024/2/23(金・祝) 漫画の3巻とか8巻とか
9時まで寝ている娘を起こして急いで準備し、バレエのレッスンへ。休日のため、いつもは夕方のレッスンが、午前中にある。今日はお姉さんたちとの合同レッスンで娘も楽しみにしていた。
娘はお姉さんたちと一緒が嬉しいようで、速いテンポのダンスにもついていきながら終始楽しそうにしていた。
家に帰ってパスタをつくって食べる。菜の花とベーコンで、菜の花の苦みがおいしいと思って私は食べていたが、娘は「にがい」と言って、菜の花をすべて私の皿の上へよけた。
午後は町の文化会館で開催されるイベントがあって、3人で車で移動。私は「北欧の絵本を開きながら、ジェンダーや社会の価値観を考えよう」という趣旨のイベントに参加した。北欧の社会の価値観と作られた絵本の変遷を時代ごとに知ることができて面白かった。後半は絵本を開きながらのワークショップで、高校生も同じグループにいた。最近世代の異なる、若い人たちと意見交換ができる機会があって楽しい。
娘と夫は図書館で絵本を読みながら待っていたようだ。漫画の3巻とか8巻とか、ツッコミどころのある本を借りている。娘が借りたいと言ったらしい。
昨日の餃子を焼いて、食べる。
お風呂をあがると、布団に入ったはずの娘が「ママー」と呼ぶ声が聞こえた。夫は娘の隣で、かえる足の体制でストレッチしている。布団に入ったら秒でコロリの彼は、寝ないように頑張っているようだ。夫とバトンタッチして娘と布団に入り、一緒に寝た。
2024/2/24(土) 私を私たらしめている、変わらない何か
起きて部屋でパソコンに向かっていたら、娘が部屋にやってきた。膝の上に座った娘が「〇〇ちゃんは朝起きたら、お母さんのお膝に座ってギュってする。ご飯食べ終わったらまたお母さんのお膝に座ってギュってするんだ」と言うので、娘の身体に回している腕に力を込める。
パンを焼いて、食べる。急いで出掛ける準備をする。今日は母校の大学で卒業後んん周年(なんとなくぼかしておこう)を祝う、銅祝の式典と祝賀会に参加する。学科の友達に連絡を取って、会う約束をしていた。
久しぶりに晴れたから洗濯機を回したが、干すのは夫にお願いして、朝ご飯の片付けもそこそこに電車に飛び乗る。
グリーン車でパソコンを開きながら移動し、余裕を持って目的駅に到着することができた。駅には子連れの人も多い。急に心細くなって、娘と一緒に来たらよかった、と思う。いつも娘を連れていることで、いろんなところに物怖じせずに顔を出せているのだ。甘えられているようで、甘えている。
駅から大学までの道を歩きながら、思い出がブワーッと蘇ってくる。人生でたった4年しか居なかった場所。だけど、いろんな人との関わりや出来事があった場所でもある。思い出深い1号館に足を踏み入れる。ここで良くダンスの練習をした。変わってなすぎて、あの頃の楽しさと悔しさと入り混じった気持ちに、心がトリップしそうになる。
1号館を抜けて、式典が行われる真新しい6号館に足を踏み入れる。大学の歴史などの展示ホールがあり、随分立派な建物だった。
大学時代の友達に会うのは随分久しぶりだった。「変わらないね!」と言い合う。よく見たら変わっている部分はたくさんあるはずだけれど、その人をその人たらしめている何かがそのままで、言葉にするとやっぱり「変わらないね」になる。
「身体は変化してもマインドは大学生のときから変わらないよね」という話をしたら「10年前にもその話したよね!」と友達に言われる。たぶんあっという間にやってくる10年後にもその話をしている。
きれいになった大学の構内を「わぁー!」とか「おぉー」とか言いながら歩いた。連れてこられた友達の子どもたちは、中庭にある色とりどりの物体の上をぴょんぴょん飛び跳ねていた。
イタリアンレストランで昼からワインを飲み、近況を報告しあう。私の働き方の話をしたら「なこ(私のこと)らしいね」と言われた。私を私たらしめている何かも、きっと変わってないのだろう。
ほろ酔いで家に帰ると、娘は夫と一緒に床に転がっていた。二人がお風呂に入っている間に鳥すき焼きを作り、三人で食べた。
2024/2/25(日) とんがらせてほしい爪
雨の日曜日。部屋で仕事をする。
夫が私に言った何かの口調に、冗談で「つめたいねぇ」と言うと、娘が私の膝の上にやってきて「〇〇ちゃんが守ってあげるからね!」と言ってくれた。「〇〇ちゃんは身体は小さいけど、強いんだからね」と言うと夫の部屋に行き、「剣でさすぞ!しゅっしゅっ」とやっている。ようちえんで誰かがやっているのをマネしているのかもしれない。
町民センターで開催している、農園の講座に遅れて顔を出す。娘は床に座り椅子を机にして、私が渡したメモ帳で折り紙を折ったり、文字を書いたりしていた。
同じ講座に参加していた友達が、レポート用紙でいちごを折って、娘に渡してくれた。いちごのヘタが折られていて、ペンでいちごの粒まで描いてある。こんな難しくてすてきなもの、さっと折れるの、かっこいい!と私がときめく。
講座の終わり際で抜けて、家に帰り、急いで昼ご飯を食べる。午後は隣町へ演劇を観にでかけた。「人魚姫」や「美女と野獣」などのヨーロッパのメルヘンと、神奈川の神話や言い伝えが入り混じったオリジナルの脚本。ミュージカルやダンスではない、プロのストレートの芝居を観るのは私も随分久しぶりだったけれど、歌やダンスもあり、面白かった。しかし娘には筋を理解するのが難しかったようで、帰り際に、浮かぶはてな?にたくさん答えた。
