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ヒヤリ・ハット報告オンライン化でのクラウドファンディングに向けて

以前の記事で、ヒヤリ・ハット報告をオンライン化する企画について書きました。

元々のきっかけは当院の医師から「ヒヤリ・ハットを簡単に共有する仕組みがあったらいい」という提案があり検討事項として頭にあったところ、私自身がプログラミングを学ぶことになったため自分で仕組みを作ってみようと考えたのがことでした。

現状の紙ベースでのヒヤリ・ハット報告では、書く手間も大きくなかなか報告書を書かないし、書いて報告したとしてもその後の情報共有が不十分になりがちなため、ヒヤリ・ハット報告をオンライン化してはどうかというアイデアです。

企画について現場の意見を聞いてみる

自院での導入を考えるにあたり、実際に報告書を書く立場である事務部門のスタッフに意見を聞いてみることにして、まずは経理と医事の事務方トップのお二人にフィードバックをお願いしました。

私がプログラミングを習っておりヒヤリ・ハット報告のオンライン化を考えていることはすでに朝礼などで話していたため、お二人は企画の概要については知っていました。
その上で、企画をブラッシュアップするためできるだけ批判的意見を欲しいと伝えたところ出てきた意見が、

・ヒヤリ・ハットがオンライン化することで報告・共有しやすくなるという大筋には賛成
・ブラウザ上で項目を埋めると報告書が出来上がると便利そう
・どの程度のことでヒヤリ・ハット報告すべきなのかわからないことがある
・報告を共有するとして、報告が多すぎたら確認が大変そう

というものや、
もし他施設とヒヤリ・ハット情報を共有するとすると、

・個人情報がもれないように気をつけないといけない
・医事的には、他院の減点報告(この病名でこの処方を出したら不適切だと指摘があったなど)はみたい
・すべての報告を見たいと思わないが、「事務関係」などタブで情報がわかれていれば、自分が関係するところはみたい

といった意見があがりました。

クラウドファンディングを行うにあたって友人からのアドバイス

ここ最近、他院のスタッフと話をする機会にヒヤリ・ハットを複数回話題にしたのですが、私が感じていた紙ベースでのヒヤリ・ハット報告の課題は多くの医療機関が共通して抱えているもののようでした。
このため、この仕組みを自院だけでなく他院でも使ってもらえれば良いのではないかと考え、クラウドファンディングを行うというアイデアに至りました。

そこで、クラウドファンディングを行うにあたって、応援者として友人(WEB制作会社 社長)に意見を聞いてみることとしました。
その友人は自分でクラウドファンディンスをしたことはないとのことも、

・リターンの発送手続きや事務作業で大変な苦労をすることがある(リターン地獄というらしい)
・この仕組みによって医療事故が減らせるということが(できれば数字で示して)訴求できれば応援を集めることができそう
・参加する医療機関にどうメリットが示せるか
・製品を広げるためのクラウドファンディングとするより、社会を良くするための社会的活動としてのクラウドファンディングとするほうが応援が集まるだろう
・クラウドファンディングを行うまでのプロセスを記事にしていき、クラウドファンディングも社会的活動の一つとするのがよい

といった意見をもらいました。

ヒヤリ・ハット報告を増やすには心理的安全が重要だという視点

もう一つ、twitterでヒヤリ・ハットについて紹介されていた方とのやり取りでの学びもありました。

心理的安全性の確保というのは興味深い視点だったので少し調べてみたところ、米国の退役軍人病院における報告では、心理的安全が確保されていない職場においてはヒヤリ・ハット報告をしないという回答者が13%存在していること、米国研修医の調査でも、上級医による心理的安全の確保とヒヤリ・ハット報告数が相関していることが示されている、などがわかりました。


フィードバックを踏まえて、ヒヤリ・ハット報告のオンライン化とクラウドファンディングについて考えました。

報告の行いやすさについて

ヒヤリ・ハット報告をオンライン化することで報告しやすくするということがアイデアのベースですが、入力はブラウザ上で必要項目を埋めていく形にしようと考えました。

報告すべきか迷うという点については、できるだけたくさんの報告があがったほうが良いと考えるため、迷ったら報告するというルールにしたら良いと思います。

一方、オンライン化するかどうか以前の課題として、ヒヤリ・ハット報告を増やすためには職場の心理的安全性についての考慮が必要だということは今後の検討事項です。

共有のしやすさについて

オンライン化することで共有がしやすくなるのは間違いなさそうですが、確認する書類が増えても負担だという話もありました。
そこで、書かれたヒヤリ・ハット報告を上長や院長がチェックをする際に、これは必ず皆に目を通して欲しいと思うものをピックアップし、その分は全員が目を通することを前提に読んだ人がわかるような仕組みを作れば良いと考えました。

また、報告時点で「事務」「看護」「服薬関係」など複数のタブで分類しておくと、自分に関係するところだけみたいという要望に応えられそうです。

社会的活動としてのヒヤリ・ハット報告

ヒヤリ・ハット報告のベースにある考えはハインリッヒの法則で、アメリカの損害保険会社で技術調査部の副部長をしていたハインリッヒが労働災害における経験則の一つとして示したものであり、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、、その背景には300の異常(ヒヤリ・ハット)が存在するというものです。

ヒヤリ・ハット報告をオンライン化し、報告と共有を容易にすることで同じ失敗を繰り返すことを減らせれば、医療事故を減らすことができます。
今回の活動は、規模が大きくなればなるほど減らせる医療事故の数も減らすことができるため、社会的活動として今回の取り組みを捉えるという視点も今回得ることができました。

この視点で考えると、ヒヤリ・ハット報告をオンライン化するだけでなく、報告しやすいように職場の心理的安全性を高めるために何ができるかや、報告後に同じミスが再発しないように新たなルールづくりを行いやすくする仕組みをどうするか、などについても考える必要があるかもしれません。

また、医療現場だけでなく介護現場でも、今回の仕組みの活用ができると考えています。
まだまだ多くの方にフィードバックをもらって、企画を練り上げていこうと考えています。
ぜひ皆さんのご意見をお聞かせください。

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