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Flying Solo (新大阪編)

3年ぶりの帰国。めずらしくひとり旅。会った人たち、目にしたもの、考えたことを徒然なるままに書き綴っております。最初から読んでやってもいいぞという方はこちらからどうぞ。

最終日は大阪でランチしてから東京に帰ることにしていた。会うのは女性4人。年齢も経歴もバラバラ。共通するのは、全員同じClubhouseの英語の部屋で知り合ったということだけだ。

京都での大学時代、友達と飲みに行くのはだいたい大阪だった。みんなあちこちから通っていたから、大阪が一番便利だったのだ。

だから名古屋、広島、博多と比べると圧倒的にホーム感が強い。何ならエセ関西弁もいけまっせーと腕まくりしながら新大阪に降り立った途端愕然とした。

あかーん!私がよく行ってたのはミナミで、新大阪なんてキタよりさらに北やん!今まで来たことすらないやーん!!

しかも出口番号の表示がどこにもなくて、目指す4番出口が見つからない。久々の涙目である。

遅れてすみませんと連絡すると、中の一人が、ビルの前で仁王立ちで待ってますと返事をくれた。

何とかたどり着き、仁王立ちのまま手を振る彼女に駆け寄り、レストランの中へ入るとたちまちホーム感。何度も言うが初めましての人たちばかりである。

挨拶もそこそこに、二人が別のもう一人にサインを求める。彼女は最近ガラスペンを愉しむための本を出したのだ。

剣道六段にして生命科学の博士号を持つ研究者。きりりと凛々しくまさに文武両道。しっかり自分を持っているけれどおおらか。それでいて彼女のレタリングは見る者をまるで音楽みたいに繊細で柔らかい世界へと引き込んでくれる。

惚れ惚れするような女っぷり。彼女に貰った手作りの栞は家宝にするんだ。

サインをもらったひとりは外で私を待っていてくれた人。英語を教えながら二人のお母様の介護をされていて、大変なこともたくさんあるはずなのに、いつも元気に笑っていて、周りも笑顔にしてしまう素敵な人だ。

私も会ってすぐ元気をもらった。You had me at 仁王立ち。

もうひとりは、長く続けられていたご商売から引退され、カナダに来た新移民のサポートなどの仕事に携わっているClubhouse仲間の話に触発されて、つい最近日本語教師になられた。

「大変なんです〜」と仰り、恐らくそうなのだろうけれど、さらさらと流れる小川みたいにその「大変」の間を通り抜けているのではないかと想像する。懸命に日本の生活に馴染もうとしている人々が、彼女の温かさに触れると思うと嬉しい。

最後のひとりは、最近、アメリカ人のご主人と共にサンディエゴから京都に移り、お母様と暮らし始めた。そんな大きな決断は決して簡単なことではなかったと思うけれど、明るく前進される様子には感銘を受ける。

先出の本が出版されたのをご存知なかったのだが、後日早速入手されガラスペンまで買ったと言うのだから、その行動力に脱帽する。尽きない好奇心も彼女の魅力のひとつだ。

みんなでわいわい言いながらお昼を頂いた後はお茶へ。楽しい時間はあっという間に過ぎる。


ところで私は女性のエンパワメントなるものが苦手である。「頑張ろう」という言葉が嫌いなのと似ている。どこか無責任で不誠実さを感じるのだ。

コンセプト自体が問題なのではない。女性に限らず誰もが自立し、自分たちのための選択をし、人生を決定していくために支え合うのは賛成だ。

だけどそれをことさらに強調し、女性同士助け合おうと言う時、明後日の方向に向かうことがある。

例えば以前私は働いていた会社で、Women’s Empowerment Group なるものに半強制的に入れられた。女性の地位向上を目指す互助グループとでも訳せばいいだろうか。

勿論女性の社会的地位向上には賛成だし、そのためにできることは何でもしたい。けれどそのグループのチャットに書かれることと言えば、
「スパやネイルサロンで自分を労って」
とか
「ワインを飲んでリラックスしよう」
みたいなことばかりが並んでいて、これのどこが地位向上なのかと見るたびにモヤッとしていた。

いや、セルフケアは無論大事。仲間の肩をつつき、ちょっと姉さん深呼吸忘れてまっせとリマインドし合うのも大事。

だけどそれはやることやってからの話。アンタらさっきからチャットしかしてないじゃん。いいからさっさと仕事してくれよ。

勿論みんながみんなそうではない。でもこういうグループで感銘を受けたことは、残念ながら一度もない。どこか偏りすぎているからだ。欲しいのはバランスなのだ。

むしろ私が触発されるのは、新大阪で会った彼女たちのような、知性に溢れ、明るくしなやかで、芯の通った楽しい人たちだ。みんな何か打ち込めるものがあり、大切なものがある。抱えているもののバランスを取ろうと果敢に挑み、転んだら笑いながら手を貸してくれる。お互いの成功を願い、全力で支援する真っ直ぐで気持ちのいい人たち。

そんな人たちにたくさん会った今回の新幹線の旅。お腹も心もたっぷり満たされて、幸せな気持ちで終え、車窓の外を見ると東京タワーがおかえりと言っていた。

続く

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