雨のおでかけは冷える。帰りは、駅直結のビルの14階にある足湯に行った。無料の展望足湯スペースには、屋根があってありがたい。晴れたら見晴らしがいいだろう足湯スペースで、くもり空を眺めながら、あったまった。
帰宅し、夕飯。お風呂上がりに娘の爪を切る。娘は「お母さんみたいにとんがらせてほしい」と言う。なるべく直線ではなく丸く切るように心がけるが、白い部分が残っていると何かと不便だろうと、短く切る。結局いつもの通り短めに仕上がった爪に、娘は「これじゃ全然とんがってない」とご不満の様子だった。
2024/2/26(月) 二人でドーナツを食べられる幸せ
月に一度の主催する読書会の日で、娘を送った足でそのままEコーヒーへ。
参加者のひとりが、カフェで出会った一冊の本を片手に現れた。その本はカフェに通って読み終えた本。とても気に入っていたが、絶版でもう手に入らないからと諦めていたら、別のきっかけでたまたま訪れた隣町のお花屋さんで見つけた、という。
本の内容を聞くのも良いけれど、本と人との出会いにもドラマがある。日常のそこここを照らしてくれる光のようなものを、彼女の話から感じた。映画「PERFECT DAYS」を観た影響もあるかもしれない。
読書会を終え、Eコーヒーまで配達してもらったMさんのお弁当を食べる。タイ風、とリクエストしたそぼろ弁当とピリリと少し辛いスープがおいしい。午後のAちゃんが主催する香りのワークショップが始まる頃、娘のお迎えへ。
忘れ物があって、ようちえんの後一旦、家へ戻る。娘はいつもおしっこを我慢しすぎてもらしてしまう。今日も帰ってすぐトイレへ促したのに行かずにもらして、さらにトイレへ行ったり着替えをしたりしようとしないから、私もついカッとなってしまった。娘は泣いた。私も怒りすぎてしまった、と着替えを手伝いながら謝る。
「Eコーヒーでドーナツ食べようね」と仲直りをする。駐車場からEコーヒーまで歩きながら「ふたりでドーナツ食べられるなんて幸せだね」と娘が言って「しあわせじゃね」と私が思わずおじいさんの口調で返してしまったから、二人で笑った。
娘はAちゃんの香りのワークショップに参加するのを楽しみにしていた。スプレーボトルに、好みの香りを入れてもらう。いろんな香りがあるけれど、娘はブレずに「お花の香り」が好きだ。今日作った香りも、甘くてやさしい香りだった。
早々と香りを作り終えた娘は、私たちがワークショップをしたり、話したりしている横で、足をつかんで上にあげてみせたり(バレエでお姉さんたちがしていたポーズだ)、家から持ってきた空き箱を「これ、テレビだから見て!」とみんなに見せたりしていた。
くしゃみと鼻水がとまらない一日。花粉の季節がやってきた。
2024/2/27(火) イソヒヨドリの探しもの
朝、ようちえんに行く支度をしていると家の外で「ウィーン」という音がする。カーテンを開けて窓の外を見てみると、草刈りの業者が来たようだ。聞いていない。が、借家の我が家だから、きっと大家さんが頼んでいるのだろう。
娘を送った後、鍋で大豆をゆでながら、家で仕事をする。明日の味噌づくりの準備だ。たくさん白い泡が沸いてくるから、鍋とパソコンの間を行ったり来たり忙しかった。
娘が帰って来る頃には、雑草が根こそぎ刈られ、すっかりさっぱりしていた。同じ敷地内にある、隣の家の前にあった木も切られている。「切っちゃったんですね」と業者さんに伝えると「切ってほしいと言われまして」とのこと。大家さんだろうか、それとも道端の落ち葉が気になる近所の人だろうか。いずれにしろ、そこにあった緑がなくなるのは、少しさみしい。
近所の日用品のお店にお花屋さんとお菓子屋さんが来ているからと、娘と一緒に顔を出す。残念ながら、お花屋さんのお花はちょうど売り切れたところだった。それを見たお菓子屋さんが、これどうぞ、と桃の枝を娘に手渡してくれた。うれしい。予約していた、おいしそうな植物性のプディングと、大福を買って帰る。「お花はなかったけど、かわいいのもらえたね」と小さな桃の花が咲いた枝を持って、娘は満たされた顔だった。
家に戻ると、鳥が一匹、隣の家と我が家の周りをちょんちょんと飛び回っている。初めて見たような気がする。頭が青色で、お腹がオレンジ色のかわいい鳥。調べてみたら「イソヒヨドリ」というらしい。何か探しているのだろうか。
「どうしたんですかー?って聞いてみるね!」と娘が意気込むが、走って近づこうとするたびに飛び立つ。そりゃそうだ。でも私たちがいなくなると戻ってきているようで、家の周りをしばらくウロウロしている様子が窓から見えた。
夕方はミーティングがある町民センターへ。今日も花粉にやられる一日で、鼻をかみかみ、なんとか議事録をとる。
ミーティングの終わりは19時近かった。娘は別室で友達と遊んでいたのが楽しかったようで、「もう終わったの?早かったね」とケロッとしていた。お弁当に詰めた焼きおにぎりを、帰り際に二人でパクつく。
帰宅する頃は真っ暗だった。あのイソヒヨドリはまだ近くにいるのだろうか。探しものはみつかっただろうか。もしかしたら切られてしまった木に、遊びに来ていた子だったのかもしれないなと思う。
すっかりさっぱりしてしまった我が家の庭だけど、あの子が、また遊びにきてくれたらいいな。
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